真の敵は愛にあり

Emi 松原

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予想しなかった敵

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 今日から俺たちは、戦場の前線に出る。
 俺たちは時間まで、何度も何度も話し合い、軽く体を動かしてシュミレーションした。
 俺たちは前線で魔獣を倒すのが仕事だ。
 あの戦争が、どうやったら終わるのか……エミルさんかタツさんが命を失わないと終わらないのか、そんなことを考えていたけれど、今は目の前の自分の命とチームの命を優先的に考えないといけないのは分かっていた。
 戦争がどうしたら終わらせられるのか、今日前線に出てみて思ったことを、またみんなに相談しよう。皆、一緒に歩いてくれる仲間だから。

 戦闘開始時刻が迫った。
 俺たちは戦闘区域に入ると、第一騎士団団長の指示に従い、第五部隊までと同じ場所に並んだ。
「戦闘開始になったら、一気に前に出るんだ。そして、レッド王国の魔獣を、全て倒せ。《赤い竜巻》が出てきたら、特別騎士団の指示に従うこと」
 第一騎士団団長の言葉に、俺たち三人は頷いた。アマナは、後方で見ているはずだ。
「私は後ろで魔力供給をメインに行いますっ!状況は常に伝えて下さいっ!」
 モカが言った。何かが、吹っ切れた顔をしている。
 ブランもそうだ。俺と、ブランと、モカは、手を重ねると、気合いを入れた。

 戦闘開始の鐘が鳴り響いた。
 俺とブランは、一気に前に出た。
「武器精製、召喚魔法、来い!」
 俺とブランは同時に叫んだ。
「じゃあ、俺がまず一番前に行く!」
 俺の言葉に、ブランとモカが応えた。
 俺はブランよりも前に出る。
 目の前に、巨大な魔獣が迫ってきた。
 俺は、スピアを構えると、魔獣に飛びかかる。本当は、この魔獣を倒すことも間違っているのかもしれない。だって、この魔獣は召喚されて操られているのだから。
 だけれど、今、皆を守る為には、倒さなければならないんだ。
 後ろから、ブランが援護してくれているのが分かった。いつもの訓練通りだ。
 モカも、魔力供給を絶やさないでくれるから、全力で戦える。
 俺はひたすら、魔獣を倒していった。
 どれくらい時間が経ったのか分からない。突然、ピアスから衝撃的な声が聞こえた。
「《赤い竜巻》じゃない、レッド王国の人間が、単身で乗り込んでくるぞ!その後ろに《赤い竜巻》もいる!!」
 後方支援の人が、叫ぶように言った。
「《赤い竜巻は》私が相手をする。魔獣は特別騎士団に。もう一人のレッド王国の人間は、コルのチームが相手をしろ」
 エミルさんの指示が飛ぶ。
 俺は驚いたけれど、止まっている暇はない。
 目の前に、タツさんではない、レッド王国の人間……短剣を両手に持った赤い短髪の、目が鋭い男の人が迫っていたのだ。
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