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配属・戦場へ
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しおりを挟むそのままタツさんに向かう。タツさんもまた、大剣を持っておらず、赤い魔方陣が手にできていた。
二人が手を振り上げて、魔方陣同士がぶつかり合った。周り一体が凄い衝撃に包まれた。騎士団の人たちが、待避している。
なんなんだ……あれ……。
そんな俺の疑問に、第一騎士団団長が答えてくれた。
「あれは、まだ私たちには解明されていない、正確には教えられていない、特別騎士団団長のエミルさんしか使えない魔方陣だよ。何故か、《赤い竜巻》も同じような魔方陣でぶつかり合ってくる。なんの魔方陣かは分からないが、あの魔力からどれほどの威力か想像できるだろう。私たちは、あれを大将戦と呼んでいる。今、二人の力は拮抗しているように見えるだろう。あの二人のどちらかかがこれに敗れた時、その命は失われ……戦況が大きく動くと言われているんだ」
第一騎士団団長の言葉を聞きながら、俺はじっとエミルさんを見つめていた。
エミルさんとタツさんの周りに凄い威力の風が吹き、二人はお互いを睨み合って、魔方陣をぶつけ合っている。二人とも、一歩も引く様子はなく、その場で動かない。
これが……大将戦……命をかけた……。
特別騎士団の戦いを、騎士団は見つめることしかできない。レベルが違いすぎる。
俺は、あの人達を目指しているのか……。
「シューター部隊、援護射撃をするぞ!エミルに向かっている魔獣を狙う!いくぞ!」
シルクさんの声と共に、騎士団のシューター部隊が一斉に射撃をする。
エミルさんとタツさんは睨み合ったまま、魔方陣をぶつけ合ったままだ。
時間を忘れて見つめていると、戦闘終了の鐘が響き渡った。
その瞬間、エミルさんとタツさんは魔方陣を消した。
だけれど、消した反動も凄くて、エミルさんは後ろに吹き飛ばされた。それを、ヨネルさんがキャッチする。
すぐにエミルさんは立ち上がっていたから、俺は安心した。
こうして、今日の戦闘は終わったのだった。
夜、いつものように俺の部屋に四人で集まっていた。
「凄かったな……」
俺はそれしか言葉が出なかった。騎士団の戦いも凄かったけれど……あの、特別騎士団の人たちの戦い……それに大将戦……。
「あぁ、計算外だな」
ブランも、多分同じようなことを思っているんだと思う。口数が少なかった。
「もう、三人とも、明日からあなた達は最前線に立つのよ?……私、後ろでいつも見ているから。そして待っているから。皆が帰ってくるのを。一番に、おかえりなさいって言えるように。そして、私、後方支援としてできる限りのことをするから」
アマナの明るい声に、空気が軽くなる。
そしてアマナは、面白がるようにモカを見た。
「モカちゃん、久しぶりにシルクさんを近くで見たんじゃない?どうだった?」
アマナの言葉に、モカが一気に真っ赤になった。
「あっ、あのっ……それはかっこ良かったですがっ……それはっ、後方の指揮官という意味でっ、深い意味はないのですっ……」
モカが慌てたように言う。
それだけで、俺たちは自然と笑顔になれた。
やっぱりアマナは最高だ。……そうだ。
「なぁ、アマナ、エミルさんが、レッド王国の大将、タツさんとぶつかり合っていた魔方陣があっただろう?あれ、なんだか分かるかい?」
俺の言葉に、アマナは首を横に振った。
「分からないわ。だけれど、私なりに魔方陣を解読して調べてみようと思うの。ちょっと気になることもあったから」
アマナが、ほんの少しだけ暗い表情になった。
「気になること?」
俺がアマナを覗き込むと、アマナにおでこをペチンと叩かれた。
「それは、後方支援の私が考えることよ。大丈夫、全部分かったら教えてあげるから。それより、今は明日からの自分たちの心配をして」
アマナの言葉に、俺たちは頷いた。
明日から、いよいよ俺たちは前線に出るんだ。
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