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配属・戦場へ
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しおりを挟む「ようこそ、第一騎士団へ。君たちの実力は聞いているよ。私が第一騎士団団長だ。じゃあ、第一騎士団の所へ行こうか。皆、待ちわびているよ」
俺たちは、第一騎士団団長に連れられて、第一騎士団の待機場所に向かった。
どんな目で見られるか不安だったけれど、意外にも、第一騎士団の人たちは暖かく迎えてくれた。それは、多くの人が、俺たちに決闘を申し込んだ人で、又、全員引き分けで終わっていたからかもしれない。
まだ実践には出ていないけれど、実力を認められたようで、なんだか嬉しかった。
それから俺たちは、第一騎士団と部隊について説明を受けた。
第一騎士団の第一部隊から第五部隊は、集団ではなくチームで前線で戦うこと。それ以下の部隊は、集団で指示に従って動くこと。常に、第一騎士団団長や、特別騎士団の指示を聞かないといけないこと。第一騎士団の第五部隊までは、とっさの時に指示を出すことができること……。
アマナが、熱心にメモをとっていた。
俺は、アマナのようにすぐに理解はできなかったけれど、新人なのに指示が出せる場所にいることは分かった。
その時、エミルさんに昔言われた、『背中に沢山のものを背負う覚悟がある』という言葉を思い出した。俺の背中には、騎士団に入った時点で守るべき国民を背負っている。そして、第一部隊に入ったということ。俺は、騎士団も背中に背負わないといけないんだ。
それだけは分かって、一瞬怖くなったけれど、自分の夢の為には背負わないといけないものだし、ブランとモカ、そしてアマナを見たら、何故だか胸が温かくなった。
「じゃあ、今日は、第一騎士団で合同訓練を行う。明日から、戦闘に出て貰うが、まずは、戦闘区域の中でも安全な地帯で、戦闘を見学して貰うことから始める。アマナ、君は後方支援部隊専門の、もっと安全な位置で見学してくれ」
第一騎士団団長の言葉に、俺たちは頷いた。
そして、第一騎士団での合同訓練が始まった。
その日の夜も、俺の部屋に皆集まっていた。
ブランもモカも、まだ第一騎士団に入った実感がないようだった。
アマナは、今日の訓練も含めて、熱心にメモをノートにまとめている。
「なぁ、ブラン、モカ、大丈夫か?」
俺は二人に聞いた。二人は、笑顔を返してきたから、少し驚いた。
「大丈夫だ。計算外のことに、少し驚いているだけだ。第一騎士団なんて俺たちには無理だと最初は思ったが、合同訓練をしたら、少し気が楽になってな。それに、兄と同じ景色を見るには、前線に立つに超したことはない」
ブランが力強く頷いた。
「そうですっ!私、まだ怖いとは思っていますが……だけれど、二人の夢を応援すると決めたのですっ!その為には、四人でどんどん上に上がっていかなければいけないのですからっ!だから、もう泣き言は言わないのですっ!」
モカも、笑顔で頷きながら言った。
「大丈夫。今、色々まとめたけれど、あなた達の実力は第一騎士団に値するわ。自信を持って良い。明日から、戦場ね……。心配だけれど、私、いつも後ろで皆を見ているから」
アマナがノートから顔を上げて言った。
そう、明日からついに戦場だ。
俺たちは顔を見合わせると、気合いを入れるように頷いた。
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