真の敵は愛にあり

Emi 松原

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配属・戦場へ

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「もう、みんな、そんなにしらけた顔しないで。配属は私たちにはどうしようもできないんだから、ドンと構えましょう。大丈夫よ。どこに配属されようと、このチームなら必ず一緒に歩いて行けるわ」
 アマナの明るい声が沈黙を破った。
 いつも俺は、このアマナの明るさに助けられる。
「そうだな、どれだけ計算しても答えは出ない。明日を待つしかないな」
 ブランの言葉に、俺とモカは頷いた。

 次の日、俺たち新人のチームは、指示に従ってチームごとに整列していた。
 前には、第一騎士団団長から、以下の団長が並んで立っている。
 誰もが緊張しているのが全身に伝わってくるようだ。そんな中で、俺も徐々に緊張し始めていた。
 第一騎士団団長の人が、合図をするように、頭を下げた。
 俺たちの前に、特別騎士団団長のエミルさんが立つ。
 全員が一斉に姿勢を整えた。
 エミルさんは、紙を持っている。きっと、あれに俺たちの所属が書かれているんだ。
 俺は、心臓がバクバクしてきた。
 どこに配属されても、夢の為に頑張るだけだ。それなのに、何故か緊張は収まらなかった。周りの影響なのか、エミルさんの威圧感なのかは分からない。
「新人達。まずは、新しいチームの結成おめでとう。これから命を預けて戦うチームだ。自分の命だけじゃない。チームの命も背負うことになる。その覚悟がない奴は、今すぐにここを立ち去りな」
 エミルさんが、俺たちを見渡した。誰も動かない。正確には、動けないのかもしれない。それほど、エミルさんには言葉では表せない程の威圧感があったのだ。
「じゃあ、今から所属を発表する。名前と所属を言われたら、その部隊の騎士団長の下へ行って整列しろ。では、まず……」
 チームの所属部隊の発表が始まった。
 ブランの言ったとおり、今呼ばれたチームで一番上が第三騎士団だ。
 俺たちは、自分たちが呼ばれるのを静かに待った。
 次か、次かと待っていたら、気がついたら、残っているのは俺たちだけだった。
 俺とアマナが、勧誘者だからだろうか。
 ブランとモカが緊張しているのが伝わってくる。アマナだけが、いつものように余裕の感覚だ。本当に、アマナは凄いよ。
「アタッカー、コル。シューター、ブラン。ヒーラー、モカ。後方支援、アマナ。リーダー、コルのチーム。第一騎士団、第二部隊への所属を命じる」
 エミルさんがそう言い放った瞬間、初めて周囲がざわついた。当たり前だ。
 第一騎士団の第二部隊。つまり、第一騎士団での二番目の部隊というこだということは……この騎士団で、二番目に偉い地位になるということなのだから。
 まだ、実戦経験のない俺たちが。
「さっさと移動しな」
 エミルさんの声に、俺たちは慌てて動いた。
 騎士団長の人たちは、所属を事前に知らされていたようだ。
 驚く様子もなく、俺たちは第一騎士団団長に笑顔で迎えられた。
「以上、これが全員の所属だ。これからの功績によって、所属は日々変わっていく。だが新人は、所属した騎士団長の命令をしっかりときいて、なるべく早く実践に出られるようにすること。以上」
 エミルさんが、青いマントと大きなスカートを揺らし、去って行った。
 俺とブラン、モカ、アマナは顔を見合わせた。
 俺とアマナは勧誘者だし、昨日ブランが言ったように、第三騎士団以上になるかもしれないというのは予想できていた。だけれどまさか、第一騎士団の第二部隊なんて……。
 ブランの言うところの、計算外だ。
 俺も、ブランも、モカも不安な顔をしていた。ただ一人アマナは、余裕の表情で微笑んでいた。

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