18 / 83
チームの結成
1-4
しおりを挟むアマナが、嬉しそうにモカさんの手をぎゅっと握った。
「モカちゃんは、シルクさんのことが好きなのね」
楽しそうに言ったアマナの言葉で、モカさんが真っ赤になった。
「あのっ……それはっ……尊敬という意味でっ……」
クスクスと、アマナが笑う。
「からかってごめんなさい。可愛くて、つい」
そんなアマナを見て、モカさんの緊張が少しとけたのが分かった。
「……私、モカちゃんが二人のチームに入ったら、とても良いチームになると思うんだけれど、どう?」
アマナが、モカさんの手を離して、俺たちの方を向きながら言った。
俺は、驚いて、言葉が出なかった。アマナのことだから、何か考えてのことなんだろうけれど、突然どうして?
俺はブランの方を見た。ブランは、考え込むような顔をしている。俺はブランが口を開くのを待った。ブランは、アマナと同じくらいに、状況を読む力があると思ったから。
「モカは、貴族として、コルやアマナと同じように、奇抜な目で見られるだろう。それに、シルクさんを知っていて、尊敬しているということは、コルが夢を叶える為の力になってくれると仮定する。……後方としての判断力や指示力には少し不安があるが、そこは俺がカバーすれば問題はない。つまり、計算上では、モカをチームにすることはプラスになる。どうだ?コル」
「そっか……」
俺は、ブランを見てお礼の意味も込めて頷いた。そして、モカさんを真っ直ぐに見た。
「改めて、俺はコル。勧誘者で、アタッカーだ。俺が騎士団に入ったのは、エミルさんに憧れて。そして、特別騎士団になって、戦争をなくしたいからだ」
俺は、モカさんの反応を見た。モカさんは、目を見開いて、驚いた顔をしている。
「ブランは、お兄さんを戦争で亡くしている。子供を守って。そんなお兄さんと同じ景色が見たくて、ブランはここにいる。そんなブランだから、俺は一緒にチームを組みたいと思った。俺の夢に向かって、ブランの見たい景色に向かって、一緒に歩けると思ったんだ」
そのまま俺は続けて、モカさんを見た。アマナとブランは、何も言わずに俺を見ている。俺に任せてくれているのが分かった。
「あのっ……!!私にはっ!!そんな大きな目標も、夢もないですっ!!だけれど、コルさんの夢が素敵だと思いましたっ。ブランさんのお手伝いがしたいと思いましたっ!私っ、シルクさんをずっと見てきましたっ。ブランさんの言うように、とっさの判断は苦手ですが、魔力供給と、治癒魔法には自信がありますっ!それに、貴族しか手に入らない情報が入ることもあると思いますっ!私、二人の夢を、目標を、応援したいですっ!」
モカさんが、俺を見ながら、大きな声で言った。俺は、驚いた。俺の夢を聞いて、驚いていたのは分かったけれど、まさか、応援したいなんて言われるなんて思わなかったから。そんなこと言ってくれるのは、今までアマナだけだった。
「だ、そうよ。コル」
アマナが、俺に優しい笑顔を向けていた。俺は、その笑顔を見ると、ふっと力が抜けた。俺は、いつだってアマナを信じている。そのアマナが、俺たちとチームを組んだら良いと思った人なんだ……。
俺は、ブランを見た。ブランは、黙って頷いてくれた。
「モカさん、俺と、ブランと、チームになって下さい」
俺は、モカさんに、手を差し出した。そんな俺の手の横で、ブランも同じように手を差し出す。
モカさんの顔が、明るくなった。そして、俺たち二人の手を握った。
「私で良ければっ!嬉しいですっ!!よろしくお願いしますっ!さんはいらないですっ、モカと呼んで下さいっ!!」
そんな俺たちの手の上に、アマナが手を重ねた。
「私もいるのよ。基本は三人一組のチームだけれど、そこに後方支援の私の情報や分析が入ったらもっともっと凄いことが起こせると思うの」
俺とブランは、空いた手で、アマナの手を握った。
「それは、面白い考えだな。後方支援部隊も入れた、四人でのチームか。計算外のことが起こりそうだ。チームを組んだら、書類を提出しないといけない。その時に、特別騎士団の人に、実験的に四人で組むのはどうかと、進言してみたらどうだ?勧誘者には、その権利があるんだろう?」
ブランが、手を握ったままアマナに言った。
「そうね、特別騎士団の方達に、提案してみる書類を私も作ってみようかしら」
アマナが笑った。もしそれが叶えば、俺はアマナと同じチームにまでなれるんだ。
「ブラン、君は凄いな。俺、アマナがいないと何もできなくて……」
「ありがとう。俺は、アマナのことを尊敬している。君たちの仲を壊す計算なんてしていない。それは誤解しないで欲しい」
今度は、俺が赤くなる番だった。
「あら、私はコル以外に興味なんてないわ」
クスクス笑うアマナを見て、俺は余計に何も言えなくなった。
「ではっ!チーム結成の書類を作成しましょうっ!!」
モカが、嬉しそうに言った。俺たちは全員、手に力を込めて、笑顔で頷いた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
元Sランクパーティーのサポーターは引退後に英雄学園の講師に就職した。〜教え子達は見た目は美少女だが、能力は残念な子達だった。〜
アノマロカリス
ファンタジー
主人公のテルパは、Sランク冒険者パーティーの有能なサポーターだった。
だが、そんな彼は…?
Sランクパーティーから役立たずとして追い出された…訳ではなく、災害級の魔獣にパーティーが挑み…
パーティーの半数に多大なる被害が出て、活動が出来なくなった。
その後パーティーリーダーが解散を言い渡し、メンバー達はそれぞれの道を進む事になった。
テルパは有能なサポーターで、中級までの攻撃魔法や回復魔法に補助魔法が使えていた。
いざという時の為に攻撃する手段も兼ね揃えていた。
そんな有能なテルパなら、他の冒険者から引っ張りだこになるかと思いきや?
ギルドマスターからの依頼で、魔王を討伐する為の養成学園の新人講師に選ばれたのだった。
そんなテルパの受け持つ生徒達だが…?
サポーターという仕事を馬鹿にして舐め切っていた。
態度やプライドばかり高くて、手に余る5人のアブノーマルな女の子達だった。
テルパは果たして、教え子達と打ち解けてから、立派に育つのだろうか?
【題名通りの女の子達は、第二章から登場します。】
今回もHOTランキングは、最高6位でした。
皆様、有り難う御座います。

気づいたらモフモフの国の聖女でした~オタク聖女は自らの死の真相を解き明かす~
平本りこ
ファンタジー
両親との関係を拗らせた結果モフモフオタクとなった蒲原リサは、ある日事故に遭う。次に目覚めたのは馨しい花々に囲まれた天国――ではなくて棺桶の中だった。
リサはどうやら、魔王の妻である聖女リザエラに転生してしまったようだ。
まさかそんなことが現実に起こるはずないので、夢か没入型の新ゲームだと思うのだけれど、とにかく魔王は超絶イケメン、息子はぬいぐるみ系モフモフワンコ! ついでに国民はケモ耳‼︎
オタク魂が盛り上がったリサあらためリザエラは、ゆったりモフモフ生活満喫する……かと思いきや、リザエラの死には不穏な陰謀の影がちらついていて、のんびりばかりはしていられない!
獣人が暮らす国で、聖女に転生したとある隠れオタクが自らの死の謎に立ち向かいながら家族の絆を深める物語。
※毎日18時更新 約12万字
※カクヨムさんでも公開中

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間
夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。
卒業パーティーまで、残り時間は24時間!!
果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?
転生リンゴは破滅のフラグを退ける
古森真朝
ファンタジー
ある日突然事故死してしまった高校生・千夏。しかし、たまたまその場面を見ていた超お人好しの女神・イズーナに『命の林檎』をもらい、半精霊ティナとして異世界で人生を再スタートさせることになった。
今度こそは平和に長生きして、自分の好きなこといっぱいするんだ! ――と、心に誓ってスローライフを満喫していたのだが。ツノの生えたウサギを見つけたのを皮切りに、それを追ってきたエルフ族、そのエルフと張り合うレンジャー、さらに北の王国で囁かれる妙なウワサと、身の回りではトラブルがひっきりなし。
何とか事態を軟着陸させ、平穏な暮らしを取り戻すべく――ティナの『フラグ粉砕作戦』がスタートする!
※ちょっとだけタイトルを変更しました(元:転生リンゴは破滅フラグを遠ざける)
※更新頑張り中ですが展開はゆっくり目です。のんびり見守っていただければ幸いです^^
※ただいまファンタジー小説大賞エントリー中&だいたい毎日更新中です。ぜひとも応援してやってくださいませ!!

かわいいは正義(チート)でした!
孤子
ファンタジー
ある日、親友と浜辺で遊んでからの帰り道。ついていない一日が終わりを告げようとしていたその時に、親友が海へ転落。
手を掴んで助けようとした私も一緒に溺れ、意識を失った私たち。気が付くと、そこは全く見知らぬ浜辺だった。あたりを見渡せど親友は見つからず、不意に自分の姿を見ると、それはまごうことなきスライムだった!
親友とともにスライムとなった私が異世界で生きる物語。ここに開幕!(なんつって)

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる