真の敵は愛にあり

Emi 松原

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チームの結成

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 アマナが、嬉しそうにモカさんの手をぎゅっと握った。
「モカちゃんは、シルクさんのことが好きなのね」
 楽しそうに言ったアマナの言葉で、モカさんが真っ赤になった。
「あのっ……それはっ……尊敬という意味でっ……」
 クスクスと、アマナが笑う。
「からかってごめんなさい。可愛くて、つい」
 そんなアマナを見て、モカさんの緊張が少しとけたのが分かった。
「……私、モカちゃんが二人のチームに入ったら、とても良いチームになると思うんだけれど、どう?」
 アマナが、モカさんの手を離して、俺たちの方を向きながら言った。
 俺は、驚いて、言葉が出なかった。アマナのことだから、何か考えてのことなんだろうけれど、突然どうして?
 俺はブランの方を見た。ブランは、考え込むような顔をしている。俺はブランが口を開くのを待った。ブランは、アマナと同じくらいに、状況を読む力があると思ったから。
「モカは、貴族として、コルやアマナと同じように、奇抜な目で見られるだろう。それに、シルクさんを知っていて、尊敬しているということは、コルが夢を叶える為の力になってくれると仮定する。……後方としての判断力や指示力には少し不安があるが、そこは俺がカバーすれば問題はない。つまり、計算上では、モカをチームにすることはプラスになる。どうだ?コル」
「そっか……」
 俺は、ブランを見てお礼の意味も込めて頷いた。そして、モカさんを真っ直ぐに見た。
「改めて、俺はコル。勧誘者で、アタッカーだ。俺が騎士団に入ったのは、エミルさんに憧れて。そして、特別騎士団になって、戦争をなくしたいからだ」
 俺は、モカさんの反応を見た。モカさんは、目を見開いて、驚いた顔をしている。
「ブランは、お兄さんを戦争で亡くしている。子供を守って。そんなお兄さんと同じ景色が見たくて、ブランはここにいる。そんなブランだから、俺は一緒にチームを組みたいと思った。俺の夢に向かって、ブランの見たい景色に向かって、一緒に歩けると思ったんだ」
 そのまま俺は続けて、モカさんを見た。アマナとブランは、何も言わずに俺を見ている。俺に任せてくれているのが分かった。
「あのっ……!!私にはっ!!そんな大きな目標も、夢もないですっ!!だけれど、コルさんの夢が素敵だと思いましたっ。ブランさんのお手伝いがしたいと思いましたっ!私っ、シルクさんをずっと見てきましたっ。ブランさんの言うように、とっさの判断は苦手ですが、魔力供給と、治癒魔法には自信がありますっ!それに、貴族しか手に入らない情報が入ることもあると思いますっ!私、二人の夢を、目標を、応援したいですっ!」
 モカさんが、俺を見ながら、大きな声で言った。俺は、驚いた。俺の夢を聞いて、驚いていたのは分かったけれど、まさか、応援したいなんて言われるなんて思わなかったから。そんなこと言ってくれるのは、今までアマナだけだった。
「だ、そうよ。コル」
 アマナが、俺に優しい笑顔を向けていた。俺は、その笑顔を見ると、ふっと力が抜けた。俺は、いつだってアマナを信じている。そのアマナが、俺たちとチームを組んだら良いと思った人なんだ……。
 俺は、ブランを見た。ブランは、黙って頷いてくれた。
「モカさん、俺と、ブランと、チームになって下さい」
 俺は、モカさんに、手を差し出した。そんな俺の手の横で、ブランも同じように手を差し出す。
 モカさんの顔が、明るくなった。そして、俺たち二人の手を握った。
「私で良ければっ!嬉しいですっ!!よろしくお願いしますっ!さんはいらないですっ、モカと呼んで下さいっ!!」
 そんな俺たちの手の上に、アマナが手を重ねた。
「私もいるのよ。基本は三人一組のチームだけれど、そこに後方支援の私の情報や分析が入ったらもっともっと凄いことが起こせると思うの」
 俺とブランは、空いた手で、アマナの手を握った。
「それは、面白い考えだな。後方支援部隊も入れた、四人でのチームか。計算外のことが起こりそうだ。チームを組んだら、書類を提出しないといけない。その時に、特別騎士団の人に、実験的に四人で組むのはどうかと、進言してみたらどうだ?勧誘者には、その権利があるんだろう?」
 ブランが、手を握ったままアマナに言った。
「そうね、特別騎士団の方達に、提案してみる書類を私も作ってみようかしら」
 アマナが笑った。もしそれが叶えば、俺はアマナと同じチームにまでなれるんだ。
「ブラン、君は凄いな。俺、アマナがいないと何もできなくて……」
「ありがとう。俺は、アマナのことを尊敬している。君たちの仲を壊す計算なんてしていない。それは誤解しないで欲しい」
 今度は、俺が赤くなる番だった。
「あら、私はコル以外に興味なんてないわ」
 クスクス笑うアマナを見て、俺は余計に何も言えなくなった。
「ではっ!チーム結成の書類を作成しましょうっ!!」
 モカが、嬉しそうに言った。俺たちは全員、手に力を込めて、笑顔で頷いた。

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