16 / 83
チームの結成
1-2
しおりを挟む「俺の夢は、戦争をなくすことだ。ここに居ることが、アタッカーになることが、矛盾しているのは分かっている。だけど、俺はこういう道を選んだ。アマナをこの手で守る力も欲しい」
俺がそう言うと、ブランは、少し目を見開いた。
「夢か……。俺は、この戦争で、兄を亡くしている」
「えっ……」
突然話し始めたブランの言葉を、俺たちは黙って聞いた。
「兄は、騎士団にいた。シューターだった。誰よりも優れていたと、俺は今でも思っている。だけど……兄は、その時の命令に背いて、子供を庇って死んだ」
「…………」
「俺は、そんな兄を誇りに思っている。だから、俺は騎士団に入った。命令に背いてでも、兄が守りたかったものを、兄が見ていたものを、この目で見たくて」
「お兄様は、とても優しくて、騎士団の意味を理解していたのね」
アマナが、優しく言った。ブランが、驚いたようにアマナを見る。
「そんなこと……言われたの、初めてだ。誰もが、兄は命令を守っていたら死ななかったと言ったのに」
俺は、ブランに対して、何か感じるものがあった。ブランは、俺の夢を否定しなかったし、笑いもしなかった。それに、ブランのお兄さんは、守る為に命を失った。それと同じ景色が見たいというブランならば……。
「ブラン、突然なんだけれど、俺とチームを組んでくれないかい?」
俺の言葉に、ブランが驚いて俺を見た。
「本気で言っているのか?君は、もっと優れた人間とチームが組めるはずだ」
「本気だ。君のお兄さんは、一つの目の前の命を守る為に動いた。命を失ってしまったのは悲しいけれど……だけれど、その景色を見たいという君となら、俺の夢に向かって、一緒に歩いて行けるんじゃないかと思うんだ」
俺は、改めてブランに手を差し出した。
「兄のことを……こんなにも肯定してくれた人間はいなかった。計算外だ。それも、勧誘者の君たちが……」
ブランは、俺の手を見つめていた。
「コルとチームを組んだら、大変なことの方が多いと思うわ。だけれど、私も、あなたがコルと組んだら、きっと良いチームになると思う」
アマナが、背中を押すようにブランに言った。
ブランが、ゆっくりと俺の手を握った。
「こんな計算外のこと、後悔しないかい?」
「あぁ、しないさ。君のシューターとしての腕は本物だとさっき訓練を見て分かったし、何より、俺の夢を聞いても動じずに受け入れてくれた。……これからよろしく、ブラン」
「こちらこそ、よろしく、コル」
俺たちは固く握手をした。
アマナが、嬉しそうに笑っていた。
俺たちは、しばらく練習場で、今後のことを話し合っていた。
あと一人、チームにはヒーラーが必要だ。
「コル、君はどんな人とヒーラーとして組みたいんだ?」
「そうだなぁ……戦いながら後ろを任せる人だから、簡単には決められないよな……だけれど、ブラン。君と同じで、一緒に歩いて行けると思える人が良いな。実力よりも、俺はそっちを重視したい。騎士団に入っている時点で、実力はあるはずだから……」
「じゃあ、ヒーラーの訓練所に行ってみる?多分、皆コルとチームを組みたい気持ちが先に立って、訓練は後回しにしていると思うの。ブランが、ここで一人で訓練していたように。だから、今訓練を頑張っている人は、きっとコルが気に入ると思うの」
アマナが、笑顔で言った。
「アマナ……君は凄い計算力を持っているな。さすが、勧誘で後方部隊に入っただけある。君は計算外の力を持っている気がする」
ブランが驚いた顔で言った。
「あら、ありがとう。でも、私はコルの助けになりたいだけよ」
アマナが笑った。
こうして俺たちは、ヒーラーの訓練所に行ってみることにした。
「誰も……いないな」
殺風景の光景に、俺は思わずつぶやいた。
「ヒーラーは、訓練所を使わなくても訓練できるというメリットがあるからな。計算のうちだ。それに、もうチームが決まった人間は合同訓練所で訓練しているだろうからな」
ブランが、訓練所を見渡しながら言った。
「誰もいない……かしら?」
アマナが、少し笑っている。何か企んでいる時の顔だ。
「武器精製、召喚魔法、来て!」
アマナが、シューターの武器を取り出した。何をする気だ?
そのままアマナは、草むらに向かって魔法銃を向ける。
すると、女の人が飛び出してきた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。

【完結】君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
※カクヨムにも投稿始めました!アルファポリスとカクヨムで別々のエンドにしようかなとも考え中です!
カクヨム登録されている方、読んで頂けたら嬉しいです!!
番外編も投稿したいのですが、完結にしたものを一回解除して投稿して良いものなのでしょうか…。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
闇と光の慈愛のコントラスト
ひろの助
ファンタジー
この世界には、闇と光があり、そして、人間がいる。
これは、遠い遠い昔、宇宙の始まりの物語です。
2つの種族があった。
一つの種族は、光の神と崇(あが)められ、
もう一つの種族は、土と共に生きる闇の民である。
神や民と記していますが、それは、誰が決めたのでしょう。
その2つの種族から人は生まれる。
光と闇。それは、戦い合う運命なのか?
それが、定めなのか?
神とは、闇とは、魔物とは、人とは何だ。
そんな問いかけ、疑問が沸く物語です。
光の神と闇の民、そして、人間が織りなす模様をご覧ください。
闇の民の老人アクデシアと光の神イリノイスの出会いから始まる。
イリノイスは、全能の神に成りたかった。それで、闇の力を借りて人を創る。
しかし、光の神は、闇の民を羨(うらや)ましいかったのか、闇の民を蔑(さげす)みます。
神も民も人も生命の重みは同じです。
誰が創造したかは、大きな問題ではないのです。
次に闇の女神アクティスと光の神イリノイスとの闘争の物語になります。
闇と光、そして人間、どちらが勝つのか、どちらが正義なのでしょうか?
あなたは、この物語を読んでどう思うのでしょう。
私も自身の心にも問いかけています。
遠い昔の細かい情景が浮かぶような物語を目指しています。
出来るだけ、私も想像を駆り立て執筆しますので、
皆さんもどうかお楽しみください。
これは、私がブログに掲載した初めての自作小説です。
当時、何も知らない私は、拙(つたな)い物語を書きました。
今、それを推敲(すいこう)して当サイトに掲載し直します。
WEB小説の形を取っていたため読みやすさを追求しセンテンスは短めになっていて前段は前のセンテンスと被ることがありますが、最初の特徴を出来るだけ尊重したい。それは生かしたいと思っています。
しかし、改善すべきところは改善し多くの人に好かれ読めれることを望みます。
では、物語は、はじまります。

モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。

自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません
月野槐樹
ファンタジー
家族と一緒に初めて王都にやってきたソーマは、王都の光景に既視感を覚えた。自分が作ったゲームの世界に似ていると感じて、異世界に転生した事に気がつく。
自作ゲームの中で作った猫執事キャラのプティと再会。
やっぱり自作ゲームの世界かと思ったけど、なぜか全く作った覚えがない乙女ゲームのような展開が発生。
何がどうなっているか分からないまま、ソーマは、結構マイペースに、今日も魔道具制作を楽しむのであった。
第1章完結しました。
第2章スタートしています。
一般人な僕は、冒険者な親友について行く
ひまり
ファンタジー
気が付くと、そこは異世界だった。 しかも幼馴染にして親友を巻き込んで。
「ごめん春樹、なんか巻き込ん――
「っっしゃあ――っ!! 異世界テンプレチートきたコレぇぇぇ!!」
――だのは問題ないんだね。よくわかったとりあえず落ち着いてくれ話し合おう」
「ヒャッホ――っっ!!」
これは、観光したりダンジョンに入ったり何かに暴走したりしながら地味に周りを振り回しつつ、たまに元の世界に帰る方法を探すかもしれない物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる