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チームの結成
1-1
しおりを挟む次の日の朝食時から、俺とアマナはずっと人に囲まれていた。
もう、俺は朝から疲弊してしまった。
だって……皆、自分の夢とか、目標とか一言も言ってくれなくて、ただただ自分たちと組むメリットを言うだけだから。
だけれど、アマナが機転をきかせて、俺を無事に人混みから抜けさせてくれた。
アマナと共に、人気のない道を歩く。
「アマナ……こんな調子で、チームなんて見つかるのかな?それに、チームを組んだら、そのチームで訓練する時間も必要だろう?」
「大丈夫よ、コル。自分を信じて」
アマナが笑顔で言う。
その時、【ドン】と魔法銃の音がした。
「こんなに朝早くから、訓練している人たちがいるのかな?」
俺は、興味を持った。
「あの場所は、シューター専用の訓練所ね。行ってみましょうか」
アマナが、笑顔で車椅子を動かす。アマナ……もう敷地内を把握しているのか……。
俺たちがシューター専用の訓練所を覗くと、一人の男の人が、訓練をしているようだった。真っ青な髪が耳の下でなびいている。少しきつい表情の人だ。
動く的に向かって、的確に魔法銃を放つ。
「武器精製、召喚魔法、来て!」
隣で、アマナがシューターの武器を取り出した。何をする気だ?
俺をチラリと見て、アマナはその男の人の隣に行った。
男の人が、驚いているのが分かる。
そんな俺たちをよそに、アマナは魔法銃を放つ。
【ズドン】【ズドン】【ズドン】
凄いスピードで、動く的を打ち抜いていくアマナ。
その早さと的確さに、俺は驚いた。どうやら、男の人も驚いているのか、唖然としてアマナを見つめている。
アマナが、全ての的を打ち抜いた。
「邪魔しちゃってごめんなさい。見ていたら、やりたくなっちゃって。訓練しないと、腕がなまっちゃうでしょう?」
アマナが、男の人に言った。そして、手招きして俺を呼ぶ。
「あ……あの、邪魔したよな、ごめん……」
俺はどうしたら分からなくて、それだけ言った。
「君たちは……勧誘で入った……」
男の人の言葉に、俺は頷いた。
「私、アマナ、こっちはコルよ。あなたは?」
アマナが笑顔で問いかける。
「俺は、ブラン。今回入団した、十六歳。シューターだ。よろしく」
ブランの差し出してきた手を、俺は握る。
「こんな時間から、訓練かい……?ブランは、もうチームが決まっているのか?」
俺は手を離しながら、ブランに聞いた。
「いや。まだチームは決めていない。俺は自分から人に話しかけるのが苦手なんだ。だから、自分から話しかけに行けなくてね。訓練をしていたら、誰かに声をかけられるんじゃないかと思って。まさか、君たちに声をかけられるなんて、計算外だった」
そしてブランは、アマナを見た。
「アマナ、君の魔法銃は完璧だった。君はシューターかい?」
「いいえ、私は後方支援部隊よ。コルはアタッカー。今、コルとチームを組む人を探していたの。朝から沢山の人は来てくれるんだけれど、コルは、自分の夢の為に一緒に歩ける人とチームを組むべきだと思っているの。そうしたら、ここにたどり着いたのよ」
アマナが、楽しそうに言った。
「夢……。コル、君の夢はなんだい?」
ブランが、俺を見た。真っ直ぐに。その目は、朝まで俺にまとわりついていた人間とは違う、何か炎のようなものが宿っているのが分かった。だから……、俺は、ブランになら話しても良いと思えた。
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