15 / 83
チームの結成
1-1
しおりを挟む次の日の朝食時から、俺とアマナはずっと人に囲まれていた。
もう、俺は朝から疲弊してしまった。
だって……皆、自分の夢とか、目標とか一言も言ってくれなくて、ただただ自分たちと組むメリットを言うだけだから。
だけれど、アマナが機転をきかせて、俺を無事に人混みから抜けさせてくれた。
アマナと共に、人気のない道を歩く。
「アマナ……こんな調子で、チームなんて見つかるのかな?それに、チームを組んだら、そのチームで訓練する時間も必要だろう?」
「大丈夫よ、コル。自分を信じて」
アマナが笑顔で言う。
その時、【ドン】と魔法銃の音がした。
「こんなに朝早くから、訓練している人たちがいるのかな?」
俺は、興味を持った。
「あの場所は、シューター専用の訓練所ね。行ってみましょうか」
アマナが、笑顔で車椅子を動かす。アマナ……もう敷地内を把握しているのか……。
俺たちがシューター専用の訓練所を覗くと、一人の男の人が、訓練をしているようだった。真っ青な髪が耳の下でなびいている。少しきつい表情の人だ。
動く的に向かって、的確に魔法銃を放つ。
「武器精製、召喚魔法、来て!」
隣で、アマナがシューターの武器を取り出した。何をする気だ?
俺をチラリと見て、アマナはその男の人の隣に行った。
男の人が、驚いているのが分かる。
そんな俺たちをよそに、アマナは魔法銃を放つ。
【ズドン】【ズドン】【ズドン】
凄いスピードで、動く的を打ち抜いていくアマナ。
その早さと的確さに、俺は驚いた。どうやら、男の人も驚いているのか、唖然としてアマナを見つめている。
アマナが、全ての的を打ち抜いた。
「邪魔しちゃってごめんなさい。見ていたら、やりたくなっちゃって。訓練しないと、腕がなまっちゃうでしょう?」
アマナが、男の人に言った。そして、手招きして俺を呼ぶ。
「あ……あの、邪魔したよな、ごめん……」
俺はどうしたら分からなくて、それだけ言った。
「君たちは……勧誘で入った……」
男の人の言葉に、俺は頷いた。
「私、アマナ、こっちはコルよ。あなたは?」
アマナが笑顔で問いかける。
「俺は、ブラン。今回入団した、十六歳。シューターだ。よろしく」
ブランの差し出してきた手を、俺は握る。
「こんな時間から、訓練かい……?ブランは、もうチームが決まっているのか?」
俺は手を離しながら、ブランに聞いた。
「いや。まだチームは決めていない。俺は自分から人に話しかけるのが苦手なんだ。だから、自分から話しかけに行けなくてね。訓練をしていたら、誰かに声をかけられるんじゃないかと思って。まさか、君たちに声をかけられるなんて、計算外だった」
そしてブランは、アマナを見た。
「アマナ、君の魔法銃は完璧だった。君はシューターかい?」
「いいえ、私は後方支援部隊よ。コルはアタッカー。今、コルとチームを組む人を探していたの。朝から沢山の人は来てくれるんだけれど、コルは、自分の夢の為に一緒に歩ける人とチームを組むべきだと思っているの。そうしたら、ここにたどり着いたのよ」
アマナが、楽しそうに言った。
「夢……。コル、君の夢はなんだい?」
ブランが、俺を見た。真っ直ぐに。その目は、朝まで俺にまとわりついていた人間とは違う、何か炎のようなものが宿っているのが分かった。だから……、俺は、ブランになら話しても良いと思えた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~
ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ
以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ
唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活
かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし
勇者を否定されて追放されたため使いどころを失った、勇者の証しの無駄遣い
網野ホウ
ファンタジー
「勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした」から改題しました。
※小説家になろうで先行連載してます。
何の取り柄もない凡人の三波新は、異世界に勇者として召喚された。
他の勇者たちと力を合わせないと魔王を討伐できず、それぞれの世界に帰ることもできない。
しかし召喚術を用いた大司祭とそれを命じた国王から、その能力故に新のみが疎まれ、追放された。
勇者であることも能力のことも、そして異世界のことも一切知らされていない新は、現実世界に戻る方法が見つかるまで、右も左も分からない異世界で生活していかなければならない。
そんな新が持っている能力とは?
そんな新が見つけた仕事とは?
戻り方があるかどうか分からないこの異世界でのスローライフ、スタートです。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
男女の友人関係は成立する?……無理です。
しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。
ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。
ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。
それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。
その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
〜復讐〜 精霊に愛された王女は滅亡を望む
蘧饗礪
ファンタジー
人間が大陸を統一し1000年を迎える。この記念すべき日に起こる兇変。
生命の頂点に君臨する支配者は、何故自らが滅びていくのか理解をしない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる