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勇気と覚悟
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「エミル姉様、楽しそう」
特別騎士団専用寮の談話室のソファーで、ヨネルの膝枕で仰向けに横になっていたエミルに、無表情で淡々とフユが言った。
談話室には、五人全員が集まっていた。机を囲む形でソファーは配置してあり、それぞれ好きにくつろいでいる。
「あぁ、凄く楽しいよ。こんなに楽しい気持ちなのは、久しぶりなくらい」
エミルの言葉に、シルクがため息をつく。
「エミル、お前らしくないぞ。いくらお気に入りを騎士団に入れたからと言っても、それがどういうことなのか、分かっているだろう」
「そんなこと、よく分かってるよ。だけど、楽しい気持ちなんだからしょうがないじゃない。それにさ、あのアマナって子、昔の私に性格がそっくりな気がするのよ。挑発の仕方とか、戦いの仕方が。ハヤテ兄さんとフユにも、見せたかった」
シルクの方を見ずに、エミルが返す。
「ハヤテ兄さんからも、何か言ってやって下さいよ」
シルクは助けを求めるように、ハヤテを見た。
「うーん、お兄さんは、みんなの味方だからね」
穏やかな笑顔で、ハヤテが言った。
頭を抱えるシルク。
「シルク兄さん、本題」
フユが、変わらぬ表情と口調で言う。
「そうだな。エミル、せめて体を起こせよ。そもそも、お前が団長だろ。なんでいつも俺が仕切ってるんだよ」
「シルクの方が適任だから。適材適所ってやつ」
体を起こす気のないエミルを見て、ため息をつくと、シルクは資料を全員に渡した。
「シルク、そんなにため息ばっかついてたら、老けるよ」
エミルが、パラパラと資料をめくりながら言った。
「誰のせいだと思ってる。これが、今回入団するメンバーのプロフィールだ。顔と名前、どの部隊の所属になったか、現在の能力値を把握しておいてくれ。今回、久しぶりに、勧誘での入団者が二人いる。アマナは後方部隊で決定しているが、形式上、二人と俺たち五人で、どの部隊に入るか面談を行う。勧誘での入団者は久しぶりだ。騎士団がしばらく荒れることが予想される。いつも以上に注意してくれ」
「……コルって子の、取り合い合戦」
コルのプロフィールを見ながら、フユが言った。
「馬鹿馬鹿しい争いよ」
エミルが、机の上に資料を投げながら言った。
「んー、お兄さんは、このアマナって子が気になるなー。エミルに性格が似ているんだろう?そんな子が後方部隊に入るんだから。何が起こるか、全く予想できないからね」
ハヤテは、アマナのプロフィールを見ている。
「コルの方が気になる。エミル姉様の武器を真似る人間多数。でも使いこなすのは至難のわざ。それを使って決闘に勝った子」
フユが、一人一人丁寧にプロフィールを見ながら言った。
エミルはそんな二人を見て、ニヤリと笑うと、召喚魔法を唱えた。
机の上に、茶色い石の小さなハートの石像が置かれた。
ペトリファイドウッド。石言葉は《忍耐・希望・信念》
ヨネルは、始終一言も声を発さず、黙って資料を見ていた。
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