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勇気と覚悟
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しおりを挟む一瞬、唖然として隙ができた目の前のアタッカーを、俺はスピアを回し、連続攻撃を叩きつけた。最後の一撃で、相手は戦闘不能となった。
俺が攻撃を始めた瞬間、アマナの叫ぶ声がした。
「魔力供給、治癒魔法!!発動して!」
俺の頭上に、青い魔方陣ができる。傷が癒え、体力が回復し、魔力も満たされる。
魔力供給と治癒を同時に行う魔法だ。
俺が、一人を戦闘不能にしている間に、アマナに魔力の玉が向かう。アマナは、大きな銃を盾にする。
俺は、瞬時にスピードを上げて、相手のシューターの位置を見極め、スピアを振った。
奇襲を受けた相手のシューターが、戦闘不能となる。
最後の一人。アマナに武器を振り上げている。動こうとせず、相手を見据えているアマナ。俺はスピードを緩めず、そのまま後ろから、最後の一人をスピアで真上に叩き上げ、空中で、連続攻撃を仕掛ける。
アマナに気をとられて、俺に気がつかなかった最後の一人が、戦闘不能となった。
「そこまで!!勝者、コル、アマナ!!」
校長先生の声が響き渡った。
…………終わった…………。俺たちの、勝利だ。
俺は武器を魔方陣の中に戻すと、アマナの側に行き、泥だらけの顔を手で少し拭って、そのまま抱き上げた。
「コル!お疲れ様!!」
弾んだ笑顔のアマナ。俺は、その笑顔に見惚れた。泥だらけになっているのに、心から俺を想ってくれている、その笑顔に。
「コル?」
アマナの声で我に返って、周りを見ると、闘技場の中にエミルさん、ヨネルさん、シルクさんがいた。
シルクさんが、手を上げた。
相手の三人の頭上に魔方陣ができ、三人が回復する。
呆気にとられている三人。
エミルさんが、三人と俺たちに手招きをした。
アマナを抱えて、エミルさん達の元に行き、アマナと共に頭を下げる。
相手の三人も、同じように集まって、頭を下げた。
「勝者は明白。コル、アマナに、ブルー王国騎士団への入団を、特別騎士団団長の私が許可する。正式な書類、入団式に関しては、国からの使者に従え。その間、さらに己を磨いておくように。……良い戦術、良い動きだった。お前達の今後を、楽しみにしている」
エミルさんが、笑って言った。そして、三人に向き直る。
「お前達の敗因は、相手を侮り、自らの力を過信したことだ。それに、騎士団で最も大切なものは、チームのメンバーとチーム同士での連携。その全てが欠けていた」
恐ろしく冷たい目で、三人を見下ろしながら、エミルさんが言った。
元々エミルさんはつり目で、見た目が少し怖い印象なのに、その恐怖が増している。
三人が畏縮しているのが分かった。
そんな三人を見て、エミルさんは冷たい目のまま、ニヤリと笑った。
「この経験を、お前達がどう活かすのか。それは、お前達自身が決めることだ」
そしてエミルさんは、俺たちをチラリと見ると、特別騎士団の青いマントと大きいスカートをひるがえして、闘技場を出て行った。後ろに、ヨネルさんとシルクさんが続く。
俺は一気に、体の力が抜けるのを感じた。
次の日から学校で、あの三人組は一気に大人しくなり、俺たちは注目の的となった。
特に女子達は、アマナを賞賛していた。
少し居心地が悪い気もしたけれど、アマナが、入団までに騎士団についてや、特別騎士団について、今までより詳しく教えてくれると言うので、放課後が楽しみだった。
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