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自分にできること
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しおりを挟む「へぇ、スモ爺がか」
次の日、昨日と同じように、手紙を回収しながら、僕は、スモ爺のことを、ライキさんに話していた。
「龍が、体で包み込むのは、自分の体で、守っている証拠だ。龍の子供なんかに、よくやるんだけれどな」
「じゃあ、やっぱり、スモ爺にとって、僕は、子供のような、感覚なんですかね」
「どうだろうな。確かに、守るべき対象ではあるんだろうが」
ライキさんに、手紙を手渡しながら、僕は頷く。
最後に、スモ爺の、首輪をチェックしたけれど、そこには、何も入っていない。
「スモ爺、もしかして、昨日も、食べなかったの?」
体にこすりつけてきた、スモ爺の頭を撫でながら、僕は聞いた。
スモ爺が、小さく鳴く。
「うーん、ライキさん、スモ爺、やっぱり、食べていないみたいです……」
「ロキ、お前……。そこまで、スモ爺と、意思疎通ができるのか?」
「えっ?」
ライキさんの、驚いた声に、僕も驚いて、顔を上げる。
「意思疎通というか……。どうやら、僕が言ったことを、肯定してくれる時に、鳴いてくれているみたいなんです」
「そうか……。驚いたぞ、爺」
ライキさんが、スモ爺を、見たけれど、スモ爺は、チラリと、ライキさんを、見ただけで、何も言わない。
そのまま、僕とライキさんは、商業地区へ行き、龍たちの支払いにまわる。ライキさんが、お金の単位も教えてくれた。それと、ヴィーヴル王国では、お金だけが対価じゃなくて、物々交換も、一般的に行われている。
僕は、昨日、果物や、お菓子をくれた人たちに、お礼を言ったけれど、また、沢山貰ってしまって、かごが、いっぱいになっていた。
「さてと、俺は今から、エミリィに頼まれている石を、採取して、持っていくけれど。石の採取に、誘おうかと思ったけど……爺が、離す気がないようだな」
ライキさんが、ギルドの敷地内に戻ってきて、スモ爺を見ながら言った。
スモ爺は、商業地区には、ついてこないけれど、僕が敷地内に戻ってきたら、すぐに近づいてくるのだ。
「スモ爺! 今日も、いっぱい貰ってしまったんだけれど……。何かいるかい?」
スモ爺が、かごのなかの、匂いをかいでいる。
「じゃあ、俺は行ってくるから」
ライキさんを見送って、僕は、昨日と同じように、スモ爺に包まれて、かごの中身を広げた。
「ヴィーヴル王国には、色んな果物があるんだね。ノルさんの食事も、毎回違うものが出てくるし……。商業地区にも、色々なものが、沢山売っているし」
スモ爺の頭を撫でながら、僕は、また、スモ爺に話しかける。
「スモ爺……。ルカがね、ギア王国に戻らないことを、選択肢に入れているんだって。びっくりしたよ。そんなこと、考えたこともなかったし……。でも、ルカには、魔法の才能がある。……僕は、ギア王国に戻ったら、どうなるのかなぁって、夜にずっと、考えていたんだ」
スモ爺は、黙って、僕を見ながら、話を聞いてくれる。
「チィは、何も変わらないって言うよ。僕もそう思う。ギア王国に、不満を持ったこともないし、苦しい想いを、してきたわけでもないよ。それなのに、どうしてこんなに、心の中が、モヤモヤするんだろうね」
「ギア王国と、ヴィーヴル王国の差に、戸惑っているのでしょう。それに、ルカが、ここでの生活に、素早く適応していますから、比べているのです。ロキ、あなたは、ここで、自活する為に来たのではありませんから、気にする必要はありません」
「……」
チィの言葉に、僕は何も、返せない。
きっと、その通りなんだと思う。だけれど、そのモヤモヤが、消えてくれるわけでもなくて。
すると、スモ爺が、突然、小さく鳴いた。そして、顔で、僕の体を押す。
「えっ、スモ爺、どうしたの。移動しろってこと?」
僕の言葉に、スモ爺が、小さく鳴いた。
でも、スモ爺が押しているのは、スモ爺の体の方向だ。どこにも移動できない。それなのに、スモ爺は、僕を押してくる。そして、体をかたむけた。この、体の、かたむけかたは……。ライキさんの龍が、乗るときに、倒してくれる倒しかたと、一緒だ。
「……もしかして、背中に乗せてくれるの……?」
スモ爺が、小さく鳴いた。
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