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自分にできること
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しおりを挟む自分にできること
「今日は、知らないうちに、寝てしまっていたなぁ。チィが、何も言わなかったから、つい。ルカは、どうだった?」
寝る準備を終えて、ルカに聞くと、ルカが、笑顔で、こっちを向いた。
「あのね、今日は、魔法の基礎を教えてもらったの。エミリィさんってね、怖そうに見えるし、言葉も少ないけれど、とても分かりやすくて、的確に、教えてくれるのよ。それにね、私が、本を好きだと言ったら、魔法についてや、薬草についての本を、貸してくれたの! 図書館の場所も、教えてもらったわ!」
ルカの弾んだ声に、僕は、笑顔で、頷いた。
「魔法の、基礎ができたら、ブルーローズのギルドで、十分やっていけると、言ってもらえたわ。薬草の知識があったら、薬草を扱う、依頼もできるって」
「えっ……? ルカ、ギルドに入って、依頼を受けるのかい?」
驚いて聞いた僕に、ルカは、少し困ったように、微笑む。
「選択肢に、入れただけよ。選択肢は、多い方が、良いと思ったから」
「選択肢?」
「そう。……ギア王国に、戻らないという、選択肢」
「戻らない……?」
「あくまで、選択肢よ」
ルカの言葉に、何も言えないでいると、ルカが、不思議そうに、チィを見た。
「絶対に、チィちゃんが、何か言うと思ったのに。そういえば、さっき、ロキが、チィちゃんの名前を呼んだときにも、何も反応しなかったわね。……今まで、そんなことなかったのに」
「言われてみれば、いつもは、昼に寝てしまいそうになったら、必ず起こすのに。どうしたんだろう。チィ? どうしたの?」
僕とルカは、顔を見合わせて、首をかしげる。
「すみません。メインコントロールから、干渉があって、そちらの方に、処理を集中させていました。ロキの昼寝については、あのくらいならば、この国での生活に、支障はないと判断しました」
チィが、いつものように喋って、少し安心した。
電気を消して、目を閉じた後も、僕はずっと、ルカの言葉が、繰り返し、頭に浮かんでいた。
ギア王国に、戻らない選択肢……か。
ルカは、元々、図書館で働きたいと言っていた。だけれど、それは、必要ないとも言われていた。
ギルドの依頼ができるのであれば、とりあえず、この国で、生活するのには、困らないだろう。それに、ルカは、精霊族とのハーフだから、この国で生活していても、おかしくない。
……僕は?
僕は、ギア王国に戻ったら、どうなるのだろう。適正と言われていた、研究職に、つくことになるのだろうか。それとも、ここに来たことで、別の選択肢が、生まれたのだろうか。
「ロキ、眠れないのですか。何か、考えごとをしているようですが、昼寝が影響している訳ではないですね」
「チィ……。僕は、ギア王国に戻ったら、どうなるんだい?」
「どうもなりませんよ。国からの指示に、従うだけですから。ここに来る前と、何も変わりません」
「そっか……」
何も変わらない。朝起きて、チィが、管理してくれている、スケジュールをこなして、寝る。その生活に、不満なんて持ったことないし、辛かったことだってない。
それなのに、僕は、何故、別の選択肢なんて、考えたのだろう。何故だろう……。
そんなことを考えているうちに、気がついたら、眠りについていた。
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