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出会い
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しおりを挟む「チィちゃんには、説明しても伝わりませんよ。チィちゃんは、感情や、想いといったものは、理解することができませんから。……そうプログラムされているから、仕方のないことかもしれませんが……」
ルカが、少し悲しそうに笑って、ライキさんたちに、言った。
「ルカ、悲しむ必要はありません。私は、疑問に対しての問いを求めただけで、そこに、他意や、感情的なものはありませんから」
僕は、何も言えなくて、黙って、デザートを食べる。
チィのことは好きだ。生まれたときから一緒にいて、僕を助けてくれる存在。離れたことだってない。チィが、感情が分からないのは、今までもそうだった。それなのに、何故かそれが、今は、少し悲しく感じる。
何故だろう。ルカが、感情的になって、チィに、きついことを言ったときも、チィは、何も感じないと言っていた。この場でも、チィは、何も感じていない。そのことが、どうして、悲しく、感じるのだろう。
「ロキも、悲しむ必要はありません。今、ロキが、悲しく感じるのは、この場の、雰囲気を、私と、共有することが、できないからでしょう。ルカが、到着したときに、感情的になったのも、同じ理由です。ですが、私はロボットです。何も気にする必要はありません」
チィの言葉に、僕は、どういう反応をして良いのか、分からない。
ルカも、そうなのだろう。何も言わず、飲み物を飲んでいる。
エミリィさんが、じっと、静かに、チィを見つめていた。
「さて、食べ終わったら、君たちの家に、案内するよ」
ライキさんが、食べていた手を置きながら、そう言ってくれた。
※※※
「とても、良い子たちじゃないか」
長の家で、タツナリが、豪快に笑いながら言った。
「えぇ。……ですが、悲しいですね。こんな形で、あの人たちの子供と、出会うことになるなんて」
ミレイが、少しうつむきながら返す。
「……そうだな。だが、人族からの提案を、はねのける訳にはいかない。それこそ、そのまま、戦争をする理由を、与えてしまう」
「ですが、このままでも……。リィノの気配が、前にも増して、大きくなってきているんです。人族は、近いうちに、リィノを目覚めさせる。フールからの情報を考えても、それは、間違いないでしょう」
しばらく、二人は黙り込んだ。
「ロキさんと、ルカさんは……。人族からの、無言の人質です。あの子たちの、立場を考えると、それだけの価値があると思われるのは、当たり前のことでしょう。ですが同時に、あの子たちは、人族にとっての、脅威でもある。辛いですね。あの子たちは、国の為に利用されている。あの子たちが、それを知らないのが、幸いですが……」
「だが、いずれ知ることになるだろう。自分たちの、出生について知れば、そのことに、気がつかないはずがない。フールも言っていただろう。あの子たちは、とても賢い子だと。我々が今、一番に考えなければならないのは、リィノが目覚めること。そして、そのことを利用して、人族がどう攻め込んでくるかだ」
タツナリと、ミレイは、顔を見合わせると、黙って頷いた。
「自分たちの、出生のことも、リィノのことも、宝玉のことも、あの子たちは、いずれ知り、向き合わなければならないでしょう。だからせめて、しばらくは……。ここでの生活で、幸せを感じて欲しいですね」
ミレイが、悲しそうに笑って言った言葉に、タツナリが頷く。
「そして、何よりも、考えなければいけないのは、エミリィだ。エミリィは、リィノが目覚めた時、自分で、全ての決着をつけようとするだろう。勿論、リィノに関しては、エミリィの存在は、絶対的に必要だ。だが……。あの二人が争うことを、誰が望むと言うんだ」
「……」
タツナリの言葉に、ミレイは何も言わず、黙って、下を向いたのだった。
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