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リンってなんぞや?
しおりを挟むさて、今回は透析患者さんの食事管理で最も気をつけなければいけない3つの栄養素の一つ「リン」である。
ちなみに一つは前回の減塩、いわゆる「ナトリウム」だ。
透析患者さんの食事について勉強する時、絶対的に聞くことになるこの3つの栄養素のうちの一つ、「リン」。
なかなかに可愛らしい名前だが、何者であろうか?
こやつは、生命維持に欠かせないミネラルの一つである。
食事から摂取したリンは、小腸で吸収され、骨形成など体内で使われた後は尿として排出される。
又、吸収されなかったものは便でも排出されるものだ。
これもまた排出できない問題で、大きな問題が起こってしまう。
この問題、過程が割とややこしくて、いらあ!! っとするので、めちゃくちゃ簡単に言うと、
骨のカルシウムが血液中に溶け出して骨が脆くなったり。
血管の石灰化(固まる)が進んで、動脈硬化からの心不全、心筋梗塞など命の危機になったりする。
石灰化は場所によって症状も違い、特に言われるのは体のかゆみだ。
とにかく、リンが高い状態が続くと、死亡率がどーんと上がるのである。
いっとくさんも、かなり動脈硬化が進んでいる。
ちなみに私は栄養士さんからの個別指導を2回受けたのだが、はじめて指導を受けた時にがっつり言われたのが
「リンは食事のみで抑えることはまず無理です。食事でできるだけ抑えながら、薬と透析の力を借りてコントロールしていきましょう」
である。
何故食事のみで抑えることが無理なのか?
それは、リンは油と砂糖を除く全ての食材に含まれているからである!!
え!? もう食べられるものないじゃん!?
そう思った方、いるであろう。
私はめちゃくちゃ思った。
さらに、リンとタンパク質は大きな関係がある。
それはもうズブズブの関係である。
なんてったって、タンパク質が多いほど、リンも高くなるのだ。
腎臓病はタンパク質制限がある、というのは色んなところで聞くが、実は透析患者さんになると、この制限が緩和される。
適正なタンパク質をとって、筋肉を衰えさせてはいけない、になるのだが。
いかんせん、このリンが常に一緒にいるのである。
はっ、はっ、はっ!!
一体どうしろと言うのだね!?
さらに便が溜まるとリンが体内に溜まってしまうので、排便コントロールまで重要になってくる。
透析患者さんは水分制限、この次に出てくるカリウム制限があるため、いかんせん便秘になってしまう。
いや、こんなの無理ゲーやんけ!!
と思うであろう。私もそう思った。
だがこのリンも、少しずつの積み重ねである。
透析患者さんの食事は、多くの場合、茹でこぼしをする。
茹でることで、リンやカリウムを流すのだ。
例えば、今から話すうどんの話。
うどんは水分が多いので注意の食べ物であるが、リンにも注意の食べ物である。
この場合、うどんの麺は別に茹で、リンが溶け出した茹で汁は捨てて、調理をする。
何故うどんを例に出したって?
これはいっとくさんと結婚して、うどんに対して衝撃のカルチャーショックが私にあったからである。
それは新婚ぴちぴち当時、私は麺をしっかり茹でこぼして、汁は水分と塩分の関係で飲まないようにと、いっとくさんに注意しつつ、いっとくさんの前にうどんを置いた。
するといっとくさん
「汁が透明だ!!」
と大いに驚いた反応をしたのである。
ここでわかった方もいるであろう。
そう、いっとくさんの出身は千葉。関東圏だ。
お醤油の消費量が多く、うどんもお醤油ベースである。色はお醤油の色なので黒である。
対する私は広島出身。うどんを食べるのは、お出汁が当たり前で、醤油ベースのうどんがあることすら知らなかったのだ!!
お出汁のうどんを食べたいっとくさん、どうかと思ったが、美味い美味いと騒いでいた。
実はここが、いっとくさんの食事管理の分岐点になったのである。
前回書いた、減塩10ヶ条のうちの一つ「だし」。
この「だし」を美味しく感じられるかどうか、というのは、かなり大きなことなのだ。
特にお醤油が多い関東圏や、お塩をよく使う東北圏の方は、出汁だと「物足りない」人も多くいるであろう。
いっとくさんはこのうどんをキッカケに、出汁は美味い!! という認識になったらしく、急速に出汁文化に馴染んでいったのであった!!
さてさて、最後は減塩の話になってしまったが、どんな食材にも入っているくせに、コントロールを怠ると命に関わる、「リン」。
血液検査にも食べたものがダイレクトに反映される上、排便コントロールも反映されるので、頭を抱えるものである。
ちなみに次回書く、「カリウム」はさらに厄介なので、楽しみにしていてほしい。
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