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戦争
1-2
しおりを挟む戦場はすぐに混戦となった。
グリーンクウォーツ王国の兵の人達が持っている武器は、破壊神様の強大な攻撃だけでなく、創造神様の莫大な回復能力機能がついている。
ラネンさんの言ったように、まともに受けたらすぐに負けてしまう。それに、あの武器が使われるたび、シーク王子様とユーク様の魔力が……。
一気に個人攻撃で攻め入ってきたグリーンクウォーツ王国に対して、俺たちホワイトクウォーツ王国は集団でまとまって対抗した。前に攻撃部隊が出て、後方に回復部隊・魔力供給部隊が常にサポートしてくれている。
俺たちはとにかく前に進もうと、攻撃を受け流し、前だけを見た。エミリィ様が強い力で敵を蹴散らしてくれているけれど、敵はすぐに自己回復して、また向かってくる。
強い武器を持っているという自信だろうか、エミリィ様にも怯まずに次から次へと攻撃を繰り返す。エミリィ様の舌打ちが聞こえた。
短期決着をつけなければいけないのに、全く前に進めない。
「ルト、リル、お前ら二人は常に離れず、お互いをサポートしてついてこい」
ラネンさんの指示と共に、ラネンさんが大きな剣を振った。
エミリィ様は、その前で道を開いている。
「ねぇ……あの武器……何……?」
リルが、震えながら、驚いた声を出した。
その方角を見ると、見たことのない大きな魔力武器だと思われるものがこちらに向かっていた。
「全員、すぐに守りを固めろ!!」
一瞬で判断したラネンさんの指示が飛んだ。
エミリィ様とラネンさんが、一気に前に出て、ラネンさんは防御魔法、エミリィ様は攻撃魔法で押し返す。
それでもその武器はもの凄い威力で、防御魔法を張っていた俺たちも、吹き飛ばされた。
その隙をついて、兵達が俺たちに襲いかかる。
一瞬、俺に隙ができてしまった。クリソプレーズの羽の右部分に攻撃を受け、また吹き飛ばされる。
「ルト!!」
リルの声が、遠くに聞こえた。
やばい……!!
そんな俺の体を、誰かがしっかりと受け止めた。
「よく、ここまで持ちこたえたね」
よく知っている、優しい声……。俺は、慌てて顔を上げた。
「キ……キラ……さん……?」
その優しい笑顔、ベリルの羽、間違いなく、俺を受け止めたのはキラさんだった。
それと同時に、キラさんが右腕を挙げた。途端に、様々な角度から凄い速さの武器魔法道具が飛び交った。その攻撃が、グリーンクウォーツ王国の大きな魔力武器を狙う。
「どう……して……」
俺は、上手く声が出なかった。だって……キラさんは、いつもと全く違う……王族が戦場に出るときの格好をしていたのだから。
リルが、驚きながらも、急いで俺の回復を行う為に側に来た。
俺たち二人に、キラさんがウインクする。そして、声を拡張する魔力石を持った。
「我は、ベリル王国王子、キラ!これより、ベリル王国は、我らを助け、国から散ってでも生きる道を与えたエミリィ姫の進む道を開く!!国という形は失っても、その心は消えていない!」
キラさんの言葉に、俺とリルは全てを理解して、思わず涙が出そうになった。
キラさんは、ベリル王国の生き残り、それも王子だった。エミリィ様はそんなキラさんを助け、ずっと、キラさんをかくまい、国という形はなくなっても国民に生きる道を与えていた。そして……キラさんは、良い意味でエミリィ様を憎んでいたのだ。
押されていた形勢が、一気に逆転した。
「さぁ、ここは任せて、行くんだ!」
キラさんに背中を押されて、俺たちはしっかりと頷くと、前線へと戻った。
「ベリル王国の人間は、飛び道具に長けている。このまま一気に進むぞ!」
ラネンさんの声と共に、俺たちは一気にグリーンクウォーツ王国へと入っていった。
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