きらめきの星の奇跡

Emi 松原

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依頼・修行・店

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俺とリルが、ブルーローズの一員になってから、数日が過ぎた。
 俺とリルは、朝、準備ができると、キラさんから依頼の紙を受け取る。
 俺は、創造魔法で魔法道具を創ること、リルは、薬を作るのが日課になってきていた。
 最初は、普通の依頼から始めようかという話になったのだけれど、町に出ると、誰もが俺たちに王族と同じ態度をとる。そして俺は、怯えた目で見られる。
 だから、町の依頼をするのに向いていないということで、創ることに専念している。創った魔法道具は、他のメンバーが依頼主に届ける依頼を受けてくれているので、それなりに上手くまわっているようだ。
 そして、俺は、エミリィ様から気まぐれで呼ばれて、戦闘を中心に修行をしてもらっていた。これが、いつ呼ばれるか分からないのが少し困ったけれど、俺のことをちゃんと弟子として見てくれていることが嬉しかった。
 リルは、薬を作る時間と修行をする時間を、エリィ姫様が上手く調整してくれていて、お城に行っている日もあった。読んでおくようにと、分厚い本が、エリィ姫様から届いていることもあった。その日は、リルの部屋は遅くまで電気がついていた。
 俺たちは、少しずつ、この生活に慣れてきていた。

「よし、できた!」
 俺は、出来上がった魔法道具と、依頼の紙を何度も見比べた。うん、問題なさそうだ。
 確認が終わると、青いバラのピアスの通信を、キラさんに繋ぐ。
「今日の依頼の、三つ目の魔法道具を作り終えました」
「了解だよ。じゃあ、いつも通り、届けに行く依頼を出すから、依頼を受けた人が取りに行くまでに準備をお願いするよ」
 キラさんの優しい声が返ってくる。
「はい、分かりました」
 俺は、魔法道具を丁寧に箱に入れると、届けに行く依頼を受けてくれる人を待った。

「失礼します。魔法道具を届ける依頼を受けて来ました」
 ギルドのメンバーが工房に入ってきた。
 この人は、よく、俺が創った魔法道具を届ける依頼を受けてくれていて、最近は、世間話もするようになった人だ。
「お疲れ様です。はい、これ、依頼された魔法道具です。よろしくお願いします」
「確かに預かりました。それにしても、この短時間でここまでの魔法道具を創るなんて、本当に凄いですね。さすがはマスターの弟子だと、ギルドの中でも噂になっているんですよ」
「え!?そうなの!?」
 俺は驚いた。いつもここに閉じこもっているから、噂になっているなんて知らなかった。
「はい。ルトさんが創っている魔法道具や、リルさんが創っている薬は、木、以上のランクのものになります。だから、それを運ぶ依頼もランクが高くなって、報酬も上がるので、依頼が出るのを待っている人も多いんですよ。まぁ、僕もそのうちの一人ですが」
「そうなんだ……」
「お二人とも、完成のスピードがとても速いので、みんな平等に依頼はまわっているので安心してくださいね。あ、長話してすみません!届けに行ってきます!」
「うん、ありがとう!」
 俺は、工房を出て行く姿を見送ると、次の魔法道具に取りかかった。
 すると、青いバラのピアスの通信が繋がれた。エミリィ様だ。
「今、どこまで終わってる?」
「丁度、四つ目の依頼に入ったところです」
 俺は、材料を揃えながら、エミリィ様に答えた。
「ふーん。じゃあ、その依頼、一時間以内に終わらせて。修行するわよ」
 エミリィ様は、平気で無茶を言ってくる。でも、俺に逆らうことはできない。
「はい、分かりました」
 俺は苦笑すると、作業に取りかかる。
 エミリィ様に修行をしてもらうようになって、俺は、破壊神へのイメージがかなり変わっていた。
 確かに、エミリィ様は、考えられないほどの膨大な魔力を持っている。この世界を滅ぼすというのも、口だけではない。
 だけれど、ここでは、ギルドのマスターとして、俺たち一人一人の能力を見極めて、ラネンさんとキラさんを中心に、しっかりと仕事をしているし、俺たちを怖がらせるようなこともしていない。
 どうして、お城の人たちや、町の人たちは、あんなにエミリィ様を怖がるのか不思議に思ったけれど、魔力量や、その質、歴史、何より、きらめきの双子神様を信仰していれば、しょうがないことだとリルが教えてくれた。

 時間通りに依頼の魔法道具を作り終えた俺は、エミリィ様との修行の場に行った。
 ブルーローズの敷地内だけれど、建物からは離れていて、激しく戦闘しても大丈夫な場所だ。
 しかも、エミリィ様が、周りに守りの魔法を張ってくれるから、何があっても建物に被害が出ることがないから安心だ。
 修行の場には、体を伸ばしているエミリィ様と、少し離れてラネンさんが立っていた。
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