きらめきの星の奇跡

Emi 松原

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ブルーローズ

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 俺とリルは、エリィ姫様に見送られて、エミリィ様とラネンさんに連れられて、ブルーローズへと向かった。
 途中、道行く人が、エミリィ様を見て、お辞儀をする。俺たちにも同じようにお辞儀をされて、俺は不思議な気持ちになった。
 つい……ほんの昨日の夜までは、小さな村の人間の一人だったはずなのに。
 町の中はとても賑わっていて、さすがは二大勢力の国だと思った。
「……ここが、ブルーローズだ」
 ラネンさんが、立ち止まって、俺たちを見ながら言った。
 そこには、とても大きな、木でできた建物が建っていた。
 看板に、青い薔薇の絵と共に、ブルーローズと描いてある。

「おかえりなさい!マスター!!ラネンさん!!」
 建物の近くにいたブルーローズのメンバーだと思われる人たちから、次々と声が上がる。
「本当にマスターがお弟子さんを連れて帰ってきた!」
「後で、歓迎会をしましょうね!!」
 そんな声も聞こえてきた。
 不思議だ。ここのギルドの人は、お城の人や、町の人と違って、エミリィ様を怯えた目で見ていない。むしろ、とてもアットホームな雰囲気だ。
 俺は、エミリィ様と、ラネンさんに続いて、ブルーローズの建物へと入った。
 おかえりなさい!とあらゆるところから声が飛ぶ。
「おかえりなさい、マスター、ラネンさん。そろそろだと思って、準備していましたよ」
 薄いピンク色の髪の毛が耳の後ろで揺れていて、優しい顔立ちの男の人が、カウンターに立っていた。俺たちを笑顔で見ている。
「ただいまー。じゃあ、後はよろしくねー」
 エミリィ様は、男の人にひらひらと手を振ってそう言うと、スタスタと奥の部屋へと入っていった。
「この人は、このギルドの案内人。用は、主に現場を取り仕切っている、キラだ。ギルドのことについては、多くをキラに任せている。今日も、ここの案内と、二人の力の分析を頼んである。じゃあ、キラ、後はよろしく頼むぞ」
 ラネンさんが、俺たちを見ると、キラさんを見た。
 キラさんは、笑顔で頷くと、俺たちを見た。
「ルトくんと、リルちゃんだね?初めまして、キラです。二人の話は、マスターから聞いたよ。これからよろしくね。じゃあ、まずは、ギルドの中と使い方を案内して、君たちの居住の部屋に案内するね。その後は、二人からデータをとる試験の予定だ」
「は、はい!!よろしくお願いします!」
 俺とリルが同時に言った。
 ラネンさんは、その様子を見ると、エミリィ様が入っていった部屋に向かっていた。
「じゃあ、行こうか」
 キラさんが、カウンターから出てきた。そして、俺たちを手招きする。
 俺たちは、キラさんの後に続いた。

「まずは、入り口を入ってすぐの、ここの大広間は、メンバーは自由に使って良い場所だよ。交流の場に使って、パーティを組む人もいるし、ギルドの会議があるときも、ここを使うよ」
 キラさんの説明を聞きながら、俺たちはついて行く。
 大広間にいた人たちも、俺たちに普通に挨拶をして、あたたかく迎えてくれた。
「次に、こっちが食堂だよ。専属の調理人がずっといるから、いつでも利用してね。それで、この道を真っ直ぐ行くと、ギルド専用の図書室がある。町の図書館よりも資料が揃っていると思うから、とてもお勧めだよ」
 他にも、ギルドには様々な設備が整っていた。
 トレーニングルームや、創造魔法で道具を精製できる工房、薬を調合する部屋もある。
「ここから、庭に出られるよ。戦闘訓練を行えるようになっているんだ。それで、この一番奥が、マスター室だ。マスターとラネンさんは、普段、この部屋にいるよ。じゃあ、君たちの居住部屋に案内するね」
 キラさんに連れられて行った場所を見て、俺たちは驚いた。
 ギルドの敷地内にあるそこは、居住部屋というより、小さな家だったのだ。
 その隣にも、家がある。
「他のギルドメンバーのほとんどが、この裏の、寮に住んでいるんだ。この隣の家は、マスターとラネンさんの居住部屋だよ。君たちは、マスターと、エリィ姫様の弟子ということで、ここが用意されたんだ」
 俺とリルは、驚いて声が出せなかった。
 だけれど、キラさんはお構いなしで、優しい笑顔で、次の場所へと向かう。
「ここが、一般のギルドへの依頼が張り出されている場所だよ。難易度は、ここに書いてある。下から、土・花・木だよ。一般的なギルドメンバーは、どこまでの依頼ができるか決まっている。それを元にして、受ける依頼を自分で決めているんだ。報酬はここに書いてある。他のメンバーと依頼を受けたときは、メンバーと相談して報酬は分けるんだ。木以上の依頼や、専門的な依頼は、マスターを通じて、俺が直接依頼をするよ。君たちは立場が立場だから、マスターから直接依頼を出されることのほうが多いと思うけどね」
「はい」
 リルが、すぐに理解をしたように返事をした。
 俺は、その依頼の量に驚いていた。依頼を見ている人も多くて、一緒にやろうと声を掛け合っている人もいた。

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