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12、嫉妬
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国家警察に連行されたゴルト王子と側近であるシュタールと配下の誘拐犯達は傀儡の魔法を掛けられてる事が判明した。二人は謝罪してきて、責任を取って婚約者にしたいと訴えてきたが、ヴァイスハイトとゲニーが怖いくらいの張り付いた笑顔で内心ふざけるなと言わんばかりに牽制したので大人しく引き下がってくれた。
デーアとアンジュは真犯人が捕まってはいないが、無事魔法も使えるようになり普段の生活が戻ると思っていた。だがヴァイスハイトとゲニーが二人を大人しく解放してくれる訳でもなく、指輪が外れてからもアルメヒティヒ家のお世話になり、毎晩良い声で啼かされとろとろに甘やかされる溺愛生活が続くことになったのだ。
ヴァイスハイトとゲニーは学校内でも人目を気にすることなく溺愛してきて、四人は一躍有名になる。元々見目麗しく能力も高いヴァイスハイトとゲニーは、女子から人気が高く、ヴァイスハイトは氷の王子様、ゲニーは炎の王子様と女子は黄色い声をあげていた。
「婚約者がモテるのも大概よね~」
「将来有望は捨てがたいですが、婚約者は極々普通がいいですわ」
そう揶揄うテレーゼと、含み笑いをし持論を持ち出すリアはデーアとアンジュの入学以来の親友である。
「ま、でもデーアとアンジュも大概に美少女で、片や学問に秀でる才女、片や希代の天才魔法使いといわれる人の唯一の対抗馬になりうる天才魔法少女だもんね。いやなんかもう、まさにお似合いでなにも言うことないわ」
テレーゼはカップに入ったお茶を飲み干してふうとため息をつく。
お茶を飲んでいたサロンの一角が光に包まれ、転移魔法してきたゲニーが現れた。女子が集まるサロンは一気に黄色い声に包まれる。ゲニーは突然現れたことに一応悪いと思い、どうもお嬢様方と笑顔を振りまく。ゲニーの笑顔にやられた女子数名がくらくらとテーブルに倒れ込んだ。
「あらあら、噂をしたら影ですわね」
にんまりとリアが微笑む。
「丁度ゲニー様たちの話をしていたところよ」
テレーゼは茶化すように、こちらへやって来たゲニーに言った。
するとガラリとサロンの入口の扉が開き、ヴァイスハイトが若干息を切らして現れた。
「ゲニー。学校では転移魔法は使えないはずなんだが」
「え、そうなの? あ~確かに軽く阻害魔法がかかってるけど、あんなの阻害魔法をかけたうちに入んねぇよ」
ヴァイスハイトに指摘され、ゲニーは肩をすくめる。
「自分の能力が桁外れなのを忘れるな。そして置いていくな」
ヴァイスハイトはふうと息を整え、リボンタイを緩め首元を露出させた。
女子数人がバタバタと鼻血を流しながら倒れる。
「ここまで来ると歩く公害だわ」
「モテる婚約者を持って嫉妬するを通り越してこの先々の不安を感じるね」
デーアとアンジュは遠い目をして素朴な感想を述べた。
ヴァイスハイトとゲニーのお呼び出しに答え、お先に失礼するデーアとアンジュを手を振って見送るテレーゼとリアは末永く爆発しろと心の中で叫んだのだった。
四人で廊下を歩いてると、デーアは一つ疑問に思うことが浮かぶ。
「こんなにヴィーが注目されてるのなら何で図書室はあんなにガラガラだったの? 今もサロンのときみたいに女子達はこちらを見てこないし」
「ああ。あれは図書室くらい静かに過ごしたかったから、自分に向けて阻害魔法をかけていたんだ。自分に対して良くも悪くも強い感情を向ける相手から見えなくなる魔法。だからデーアに意識されてないことも分かってたから結構ショックだったな。今も軽く俺達にかけている」
「ごめんね、自覚するのが遅かったのよ」
「まあそのお陰で今があるからいい」
ヴァイスハイトはデーアに向けて微笑する。
「その魔法も僕が作ったんだ。姉貴、僕に感謝してくれてもいいんだよ!」
ふふんと目を細めながら自慢げに笑うゲニーは最近デーアを姉と慕い始め、普段はデーア呼びだがたまに甘える時だけ姉貴と呼ぶ。デーアは新しく出来た義弟をアンジュと同様可愛く思っていた。
楽しそうに会話をするゲニーとデーアを見て、ヴァイスハイトの表情が仄暗くなる。
「そういえばヴィーに教えてもらった問題、この間の小テストで出て助かっちゃった! 持つべきものは頭の良い兄ね」
アンジュはうんうんと頷きながら納得して言う。
今度はゲニーの顔色が仄暗くなった。
「今日は一ヶ月後の筆記試験に向けて図書室で勉強する」
「は? 今日は旧校舎の体育館で実技試験の模擬演習だろ」
険悪な顔で睨み合う二人を見たデーアとアンジュは落ち着かせようと提案する。
「私は生物学と数学が不安だから、ヴィーに図書室で勉強みてもらいたい!」
「私はまだ魔法コントロール能力が低いからゲニーに旧校舎の体育館で教えてもらいたいわ」
「は? 何それ。義兄相手に浮気すんの?」
ゲニーの目は据わって、アンジュを見下ろした。
「デーア、聞き捨てならないな。他所の男に目を向けて躾が足りないようだな」
ヴァイスハイトは怖いくらいの笑顔をデーアに向ける。
ヴァイスハイトはデーアを連れて図書室へ、ゲニーはアンジュを連れて旧校舎の体育館へ向かった。
豹変した婚約者に狼狽え、困惑する二人は黙って着いていくしかなかったのだった。
デーアとアンジュは真犯人が捕まってはいないが、無事魔法も使えるようになり普段の生活が戻ると思っていた。だがヴァイスハイトとゲニーが二人を大人しく解放してくれる訳でもなく、指輪が外れてからもアルメヒティヒ家のお世話になり、毎晩良い声で啼かされとろとろに甘やかされる溺愛生活が続くことになったのだ。
ヴァイスハイトとゲニーは学校内でも人目を気にすることなく溺愛してきて、四人は一躍有名になる。元々見目麗しく能力も高いヴァイスハイトとゲニーは、女子から人気が高く、ヴァイスハイトは氷の王子様、ゲニーは炎の王子様と女子は黄色い声をあげていた。
「婚約者がモテるのも大概よね~」
「将来有望は捨てがたいですが、婚約者は極々普通がいいですわ」
そう揶揄うテレーゼと、含み笑いをし持論を持ち出すリアはデーアとアンジュの入学以来の親友である。
「ま、でもデーアとアンジュも大概に美少女で、片や学問に秀でる才女、片や希代の天才魔法使いといわれる人の唯一の対抗馬になりうる天才魔法少女だもんね。いやなんかもう、まさにお似合いでなにも言うことないわ」
テレーゼはカップに入ったお茶を飲み干してふうとため息をつく。
お茶を飲んでいたサロンの一角が光に包まれ、転移魔法してきたゲニーが現れた。女子が集まるサロンは一気に黄色い声に包まれる。ゲニーは突然現れたことに一応悪いと思い、どうもお嬢様方と笑顔を振りまく。ゲニーの笑顔にやられた女子数名がくらくらとテーブルに倒れ込んだ。
「あらあら、噂をしたら影ですわね」
にんまりとリアが微笑む。
「丁度ゲニー様たちの話をしていたところよ」
テレーゼは茶化すように、こちらへやって来たゲニーに言った。
するとガラリとサロンの入口の扉が開き、ヴァイスハイトが若干息を切らして現れた。
「ゲニー。学校では転移魔法は使えないはずなんだが」
「え、そうなの? あ~確かに軽く阻害魔法がかかってるけど、あんなの阻害魔法をかけたうちに入んねぇよ」
ヴァイスハイトに指摘され、ゲニーは肩をすくめる。
「自分の能力が桁外れなのを忘れるな。そして置いていくな」
ヴァイスハイトはふうと息を整え、リボンタイを緩め首元を露出させた。
女子数人がバタバタと鼻血を流しながら倒れる。
「ここまで来ると歩く公害だわ」
「モテる婚約者を持って嫉妬するを通り越してこの先々の不安を感じるね」
デーアとアンジュは遠い目をして素朴な感想を述べた。
ヴァイスハイトとゲニーのお呼び出しに答え、お先に失礼するデーアとアンジュを手を振って見送るテレーゼとリアは末永く爆発しろと心の中で叫んだのだった。
四人で廊下を歩いてると、デーアは一つ疑問に思うことが浮かぶ。
「こんなにヴィーが注目されてるのなら何で図書室はあんなにガラガラだったの? 今もサロンのときみたいに女子達はこちらを見てこないし」
「ああ。あれは図書室くらい静かに過ごしたかったから、自分に向けて阻害魔法をかけていたんだ。自分に対して良くも悪くも強い感情を向ける相手から見えなくなる魔法。だからデーアに意識されてないことも分かってたから結構ショックだったな。今も軽く俺達にかけている」
「ごめんね、自覚するのが遅かったのよ」
「まあそのお陰で今があるからいい」
ヴァイスハイトはデーアに向けて微笑する。
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ふふんと目を細めながら自慢げに笑うゲニーは最近デーアを姉と慕い始め、普段はデーア呼びだがたまに甘える時だけ姉貴と呼ぶ。デーアは新しく出来た義弟をアンジュと同様可愛く思っていた。
楽しそうに会話をするゲニーとデーアを見て、ヴァイスハイトの表情が仄暗くなる。
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アンジュはうんうんと頷きながら納得して言う。
今度はゲニーの顔色が仄暗くなった。
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