しろ

秋坂ゆえ

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わたしが欲しいもの

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「何か白くて小さくてやわらかいものが欲しい」
 と言ったのです
 ただ白いだけのもの
 純白でもアイボリーでも生成りでも
 そして小さく、脆ささえ孕んだ
 誰もが守ってあげたくなるような

 雪は降りました 溶けて消えました
 たんぽぽは咲きました 風が殺しました
 マシュマロを買いました 胃袋に行きました

 つまりわたしが求めている
「白くて小さくてやわらかいもの」
 は、消えないもの
 わたしが死んでも確かにそこに在り続け
 やがて次の人が保有して守ってあげるもの

 冬はあまり雲が姿を現しません
 青ざめた広い空に
 小さく浮かぶ白い雲
 
 もしもわたしが空を飛べたなら
 その白を風や日光から守り
 この命が終わるまで
 抱きしめて眠っていることでしょう  

                        【了】
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