月の影に隠れしモノは ~人魚と河童の事件編~

しんいち

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河童騒動の後始末

78 河童モドキ退治3

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 絶望に打ちひしがれる河童モドキ二人であったが…。
 そこに、思わぬ助け船が入った。
 …助け船。それは、川の方からではなく、岸の方から。

「あ、あの~」

 皆の後ろから、遥香が覗き込んでいた。
 後は姉に任せることになっていたが、折角遠くまで来たついでに、一泊して観光して回り、その後どうなったか気になって戻って来たのだ。

「黒崎さんと、橋本さんは、確かに悪いことしたかもしれませんが、八年間も河童の妾で居たわけですし…。それに、私の命の恩人なんです!」

「え?誰?」

 舞衣の疑問に、照子が慌てて答える。

「あ、あの、私の妹です」

「ごめんなさい。割り込んでしまって…。
 でも、お二人が私を助けてくれたのは事実です!
 彼氏を親友に寝取られて、自殺しようとダム湖に身を投げた私を、お二人が水中から助け出してくれたのです。そして、生きるように諭してくれました。
 お二人は、もう十分反省し、改心していると思います。
 ですから・・・。助けてあげてくれませんか?」

 スミレは、照子の妹だという遥香の言葉を聞いて、視線を河童モドキの二人に戻した。
 二人とも、元アイドル。隅田川乙女組一期生として活躍していたのだ。当然、それなりの美貌を誇っていた。
 それが今では、緑の鱗のような肌となり、乳房丸出しで土下座している。憐れと言えば、憐れである。

 ほんの少しの沈黙。そして・・・。

「あなた方は私を襲わせて、恥ずかしい写真を撮らせました。
 見たでしょう。あの写真。あれを見て、私を男女と笑っていたんでしょう!
 舞衣さんに酷いことをし、親友の美月ちゃんをレイプさせた。
 本来なら、絶対に許しません!!
 ですが、八年もの間、河童の妾として過ごしてきて、人助けもした・・・」

 スミレは、「フーッ」と、一つ溜息を挿んで続ける。

「今回だけですよ。
 心を完全に入れ替えて、世の為人の為に生きると約束するのなら…。
 今回だけ、助けてあげます」

「え…、本当に?」

「ええ。いいでしょう。
 でも、言っておきますけど、あなた方が嘲笑あざわらっていた私のあの部分から、あなた方を助けるモノが出るのです。
 あなた方は、私のあの部分から出るモノを飲まないといけないのですからね」

「え・・・」
「お、おしっこ・・・」

「おしっこじゃない!!」

「は、はい!」
「ご、ごめんなさい!!」

 河童モドキたちは、慌てて地面に額を擦り付けた。

「じゃあ、直ぐ出してあげますから。ちょっと外に出ていて!」

「え、スミレちゃん。すぐ出すってどこへ?」

 舞衣が驚いてスミレに訊いた。

「大丈夫です、舞衣さん。ゴム持ってますから…」

 隠れ家の中にはスミレ一人が残り、皆は外へ出た。
 スミレは一人での聖液放出に慣れている。旦那が居ない日は、いつもやっていることだ。
 だが、皆、彼女がその際に、どんなふうになるかは知らなかった。かなり激しい喘ぎ声をあげてしまうことを…。
 スミレが一人になってから少しし、その、喘ぎ声が外に響いてきた。

「う…。アウッ! あ、あんっ、ああ~!」

 竹薮の中から漏れ聞こえてくる、スミレの淫靡いんびな声・・・。
 流石さすがに舞衣も、黒崎・橋本と北野姉妹の手前、これはまずいと思った。
 だから、河童モドキ二人に向かい…。

「聞こえる?あの、苦しそうな声。
 あそこまで苦しんで、あなた方の為に薬になる液を必死で分泌しているのよ。
 スミレちゃんは、まさに神様よね。
 あなた方、途轍もない恩をスミレちゃんから受けるんだからね」

 真っ赤な嘘だ。スミレは苦しんでなどいない。逆だ。
 慎也以下、事情を知っている者は、皆、苦笑した。が、舞衣が何故こんなことを言ったのか理解できるから、口は挿まない。
 それに、そんな風に言われると、苦しんでいるようにしか聞こえなくなるから不思議だ。
 これで黒崎と橋本は、スミレに一切逆らえなくなるだろう。

「あっ、あううっ!!」

 フィニッシュの喘ぎ声・・・。
 スミレが顔を火照らせて出て来た。手には、大きな草の葉。その中には、彼女の出したての「聖液」だ。
 幸いに、「ゴム」のまま持ってくるという品の無いことはしなかった。
 そんなことをしていれば、さっきの舞衣のフォローは台無しだったが、スミレも女性だ。わきまえていた。

 ドロッとしているが、黄色く透き通っていて、量もかなりある。精液には見えない。(実際、精液でもない…)
 苦しんで出したと言われれば、そういう物質なのかと思ってしまう。

「二人で分けて飲みなさい」

 スミレから手渡されたものを黒崎が押し頂く。そして、橋本と、仲良く半分ずつ飲んだ。

「あ、熱い・・・」
「す、すごい・・・」

 二人はすぐに、効果を実感したようだ。二人の手の色が徐々に白くなってゆく。

「あ~、凄い!」
「治ってゆく!治ってゆくよ!」

 ・・・が。色が抜けたのは、手だけだった。

「う~む。やはり、八年分となると、しばらく掛かりそうじゃな…」

 祥子の言葉に、スミレは顔をしかめた。

「スミレ様!お代わりを…」

「すぐには無理です。一日一回まで!」

 乗りかかった舟だ。これは、最後まで付き合うしかない。
 その後、二人が完治するまでの一週間、スミレは隠れ家に毎日聖液を届けるハメになってしまった・・・。
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