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恵美と河童
69 河童の襲撃4
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ついに、不死身の治太夫を討ち取った!
舞衣は、血と脳味噌でベタベタになってしまった手を、死体と化した治太夫胴体の腰蓑で拭い、大急ぎで慎也に駆け寄った。
恵美に覆いかぶさっているのを仰向けにして、自分の膝の上に乗せる。
息が弱々しい・・・。
脈も弱い・・・。
慎也は、恵美の治療に全ての生気を使い果たしてしまった。
命の火が、このままスーッと消えて行ってしまいそうな状態……。
舞衣は慎也の口に、ガバッと唇を合わせた。
舌をこじ入れる。
彼女には、祥子のような、気を補充する力は無い…はず…。
だが・・・。
慎也を助けたい一心。
これは、愛の力か…。
「必要性」と、「強い願い」。
強く、強く、願うことで、舞衣の新たな異能が湧出した。
舞衣の口から慎也へ、生気が流れ込んだのだ。
「う、うう……」
慎也が呻き声をあげて、ゆっくり目を開けた。
「大丈夫?」
慎也の目に入ったのは、今にも泣きだしそうな舞衣の顔…。
「うん…。ま、舞衣さんが気を? いつの間にそんな力を……」
「分かんない。必死だったから!」
舞衣は慎也を起こし、再び、強く唇を合わせて抱き締めた。
慎也も舞衣の背中に手を回し、二人は口づけしたまま、しっかと抱き合った。
沙織が大きな葉を両手で大事そうに持ちながら、駆けつけてくる。
「恵美!しっかりなさい!」
恵美は、まだ意識が無い状態だ。
手足は応急処置として慎也が繋いだが、完全に治ってはいない。内部の骨は、切れたまま。それに大量出血していて、心拍が弱々しく危険な状態だ。
「恵美!これを飲みなさい!薬よ」
沙織は、大きな葉に受けたドロッとした粘液を飲ませようとする。早紀の聖液だ。
…透視能力で、恵美も慎也もやられたことを見た美雪。それを早紀に伝えた。
祥子も気を失ったまま杏奈と環奈の治療を受けている途中だ。鬼たちもやられている。杏奈と環奈だけでは治癒しきれない。薬が必要だ。
早紀は羞恥を捨てて、木陰で頑張って自分で聖液を放出したのだった。
しかし、沙織が飲ませようとしても、恵美は目も口も開けない。
「恵美!」
沙織は、葉に溜まっているドロッとした粘液を、自分の口に流し込んだ。
そして、口移しで恵美に含ませ、強制的に飲ませた。
ゴクッと、恵美の喉を通ってゆく・・・。
少しして・・・。
「う、うう……。 ま、マズい…」
恵美は、ゆっくり目を開けた。
「す、すごい……。手足の痛みが軽くなった…。力が湧いて来る…。何飲ませたのよ」
話が出来るということは、もう大丈夫…。しかし、沙織は返答に困った。
恵美には、まだ早紀の聖液のことを話していない。
ややこしくなるので、ここは胡麻化しておくことにする。
「これは、早紀さん特性の薬よ。詳しいことは、また後でね」
沙織の微妙な笑顔に恵美は首を傾げるが、とりあえず今はそんなことを追求している状況ではない。一応、手足は繋がっているが、骨が断裂したままで動かせないのだ。
美雪が、沙織と同じ木の葉を持って走ってきた。
「慎也さん!はい、飲んでください」
早紀も木陰で必死に頑張っているらしい。恵美のが一回目、慎也に届けられたのが二回目のモノということだろう。
舞衣が受け取り、慎也に飲ませる。
「うわ、生臭…。やっぱ、おいしいモノじゃないよね・・・。
う、で、でも、すごい。力が漲って来る。これなら、骨も治せるよ!」
慎也は這いずるようにして、隣の恵美の手と足を完治させた。ついでに、初回の攻撃で打ち付けて瘤になっていた恵美の後頭部も…。
更にその後、自分の脚も治す。
杏奈と環奈が二人一組で駆けずり回って、負傷しているテルたち鬼を治癒させてゆく。
祥子もヨタヨタと出てきた。着物はズタズタになって、血で真っ赤に染まっている。が、傷はふさがっているようだ。
「ワラワが双子に助けてもらう日がこようとはのう。
全く持って不甲斐ない限りじゃ」
祥子は体中を切り刻まれ、墜落したショックで気を失っていたのだ。それを、杏奈と環奈が治癒させたということらしい。
祥子も鬼たちの治療に加わった。
慎也に手足を完治させてもらい、後頭部の痛みも無くなって、完全復活のはずの恵美。
すぐ傍で自分を支えてくれている沙織の耳元に、小声で囁いた。
…祥子を呼んでくれるようにと。
それも、何故か、恥ずかしそうに・・・。
首を傾げ乍らも、沙織は祥子を呼ぶ。
鬼の治療に当たっていた祥子は、直ぐに浮遊して恵美の元に来た。
恵美は祥子の耳元に、やはり小声でお願いする。
「ごめん、祥子さん。あ、あの……。
手足は、今、慎也さんに治してもらったんだけどさ…。お…、お尻の穴が痛くて立てないの…。河童に手を突っ込まれたから……。治してもらえる?」
見た目、損傷は無くても、腕をズブッと突っ込まれたのだ。ダメージ無いはずがない。
そして、恵美としては、直ぐ近くに居る「愛しの旦那様」には、絶対依頼したくないことだった。
「なに? 恵美さん、どうしたの?」
慎也がヒソヒソ話を気にして、その、コソコソしている当人の恵美に問う。
「い、いや……。慎也さんは、いいの~!!」
慎也からプイッと顔を背ける恵美に、舞衣は声を出さず笑った。
そして、慎也の両頬に左右から手を添え、クイッと恵美から視線を外させて、自分の方を向かせた。
「あなたは、こっち!」
再々度、舞衣から唇を重ねる…。
舌を入れ、濃厚な音を立てての熱烈キッス。そのままで右手を慎也の頬から外し、「今の内よ」と右手の仕草だけで恵美に合図した。
恵美は、両手を合わせて舞衣を拝んだ。
何も言わなくても察してくれる、有難い正妻様…。いや、もしかすると、例の異能で心を読まれたのか……。
まあ、どちらでも良い。とにかく直ぐに四つん這いになって、尻をまくったナサケナイ恰好で、祥子の治療を受けたのだった・・・。
舞衣は、血と脳味噌でベタベタになってしまった手を、死体と化した治太夫胴体の腰蓑で拭い、大急ぎで慎也に駆け寄った。
恵美に覆いかぶさっているのを仰向けにして、自分の膝の上に乗せる。
息が弱々しい・・・。
脈も弱い・・・。
慎也は、恵美の治療に全ての生気を使い果たしてしまった。
命の火が、このままスーッと消えて行ってしまいそうな状態……。
舞衣は慎也の口に、ガバッと唇を合わせた。
舌をこじ入れる。
彼女には、祥子のような、気を補充する力は無い…はず…。
だが・・・。
慎也を助けたい一心。
これは、愛の力か…。
「必要性」と、「強い願い」。
強く、強く、願うことで、舞衣の新たな異能が湧出した。
舞衣の口から慎也へ、生気が流れ込んだのだ。
「う、うう……」
慎也が呻き声をあげて、ゆっくり目を開けた。
「大丈夫?」
慎也の目に入ったのは、今にも泣きだしそうな舞衣の顔…。
「うん…。ま、舞衣さんが気を? いつの間にそんな力を……」
「分かんない。必死だったから!」
舞衣は慎也を起こし、再び、強く唇を合わせて抱き締めた。
慎也も舞衣の背中に手を回し、二人は口づけしたまま、しっかと抱き合った。
沙織が大きな葉を両手で大事そうに持ちながら、駆けつけてくる。
「恵美!しっかりなさい!」
恵美は、まだ意識が無い状態だ。
手足は応急処置として慎也が繋いだが、完全に治ってはいない。内部の骨は、切れたまま。それに大量出血していて、心拍が弱々しく危険な状態だ。
「恵美!これを飲みなさい!薬よ」
沙織は、大きな葉に受けたドロッとした粘液を飲ませようとする。早紀の聖液だ。
…透視能力で、恵美も慎也もやられたことを見た美雪。それを早紀に伝えた。
祥子も気を失ったまま杏奈と環奈の治療を受けている途中だ。鬼たちもやられている。杏奈と環奈だけでは治癒しきれない。薬が必要だ。
早紀は羞恥を捨てて、木陰で頑張って自分で聖液を放出したのだった。
しかし、沙織が飲ませようとしても、恵美は目も口も開けない。
「恵美!」
沙織は、葉に溜まっているドロッとした粘液を、自分の口に流し込んだ。
そして、口移しで恵美に含ませ、強制的に飲ませた。
ゴクッと、恵美の喉を通ってゆく・・・。
少しして・・・。
「う、うう……。 ま、マズい…」
恵美は、ゆっくり目を開けた。
「す、すごい……。手足の痛みが軽くなった…。力が湧いて来る…。何飲ませたのよ」
話が出来るということは、もう大丈夫…。しかし、沙織は返答に困った。
恵美には、まだ早紀の聖液のことを話していない。
ややこしくなるので、ここは胡麻化しておくことにする。
「これは、早紀さん特性の薬よ。詳しいことは、また後でね」
沙織の微妙な笑顔に恵美は首を傾げるが、とりあえず今はそんなことを追求している状況ではない。一応、手足は繋がっているが、骨が断裂したままで動かせないのだ。
美雪が、沙織と同じ木の葉を持って走ってきた。
「慎也さん!はい、飲んでください」
早紀も木陰で必死に頑張っているらしい。恵美のが一回目、慎也に届けられたのが二回目のモノということだろう。
舞衣が受け取り、慎也に飲ませる。
「うわ、生臭…。やっぱ、おいしいモノじゃないよね・・・。
う、で、でも、すごい。力が漲って来る。これなら、骨も治せるよ!」
慎也は這いずるようにして、隣の恵美の手と足を完治させた。ついでに、初回の攻撃で打ち付けて瘤になっていた恵美の後頭部も…。
更にその後、自分の脚も治す。
杏奈と環奈が二人一組で駆けずり回って、負傷しているテルたち鬼を治癒させてゆく。
祥子もヨタヨタと出てきた。着物はズタズタになって、血で真っ赤に染まっている。が、傷はふさがっているようだ。
「ワラワが双子に助けてもらう日がこようとはのう。
全く持って不甲斐ない限りじゃ」
祥子は体中を切り刻まれ、墜落したショックで気を失っていたのだ。それを、杏奈と環奈が治癒させたということらしい。
祥子も鬼たちの治療に加わった。
慎也に手足を完治させてもらい、後頭部の痛みも無くなって、完全復活のはずの恵美。
すぐ傍で自分を支えてくれている沙織の耳元に、小声で囁いた。
…祥子を呼んでくれるようにと。
それも、何故か、恥ずかしそうに・・・。
首を傾げ乍らも、沙織は祥子を呼ぶ。
鬼の治療に当たっていた祥子は、直ぐに浮遊して恵美の元に来た。
恵美は祥子の耳元に、やはり小声でお願いする。
「ごめん、祥子さん。あ、あの……。
手足は、今、慎也さんに治してもらったんだけどさ…。お…、お尻の穴が痛くて立てないの…。河童に手を突っ込まれたから……。治してもらえる?」
見た目、損傷は無くても、腕をズブッと突っ込まれたのだ。ダメージ無いはずがない。
そして、恵美としては、直ぐ近くに居る「愛しの旦那様」には、絶対依頼したくないことだった。
「なに? 恵美さん、どうしたの?」
慎也がヒソヒソ話を気にして、その、コソコソしている当人の恵美に問う。
「い、いや……。慎也さんは、いいの~!!」
慎也からプイッと顔を背ける恵美に、舞衣は声を出さず笑った。
そして、慎也の両頬に左右から手を添え、クイッと恵美から視線を外させて、自分の方を向かせた。
「あなたは、こっち!」
再々度、舞衣から唇を重ねる…。
舌を入れ、濃厚な音を立てての熱烈キッス。そのままで右手を慎也の頬から外し、「今の内よ」と右手の仕草だけで恵美に合図した。
恵美は、両手を合わせて舞衣を拝んだ。
何も言わなくても察してくれる、有難い正妻様…。いや、もしかすると、例の異能で心を読まれたのか……。
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