22 / 80
美雪と早紀
21 奇妙な結婚式1
しおりを挟む
翌々週の日曜日、十一月十日。友引。
今日は、スミレと総司の結婚式が、奈来早神社で行われる。
便乗して、早紀と美雪もということになり、合同結婚式となった。
慎也の正式な妻である舞衣も、第二夫人の祥子も、実は結婚式を挙げていない。
勿論、第三婦人から第六夫人も同様。
なのに、自分たちだけがしてもらう訳にはゆかないと早紀と美雪は大いに抵抗した。
が、早紀に関しては親が挙げるのに便乗するのだからと、美雪には総代のお孫さんを貰うのだからと、皆に押し切られた形だ。
三組(?)とも、普通とは言い難い関係。であるから、親戚も来賓も友人も基本的に来ない、身内だけの式。
挙式の為の衣裳も、慎也宅母屋二階の長持の中に眠っていた、古い時代衣裳を引っ張り出してきた。
婚礼衣裳は、借りれば、かなりの金額になる。使える物が有るのであるから、使用しない手は無い。
但し、ちょっと「派手」な衣裳ではあったが・・・。
式を執り行う「斎主」は、宮司である慎也。
総司・スミレの方は良いとして、後の二人の相手は慎也自身。
自らの結婚式の斎主をするという、これもあり得ない形式。おまけに、正式な妻でなく、「妾」だ。
だが、ここでは世間の常識なんて通用しない。何をしようと、今更だった。
巫女役は、舞衣と祥子が務める。
美雪側の参列者は両親と祖父母で、父の守は、略礼装の洋装。祖父の実は、紋付羽織袴。母の洋子と祖母の八重子は、留袖姿。
友人の結婚式だと母に偽って内緒で来ている杏奈と環奈は、振袖姿。自分たちとしては既婚者のつもりだが、振袖でないと彼女らの母親は承知してくれない・・・。
そして、早紀の側は、スミレのことでお世話になったという、総司の親友の「探偵さん」が来ていた。ブラックスーツに白ネクタイの、略礼装姿だ。
準備を終えて一息ついていた舞衣と慎也に、べったりつきまとっている杏奈と環奈。これから着替えをしなければならなく、ハッキリ言って邪魔であるが、無理に引き離され、居たくても居られなくなってしまっているという事情なのであるから、やむを得ない。
その、杏奈と環奈が、総司と談笑している人物に気付いた。…「探偵さん」である。
「あれ? 何で、勘治叔父様がいるの?」
「え?」
舞衣と慎也は、目を丸くした。
総司からは、スミレの秘密を、黒崎・橋本から守ってくれた探偵と紹介された。さらに、亜希子の研究所も紹介してくれたという…。その人物が、杏奈たちの叔父?
杏奈と環奈の視線に気が付いて、探偵もこちらに目を向けた。
目つきは、かなり鋭い。まさに、修羅場を潜って来ているという感じ。が、すぐにその鋭さは消え、ニヤッと笑みを送ってきて、総司に向き直った。
「あの人は、私たちの父の弟で、山本勘治です」
「内緒ですが、叔父は公安関係の秘密の工作もしてるんですよ」
「スミレさんの保護も担当してたんですね」
「叔父様だったから、うちの研究所を紹介したんだ…」
交互に、小さな声で杏奈と環奈が言う。
慎也と舞衣は、同時に同じことを考えた。
(公安の能力、侮りがたし・・・)
が、勘治は元々、総司の親友だった。つまり、偶然と言えば、偶然なのだ。
親友に依頼されて、たまたま関わったことが、自分の仕事とも深く関わっていたということ。だから、いつもよりも少しばかり力を入れ、積極的に動いた…。そういうことである。
これに関しても、またまた腐れ縁。…あ、いやいや、縁というモノは、誠にもって有難いモノだ。
式が始まる時刻となる。
社務所からの参進。社務所から拝殿までは、敷物が敷かれている。
先頭は、斎主である慎也。白色装束の「斎服」姿で頭には垂纓冠、手には笏。
続くは「千早」を羽織った巫女姿の、舞衣と祥子。
そして主役である、総司とスミレの、束帯・十二単姿。
そう、時代衣裳というのは、この大層な代物だ。裾を引きずるこの装束の為、敷物が敷かれていたのだ。
着慣れない衣裳で、二人とも歩き難そうにしているが、神社という背景にはピッタリで、優雅で優美。誰もが思わず見入ってしまう。
更に続いて準主役で、十二単の略装である袿袴姿の、美雪と早紀。
こちらは十二単に比べればかなり歩きやすそうだ。だが、見た目は、やはり雅で目を引く。
その後ろには、美雪の家族と、山本探偵、杏奈・環奈が続くという花嫁行列だった。
神社境内は、無人では無い。他にも参拝者がいた。当然ながら、境内に入る他の参拝者を、止めるわけには行かないのだ。
その為、偶然居合わせた参拝者から、この艶やかな行列の写真を撮ろうとスマホを向けられる。が、正面側から顔が分かるように撮影するのを、上手く妨害している何人かの人がいた。
これは、山本探偵の仕業であろうか。もしくは公安か…。
いや、どちらにしても、これでは、内緒で来ている杏奈と環奈のことが、彼女たちの父親に筒抜けだ。当の本人たちも気になり、前を歩く叔父に小声で確認した。
すると、あの妨害は山本探偵の仕業。ここに二人が来ていることは内緒にしてくれるとのことで、ホッとした杏奈と環奈であった。
今日は、スミレと総司の結婚式が、奈来早神社で行われる。
便乗して、早紀と美雪もということになり、合同結婚式となった。
慎也の正式な妻である舞衣も、第二夫人の祥子も、実は結婚式を挙げていない。
勿論、第三婦人から第六夫人も同様。
なのに、自分たちだけがしてもらう訳にはゆかないと早紀と美雪は大いに抵抗した。
が、早紀に関しては親が挙げるのに便乗するのだからと、美雪には総代のお孫さんを貰うのだからと、皆に押し切られた形だ。
三組(?)とも、普通とは言い難い関係。であるから、親戚も来賓も友人も基本的に来ない、身内だけの式。
挙式の為の衣裳も、慎也宅母屋二階の長持の中に眠っていた、古い時代衣裳を引っ張り出してきた。
婚礼衣裳は、借りれば、かなりの金額になる。使える物が有るのであるから、使用しない手は無い。
但し、ちょっと「派手」な衣裳ではあったが・・・。
式を執り行う「斎主」は、宮司である慎也。
総司・スミレの方は良いとして、後の二人の相手は慎也自身。
自らの結婚式の斎主をするという、これもあり得ない形式。おまけに、正式な妻でなく、「妾」だ。
だが、ここでは世間の常識なんて通用しない。何をしようと、今更だった。
巫女役は、舞衣と祥子が務める。
美雪側の参列者は両親と祖父母で、父の守は、略礼装の洋装。祖父の実は、紋付羽織袴。母の洋子と祖母の八重子は、留袖姿。
友人の結婚式だと母に偽って内緒で来ている杏奈と環奈は、振袖姿。自分たちとしては既婚者のつもりだが、振袖でないと彼女らの母親は承知してくれない・・・。
そして、早紀の側は、スミレのことでお世話になったという、総司の親友の「探偵さん」が来ていた。ブラックスーツに白ネクタイの、略礼装姿だ。
準備を終えて一息ついていた舞衣と慎也に、べったりつきまとっている杏奈と環奈。これから着替えをしなければならなく、ハッキリ言って邪魔であるが、無理に引き離され、居たくても居られなくなってしまっているという事情なのであるから、やむを得ない。
その、杏奈と環奈が、総司と談笑している人物に気付いた。…「探偵さん」である。
「あれ? 何で、勘治叔父様がいるの?」
「え?」
舞衣と慎也は、目を丸くした。
総司からは、スミレの秘密を、黒崎・橋本から守ってくれた探偵と紹介された。さらに、亜希子の研究所も紹介してくれたという…。その人物が、杏奈たちの叔父?
杏奈と環奈の視線に気が付いて、探偵もこちらに目を向けた。
目つきは、かなり鋭い。まさに、修羅場を潜って来ているという感じ。が、すぐにその鋭さは消え、ニヤッと笑みを送ってきて、総司に向き直った。
「あの人は、私たちの父の弟で、山本勘治です」
「内緒ですが、叔父は公安関係の秘密の工作もしてるんですよ」
「スミレさんの保護も担当してたんですね」
「叔父様だったから、うちの研究所を紹介したんだ…」
交互に、小さな声で杏奈と環奈が言う。
慎也と舞衣は、同時に同じことを考えた。
(公安の能力、侮りがたし・・・)
が、勘治は元々、総司の親友だった。つまり、偶然と言えば、偶然なのだ。
親友に依頼されて、たまたま関わったことが、自分の仕事とも深く関わっていたということ。だから、いつもよりも少しばかり力を入れ、積極的に動いた…。そういうことである。
これに関しても、またまた腐れ縁。…あ、いやいや、縁というモノは、誠にもって有難いモノだ。
式が始まる時刻となる。
社務所からの参進。社務所から拝殿までは、敷物が敷かれている。
先頭は、斎主である慎也。白色装束の「斎服」姿で頭には垂纓冠、手には笏。
続くは「千早」を羽織った巫女姿の、舞衣と祥子。
そして主役である、総司とスミレの、束帯・十二単姿。
そう、時代衣裳というのは、この大層な代物だ。裾を引きずるこの装束の為、敷物が敷かれていたのだ。
着慣れない衣裳で、二人とも歩き難そうにしているが、神社という背景にはピッタリで、優雅で優美。誰もが思わず見入ってしまう。
更に続いて準主役で、十二単の略装である袿袴姿の、美雪と早紀。
こちらは十二単に比べればかなり歩きやすそうだ。だが、見た目は、やはり雅で目を引く。
その後ろには、美雪の家族と、山本探偵、杏奈・環奈が続くという花嫁行列だった。
神社境内は、無人では無い。他にも参拝者がいた。当然ながら、境内に入る他の参拝者を、止めるわけには行かないのだ。
その為、偶然居合わせた参拝者から、この艶やかな行列の写真を撮ろうとスマホを向けられる。が、正面側から顔が分かるように撮影するのを、上手く妨害している何人かの人がいた。
これは、山本探偵の仕業であろうか。もしくは公安か…。
いや、どちらにしても、これでは、内緒で来ている杏奈と環奈のことが、彼女たちの父親に筒抜けだ。当の本人たちも気になり、前を歩く叔父に小声で確認した。
すると、あの妨害は山本探偵の仕業。ここに二人が来ていることは内緒にしてくれるとのことで、ホッとした杏奈と環奈であった。
1
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる