上 下
16 / 80
美雪と早紀

15 結婚許可1

しおりを挟む

「慎也さん!大変です!」

 美雪が、慎也の部屋に駆け込んできた。
 早紀も同じであるが、美雪はそれまで慎也のことを「宮司さん」と呼んでいた。が、妾になることが決まり、呼び方を改めていた。

「な、なに? どうしたの?」

 机に向かって書き物をしていた慎也が振り返った。
 早紀の話では、彼女の父親は再婚したがっていて、その許可を貰いに来るとのこと。早紀に関しては特に問題なく話が進みそうだと、慎也は安心しきっていた。

「さ、早紀の小父おじ様が・・・」

「あ、もう、いらっしゃったのか。で、何が大変なの?」

「そ、それが・・・」

 美雪は口をパクパクさせて、後の言葉が出ない。

「と、とにかく、早く来てください!」

 それだけ何とか口にした美雪に左手を引かれて、慎也は部屋から連れ出される。途中で祥子も捕獲され、美雪に二人は引っ張られた。
 丁度、舞衣もあわてて神社から戻ってきた。

「舞衣さんも早く~!」

「え?何? あ、もういらっしゃってる? すぐ行くから!」

 舞衣の返事を聞いて、美雪はつかんでいる慎也と祥子を、そのままグイグイ引っ張ってゆく。
 慎也が座敷に入ると、上座に坐った御客様の向かいに早紀が坐り、そのお客様を早紀が無言でにらみつけていた。
 今日は早紀の相談の時と違い、客を迎えるということで机と座布団が用意してある。しかし、まだお茶も出していないようだ。
 坐っている男性は、早紀の父親であろう。が、女性は、かなり若い。そして困り顔でうつむいている。

(おや?)

 慎也は、少し首を下げてのぞき込むようにした。うつむいていて、よく見えないが…。確か・・・。舞衣と同じ隅田川乙女組の・・・。

「え、遠藤スミレさん…」

「はあ? 誰じゃ?」

慎也の口から発せられた聞いたことのない名前に、祥子が怪訝けげんな顔をした。

「いや、舞衣さんと同じアイドルグループに所属していた子なんだけど・・・。どういうこと?」

 小声で祥子に言いながら、その、上座二人をにらみつけている早紀の隣に慎也が坐る。
 祥子は慎也の斜め後ろ。美雪が、早紀のもう一方の隣に坐った。
 美雪が坐り終わったのを確認し、慎也は早紀にいた。

「えっと…。どういうことになっているのかな?」

「知りません! ただ、正面に居るのが、私の父です。みんなそろうまで黙ってろと言ってあります」

「は、はあ?」

 早紀は、慎也たちが来るまで自身の父親に発言を許さず、その目の前の二人をずっとにらみつけていたということだ。

「ゴメンナサイ~! お待たせしました。急なお客様があって・・・。あ、あれ? スミレちゃんが、何で?」

 あわてて入ってきた舞衣が固まった。

「え!! もしかして、スミレちゃんの結婚相手って、早紀さんの・・・」

 続く言葉を無くした舞衣に、早紀が視線を向ける。明らかな怒り顔。
 慎也が一番奥の、自分の隣の空席を指さした。舞衣に、ここへ坐れと…。

「さて、みんなそろいました。父さん、釈明をどうぞ!」

「え、え~と、私が早紀の父親の山上総司です。実は、隣に坐っている遠藤スミレさんと再婚したく、娘の了承をもらいに来たのですが・・・。実はスミレさんは、もう、身籠みごもっていまして…。ですから、男の責任として、正式に結婚したいと・・・」

 早紀がスミレに鋭い視線を流す。

「遠藤さん!失礼ですけど、御歳は?」

 困り顔のまま、スミレは顔を上げ、おずおずと答える。

「二十二歳です」

「私も二十二歳……。『若い』とは聞いていたけど…。父さん、娘と同年の子に手を出したの?
 で、遠藤さんは、いつから父とお付き合いを?」

 早紀は、「五年付き合っている彼女が居る」と、既に電話で父から聞いていた。この質問は、その確認の為。だから、父に向けていた視線を途中でスミレに移し、スミレにいた。

「は、はい、五年と少し前から・・・」

 返答を受け、再び鋭い視線を父親に戻す。

「こっちに全く帰ってこなくなった頃なのよね。娘をホッタラカシて、その娘と同い年の若くて可愛い子を手籠てごめにして、毎日イイコトしまくってたんだ…」

 いや、父は帰ってこなくなったのではない。帰っては来ていた。泊まらなくなっただけなのだ。
 しかし、その父、総司は娘に反論しなかった。そう、総司は・・・。

「ち、違うんです!」

 急に、隣のスミレが大きな声を出した。

「スミレちゃん、落ち着いて! いいんだよ。その通りなんだから」

 発言を止めようとする総司に、スミレは大きくかぶりを振った。

「違います! 総司さんは悪くなんかありません! 総司さんが居なければ、私は生きていない! 総司さんは、私の命の恩人なんです!」

 スミレは、やおら立ち上がり、いきなり服を脱ぎだした。

「ちょ、ちょっと、スミレちゃん!!」

 舞衣があわてる。総司も止めようとするが、その手を払い、ブラジャーも外す。スミレは上半身裸になった。
 舞衣は即座に慎也の目に手を当て、見えないように目隠しをした。
 祥子は怪訝けげんな顔。美雪と早紀は、唖然あぜんとして見つめる・・・。
 構わずスミレは、スカートも脱ぐ。そして、最後のショーツに手を掛ける。
 慎也は、目を隠されたまま。だが、ついこの間、同じようなことがあったばかり。それをしたのは、今、慎也の隣に坐っている早紀だ。

(もしかして・・・。いや、そんなはずは・・・。そんなこと、あり得ない・・・)

 舞衣の手で隠されてしまっているが、慎也はスミレが次々脱いでいく気配を感じていた。
 そのスミレは、ついにショーツも脱ぎ終わり、全裸になった。

 その股間には・・・。
 あるはずがない物が、ぶら下がっていた。

 舞衣も、呆然ぼうぜん・・・。慎也の目に当てている手の力を抜いた。
 目隠しが無くなり、慎也の目に飛び込んできたモノ。舞衣の後継者と言われた元美少女アイドルの全裸と、その股間の異物・・・。

 スミレの隣の総司が、彼女に服を羽織はおらせ、坐らせた。

「私と同じ体・・・」

 早紀が、小さな声でつぶやいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

処理中です...