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親友との再会
66 キス?
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咲夜ちゃんちの諸々の手続きは、無事に全て完了しました。
焼けた家の瓦礫撤去も地元の建設会社に依頼。片付いたら新たにお店を建てる…。そう考えていたんですけど。
それに待ったが掛かりました。
掛けてきたのは星野です。どうせ建て直すなら、こんな田舎じゃなくて別のところの方が良いと…。
というのも、木弓のヤツが有ること無いこと、いや、無いこと無いこと、変な噂を流しまくっているとか。
火事の前の改装オープンの際にあまりお客が入らなかったのも……。
質の悪いことに、アイツの爺ちゃんは自治会長。地元の有力者なんですよね。
だから、元の場所にお店を建て直しても、お客が入る見込みがない。それだったら、こんな山の中より、全然違うもっと開けた所の方が良いと……。
あのね。そういう重要情報は、早く教えてくださいよね。
あの場所に拘ってたから、二人して悩んでたのよ。
御蔭で私は超大金持ちになっちゃったじゃない! って、いやこれは別に悪いことでは無いか…。
お店を建てないにしても、咲夜ちゃんは先祖伝来の土地を失わずに済んだ。まあ、良かったかも。
とにかく、そんなだったら、私んち近くにお店開こうよ。
というか、私んちでやらない? 西離れを改装して!
江藤家の土地には、お店では無くて自宅を建て直せばよいのです。あ、星野と結婚しちゃえば、それも不要か……。
まあ、てなことで、これも半ば強引に我が家で蕎麦屋をすることに決めてしまったのでした。
新たに建てるより、既にある建物を使う方が早いに決まってる。
但し、西離れには水道が引いてありません。それに、飲食店をするにはそれなりに整えるべき物が多々あり、保健所の営業許可も必要です。
ですから、今日から!明日から!なんてことは出来ません。
そうなんですが……。
でへへ。とりあえず、今日か明日にでも私は、咲夜ちゃんの打った蕎麦が食べたいな…。
え?道具も焼けちゃって無い?
あ、そうだ、祖母の家に確か、有ったはず……。
ということで、早速祖母の家へ向かったのであります。
私の祖母の家。咲夜ちゃんちよりもずっと山の中の一軒家です。
我が家から咲夜ちゃんちまでが車で約一時間。そこから更に、グニャグニャで上ったり下ったりの山道を一時間程度というトンデモナイ山奥。
途中からは道も狭くなり、その幅は車一台分しかありません。対向車が来るとすれ違えない。ですが、この先には祖母の家しかなく、対向車なんて来ないので構わず突っ込みます。
中学時代の町営送迎バスは、この狭い道には来てくれませんでした。ですので、私はここを歩いて広い道まで30分かけて出ていたのでした。
到着して改めて見ると、う~ん、デカイ。祖母の先祖は何者だったんだろう? こんな山奥の一軒家で、この規模は何!
祖母が亡くなってから二年半。草はカナリ生えてますが、そんなに荒れた感じではありませんね。
でも、ここも、手入れしておかないとダメかな…。ちょっと、それはキツイな。
あ、あの弟子二人なら喜んでやるかも……。
蕎麦打ちの道具は、確か、納戸の中。開けて、咲夜ちゃんに必要なモノを取り出してもらいました。
のし板に、麺棒に、捏ね鉢。麵切包丁に、切り板に、駒板か…。
うわ、捏ね鉢って、木製なのに重いのね。
ふう~ん、重くないと動いてしまって捏ねにくいんだ。なるほど、なるほど。
さてさて、必要な道具は確保しました。次は材料の蕎麦粉です。
向かうは農家である星野の家。先に連絡してあるので、準備してくれているはずです。
到着すると、すぐに星野は出てきました。
「おう、準備出来てるぞ。製粉したての蕎麦粉と小麦粉だ」
星野は段ボール箱にまとめて入れてあるそれをヒョイッと持って車に積んでくれます。
お~、ムキッとした男の筋肉! か、カッコイイ……。
いやいやいや、何考えてんだ、私っ!
私がこいつにトキメイテどうする!
そんなことよりも、蕎麦の話。
「製粉したてって凄いね。そんな機械も持ってるんだ」
「まあな。小さい安物だけどな。本当はもっと大きい石臼挽きの製粉機が良いんだけどな。高価だからな」
「えっ、石臼? それなら、お婆ちゃんちにあったわね。持って来ればよかった」
「いやいや、それ、昔ながらの手動のだろ?
店で使うのにそれは手間かかり過ぎて現実的じゃないぞ。機械で石臼を回すヤツがあるんだよ。
小さいので短時間で挽くと、摩擦熱で粉が焼けちゃうんだよな。だから、石臼でゆっくり挽く方が良いんだよ。蕎麦の香りが飛ばなくてな」
「へ~、そうなんだ。じゃあ、その石臼製粉機も私のとこで購入することにしようかな」
「お、お前、金持ちだな……」
なんて、私と星野の会話。
だけど、星野はその間もチラチラ咲夜ちゃんを見てる。
咲夜ちゃんも同様で、視線が合うと恥ずかしそうに顔を赤くしている……。
この間から私がけしかけてるからね。二人とも完全に意識してるな。
う~ん、なんか、キュンキュンするよ~。堪んない~!
「ちょ、ちょっとイイか? 多喜」
星野が私を手招きし、小屋の影の方へ誘導します。
咲夜ちゃんってば、不審そうな顔してる……。
なによ、こんな怪しい場所へ女子を連れ込んで!
「おい、お前。咲夜に変なこと吹き込んでないだろうな!」
「お前って言わないでよ!別に変なことは吹き込んでません!
でもね。咲夜ちゃんもあなたが好きみたいよ。『告っちゃえ』ってけしかけたら、『断られたら、その後、顔を合わせられない』ですって…。
男のアンタから告白してあげなさいよ」
「そ、そうか。そうなんだ…。じゃ、じゃあ、近いうちに折を見て……」
「そうなさい。でも、出来れば、その時は、私もその場面を陰ながら拝見したいものですな」
「な、なんでお前に、そんなの見せなきゃいけないんだよ!」
「だって、親友が思い人と結ばれる瞬間なのよ。見たいに決まってるじゃない!
告白と、その後の熱~い抱擁に、ブチュ~ッと濃厚なキス…。う~っ、堪んないっ!!」
「お、お前な・・・。
絶対、お前にだけは見られたくない!」
「何でよ、ケチ!」
「あ、あの~。どうしたの? また喧嘩?」
咲夜ちゃんが心配そうに覗き込んでる。
えっと、聞かれてないよね……。
「な、何でもないぞ、咲夜。喧嘩なんかしてない」
「そうよ、咲夜ちゃん。大丈夫!」
大慌てで星野と別れ、車に乗り込んだのでありました。
帰りの車中、咲夜ちゃんが言い出しにくそうに聞いてきます。
「ねえ、ハルカちゃん。さっき、勇樹君と何を話してたの?」
そうら、おいでなすった。
気にならないはずがないですよね。愛しの彼が、他の女とコソコソ話していたら……。
「別に、大したことはないよ~。ただ、彼、咲夜ちゃんのこと、すっごく心配してたよ~」
「そうなの? …で、でも、き、キスがどうとか、ちょっと聞こえちゃったんだけど」
あ、ヤバ…。ど、どうしよう……。
「そ、それは……、魚のことよ。ほ、ほら、蕎麦には天ぷらが付き物でしょう!
天ぷらと言えば、海老か鱚かって、濃厚な鱚の旨味は堪んないって、ね。
でもね、海無し県の岐阜県でお店するんだから、やっぱ、私は山菜だと思うのよね」
「あ~、天ぷらの話だったのね。そういえば、熱いとか濃厚とかも言ってたね。
そうね、揚げたての天ぷら欠かせないよね。山菜と、秋のキノコ、良いよね!」
う、熱いって、『熱~い抱擁』の熱いか…。
危ない、危ない。なんとかごまかせたよね。
ということで、家に着きました。
運び込んだのは、暫く使わずに仕舞い込まれていた道具です。
ですので、綺麗に洗って、乾燥させて…。
明日は日曜日で弟子たちも来ますので、明日、咲夜ちゃんの蕎麦を振舞ってもらうことになりました。
焼けた家の瓦礫撤去も地元の建設会社に依頼。片付いたら新たにお店を建てる…。そう考えていたんですけど。
それに待ったが掛かりました。
掛けてきたのは星野です。どうせ建て直すなら、こんな田舎じゃなくて別のところの方が良いと…。
というのも、木弓のヤツが有ること無いこと、いや、無いこと無いこと、変な噂を流しまくっているとか。
火事の前の改装オープンの際にあまりお客が入らなかったのも……。
質の悪いことに、アイツの爺ちゃんは自治会長。地元の有力者なんですよね。
だから、元の場所にお店を建て直しても、お客が入る見込みがない。それだったら、こんな山の中より、全然違うもっと開けた所の方が良いと……。
あのね。そういう重要情報は、早く教えてくださいよね。
あの場所に拘ってたから、二人して悩んでたのよ。
御蔭で私は超大金持ちになっちゃったじゃない! って、いやこれは別に悪いことでは無いか…。
お店を建てないにしても、咲夜ちゃんは先祖伝来の土地を失わずに済んだ。まあ、良かったかも。
とにかく、そんなだったら、私んち近くにお店開こうよ。
というか、私んちでやらない? 西離れを改装して!
江藤家の土地には、お店では無くて自宅を建て直せばよいのです。あ、星野と結婚しちゃえば、それも不要か……。
まあ、てなことで、これも半ば強引に我が家で蕎麦屋をすることに決めてしまったのでした。
新たに建てるより、既にある建物を使う方が早いに決まってる。
但し、西離れには水道が引いてありません。それに、飲食店をするにはそれなりに整えるべき物が多々あり、保健所の営業許可も必要です。
ですから、今日から!明日から!なんてことは出来ません。
そうなんですが……。
でへへ。とりあえず、今日か明日にでも私は、咲夜ちゃんの打った蕎麦が食べたいな…。
え?道具も焼けちゃって無い?
あ、そうだ、祖母の家に確か、有ったはず……。
ということで、早速祖母の家へ向かったのであります。
私の祖母の家。咲夜ちゃんちよりもずっと山の中の一軒家です。
我が家から咲夜ちゃんちまでが車で約一時間。そこから更に、グニャグニャで上ったり下ったりの山道を一時間程度というトンデモナイ山奥。
途中からは道も狭くなり、その幅は車一台分しかありません。対向車が来るとすれ違えない。ですが、この先には祖母の家しかなく、対向車なんて来ないので構わず突っ込みます。
中学時代の町営送迎バスは、この狭い道には来てくれませんでした。ですので、私はここを歩いて広い道まで30分かけて出ていたのでした。
到着して改めて見ると、う~ん、デカイ。祖母の先祖は何者だったんだろう? こんな山奥の一軒家で、この規模は何!
祖母が亡くなってから二年半。草はカナリ生えてますが、そんなに荒れた感じではありませんね。
でも、ここも、手入れしておかないとダメかな…。ちょっと、それはキツイな。
あ、あの弟子二人なら喜んでやるかも……。
蕎麦打ちの道具は、確か、納戸の中。開けて、咲夜ちゃんに必要なモノを取り出してもらいました。
のし板に、麺棒に、捏ね鉢。麵切包丁に、切り板に、駒板か…。
うわ、捏ね鉢って、木製なのに重いのね。
ふう~ん、重くないと動いてしまって捏ねにくいんだ。なるほど、なるほど。
さてさて、必要な道具は確保しました。次は材料の蕎麦粉です。
向かうは農家である星野の家。先に連絡してあるので、準備してくれているはずです。
到着すると、すぐに星野は出てきました。
「おう、準備出来てるぞ。製粉したての蕎麦粉と小麦粉だ」
星野は段ボール箱にまとめて入れてあるそれをヒョイッと持って車に積んでくれます。
お~、ムキッとした男の筋肉! か、カッコイイ……。
いやいやいや、何考えてんだ、私っ!
私がこいつにトキメイテどうする!
そんなことよりも、蕎麦の話。
「製粉したてって凄いね。そんな機械も持ってるんだ」
「まあな。小さい安物だけどな。本当はもっと大きい石臼挽きの製粉機が良いんだけどな。高価だからな」
「えっ、石臼? それなら、お婆ちゃんちにあったわね。持って来ればよかった」
「いやいや、それ、昔ながらの手動のだろ?
店で使うのにそれは手間かかり過ぎて現実的じゃないぞ。機械で石臼を回すヤツがあるんだよ。
小さいので短時間で挽くと、摩擦熱で粉が焼けちゃうんだよな。だから、石臼でゆっくり挽く方が良いんだよ。蕎麦の香りが飛ばなくてな」
「へ~、そうなんだ。じゃあ、その石臼製粉機も私のとこで購入することにしようかな」
「お、お前、金持ちだな……」
なんて、私と星野の会話。
だけど、星野はその間もチラチラ咲夜ちゃんを見てる。
咲夜ちゃんも同様で、視線が合うと恥ずかしそうに顔を赤くしている……。
この間から私がけしかけてるからね。二人とも完全に意識してるな。
う~ん、なんか、キュンキュンするよ~。堪んない~!
「ちょ、ちょっとイイか? 多喜」
星野が私を手招きし、小屋の影の方へ誘導します。
咲夜ちゃんってば、不審そうな顔してる……。
なによ、こんな怪しい場所へ女子を連れ込んで!
「おい、お前。咲夜に変なこと吹き込んでないだろうな!」
「お前って言わないでよ!別に変なことは吹き込んでません!
でもね。咲夜ちゃんもあなたが好きみたいよ。『告っちゃえ』ってけしかけたら、『断られたら、その後、顔を合わせられない』ですって…。
男のアンタから告白してあげなさいよ」
「そ、そうか。そうなんだ…。じゃ、じゃあ、近いうちに折を見て……」
「そうなさい。でも、出来れば、その時は、私もその場面を陰ながら拝見したいものですな」
「な、なんでお前に、そんなの見せなきゃいけないんだよ!」
「だって、親友が思い人と結ばれる瞬間なのよ。見たいに決まってるじゃない!
告白と、その後の熱~い抱擁に、ブチュ~ッと濃厚なキス…。う~っ、堪んないっ!!」
「お、お前な・・・。
絶対、お前にだけは見られたくない!」
「何でよ、ケチ!」
「あ、あの~。どうしたの? また喧嘩?」
咲夜ちゃんが心配そうに覗き込んでる。
えっと、聞かれてないよね……。
「な、何でもないぞ、咲夜。喧嘩なんかしてない」
「そうよ、咲夜ちゃん。大丈夫!」
大慌てで星野と別れ、車に乗り込んだのでありました。
帰りの車中、咲夜ちゃんが言い出しにくそうに聞いてきます。
「ねえ、ハルカちゃん。さっき、勇樹君と何を話してたの?」
そうら、おいでなすった。
気にならないはずがないですよね。愛しの彼が、他の女とコソコソ話していたら……。
「別に、大したことはないよ~。ただ、彼、咲夜ちゃんのこと、すっごく心配してたよ~」
「そうなの? …で、でも、き、キスがどうとか、ちょっと聞こえちゃったんだけど」
あ、ヤバ…。ど、どうしよう……。
「そ、それは……、魚のことよ。ほ、ほら、蕎麦には天ぷらが付き物でしょう!
天ぷらと言えば、海老か鱚かって、濃厚な鱚の旨味は堪んないって、ね。
でもね、海無し県の岐阜県でお店するんだから、やっぱ、私は山菜だと思うのよね」
「あ~、天ぷらの話だったのね。そういえば、熱いとか濃厚とかも言ってたね。
そうね、揚げたての天ぷら欠かせないよね。山菜と、秋のキノコ、良いよね!」
う、熱いって、『熱~い抱擁』の熱いか…。
危ない、危ない。なんとかごまかせたよね。
ということで、家に着きました。
運び込んだのは、暫く使わずに仕舞い込まれていた道具です。
ですので、綺麗に洗って、乾燥させて…。
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