究極ラッキーガール、最強貧乏神に取り憑かれました…。 ~神と人を繋ぐ“白結の巫女”ハルカの、ナイショ話~

しんいち

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梅干しと、父の思い

56 梅干し、試食

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 日曜日の梅干し試食会。
試食するのは、一番完熟度が高かった梅を漬けた樽のモノ。カビが浮いて、ひと手間掛かったヤツですね。
潰れ状態になったのも一番多いので、この一樽は我が家の自家用です。

 梅干しだけ食べるってのも何ですので、ご飯もご用意してますよ。もちろん釜炊きです。
 タカイの小父さんも誘いましたが、老人会の会合があるとか…。残念!

 で、座敷に三人分のお膳。炊き立てご飯と、大きな梅干し二個ずつです。

 まずは、私が一口。酸っぱい…。
でも、濃厚な梅の味!香りも強い!美味しい!!

 これよ、これ!!
ご飯にも合う! モリモリいける!

 間違いない。記憶にある梅干しの味。父さんの味だ!!

 なんだか、涙が出てきちゃいます。

 私の様子を見ていた弟子二人、頷き合って箸を取り、梅干しをパクッ。

「酸っぱ~い!でも美味しい!」
「うそ、梅干しって、こんなに美味しかった?」

 そうでしょ、そうでしょ。
これなのよ。これが本物なのよ。

 でも、ホントに二人にはお世話になりましたね。私一人では、この味の再現は難しかった。
二人が後押ししてくれ、手伝ってくれたからこそ、出来たこと。ホントに、感謝しかありません。
 この樽以外の九樽はスーパータカイで買い取ってもらい、売ってもらうことになっています。
だから、「儲けは三人で山分けねっ」て言ったら、二人掛かりでシッカリ怒られてしまいました。
「弟子が手伝うのは当たり前で、そんなの受け取れない」って…。

 いやいや、祐奈さんよ。アンタが、それ言うか?
株の儲けの三分の一を、無理やり押し付けてきたアンタが…。

 へ?梅の原価もあるから、当然だって?
じゃあ、その分引いた分から…。

 いや、だから、なんで私がそんなに怒られなきゃならないのよ。
分かったわよ、分かりました!
 お二人の好意として、有難く頂戴します!



 そうそう、レイラからの情報。
買ってくる梅干しは味が薄いと感じていたのですが、それは「調味梅干し」だからなんですって。
 保存のために塩分を濃くして漬けておき、それを塩抜きして味付けして売ってゆくみたい。
 そうすれば、減塩梅干しも可能なんですね。
だけど、当然塩抜きの時に梅本来の味も抜けちゃうわけです。
 だから、こんな風に本格的な梅干しは、超高級品なんですって。


 ついでに…。食品衛生法で漬物を漬けるのに許可が必要になったって話。
浅漬けで食中毒が起きたから規制強化になったとのこと。
そういえば、そんな事件、あったような。夏祭りのキュウリだっけ…。
 これによって今回、私もタカイの小父さんに頼らなければ販売用の製造はできませんでした。
 梅干しで食中毒なんて考えられないと思うんですけどね。何とも、奇妙な話です。

 同じことで、秋田名物の「いぶりがっこ」も危機的状況とか…。
 いぶりがっこは、大根を煙でいぶしてから漬けるという、独特の漬物です。
これも零細の製造元が多く、後継者不足も深刻とか。その上、今回の規制強化です。
これを機に廃業というところもカナリとか、ニュースになっていたそうです。
 小規模で資金も無く、儲けも少ない。そんなところに、施設を整えろだの資格が必要だの言われれば、廃業という選択は当然のことなのです。

 規制によって、昔ながらの本物が失われてゆく…。
大規模にし、利益を追求しようとするから安易な製法に走り、添加物や調味料もバンバン入れられて、味も本来のモノと変わってしまって、なんて…。
「そんなのオカシイ! あり得ない!」と、レイラが熱くなっています。

 確かに、その通りよね。
でも、規制する方の言い分も、必ずしも間違っているとは言えません。清潔で安全なモノをってのも大事なこと。
 難しい問題ですよね。

 ただ、一つ言えるのは、手間暇かけた本物を求めている人も間違いなく居るということ。
こだわり商品を扱うスーパータカイが、これだけ繁盛してるんですからね。
 そして、本物が欲しいのなら、頑張って本物を守っている人を支援しなきゃね。
 そういうものを探し見つけて、積極的に購入し、消費者の方から宣伝する。
本物の方が売れて行く様になれば、安易な製法に頼る方も考え直さなきゃならなくなるでしょ。
これが、消費者にできる支援方法じゃないかな?
 …なんて言ったら、レイラも納得してくれました。

 って、あ、あいや……。
なんか、ちょっくら、お固い話になっちゃいましたよね。
 てへへっ。
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