究極ラッキーガール、最強貧乏神に取り憑かれました…。 ~神と人を繋ぐ“白結の巫女”ハルカの、ナイショ話~

しんいち

文字の大きさ
上 下
52 / 78
梅干しと、父の思い

52 漬物、どうぞ1

しおりを挟む
 さて、ナギさんが席に着かれ、宴会の開始です。
 会った当初はビンちゃんに怯えまくっていたナギさん。一回目のお食事会後には、すっかり慣れてしまい、普通に接しています。…敬語は使ってますけどね。
 すぐに打ち解けられたのは、やっぱり酒の力かな?
あの時、一升瓶三本空けたもんね。
 二回目も三本の空瓶が出来てしまいました。今日も用意したお酒は三升。
いや、これ以上は御用意致しません。底なしの二柱、きりないですからね。

 さあ、メインの鮒鮨ふなずしですよ~。
まず私が食べない事には神様に食べて貰えません。ですので、御先に失礼して…。

 う、クサッ!

 切った時も臭かったけど、改めて嗅いでもやっぱり臭い。
食欲そそる臭いじゃないな…。
「あれは、人間の食べ物じゃない」
なんて酷いこと言っていた人もいたけど…、確かに……。
 これ、ホントに大丈夫よね?
 食べても平気なモノなのよね?!

 恐る恐る口に入れ、味は…。

 う、う~ん…。

 塩味と酸味?
チーズみたい?

 で、でも…。
これ意外とイケルかも。
お酒には合うんじゃない?

 ハイ。ではナギさん! どうぞ。あ~ん。

「ふぐふぐ…。う~ん、美味しいわね」

 あらよかった。ナギさんのお口にも合ったみたい。
 じゃあ、ビンちゃん。あ~ん。

「うぐうぐ。お~、これはイケル。珍味だ」

 あれあれ、こっちもOKね。
じゃあ、お二柱、お酒もどうぞ。私が一杯頂いてからっと…。

「あ~、最高!」
「やっぱり、酒が一番良い!」

 同感ではありますが、完全に呑兵衛の発言ですね…。

 超絶美女と、幼女と、金髪女が酒を酌み交わす…。変な光景。
まあ、いいや。
(あ、いや、幼女に酒を飲ませてはいけません。ビンちゃんは神様ですからね!)


 野菜の漬物もありますよ。
まずは岐阜県名産、赤カブ漬け。
 尤も、岐阜県といっても、この美濃地方では無くて飛騨地方のモノなんですけどね。
添加物は入っていなく、赤カブを塩だけで漬けたモノ。なのに酸っぱいのは、ヨーグルトと同じ乳酸発酵しているから。
お腹に優しい発酵食品なんですね。鮒鮨とも同じです。

「う~ん。この酸味も上品でたまんないわ~」
「いや同感だな。最高に美味いぞ」

 はいはい、お酒もどうぞ。

「いや~、たまんない!」
「ふううむ。染み渡る!」


 あと、タカイで薦められた沢庵。
これはこの近くで漬けているモノみたいで、養老漬けと書いてありますね。
 養老というのは、お隣の町で、元正天皇命名で元号にもなった由緒正しい地名です。
その近辺で作られているということでの名前。
 干した大根のヌカ漬けですが、原材料を見てみると、ナスの葉っぱと唐辛子も入っているみたい。
 噛むとカナリノ歯ごたえ。干してるからですね。
そして、ビックリ。今まで食べていた沢庵とは全く別物で、酸っぱい!
これもジックリつけて乳酸発酵させた漬物なんですね。
 ただ、単に酸っぱいだけではなく、程よい塩味。
独特の風味はナスの葉なのかな?ナスの葉っぱなんて食べたことないから、分かんないけどね。多分ね。
さらに、最後に余韻として残るのは、ジンワリ唐辛子の辛味…。

 なによ、これ。最高じゃないですか!
近くにこんなスゴイ漬物があったなんて、知らなかったよ。
お酒にも合うけど、これはやっぱ、ご飯かな。丼一杯ペロッといっちゃえそうです。
 当然、二柱も高評価!


 それから、守口漬けなんてのも用意してますよ。
これは前から気になっていたモノ。
お隣、愛知県の特産です。…と思っていたら、実は、元は岐阜県のモノだという話も…。
 愛知って、そういうの多いよね。
有名な『味噌カツ』や『天むす』や『ひつまぶし』だって三重県発祥だし、最近有名になってきた『鶏ちゃん』は我が岐阜県だし。
喫茶店のモーニング文化も岐阜県だし!(…諸説あり)
 まあ、そんなことは、横に置いといて……。

 守口漬けは守口大根という、牛蒡の様に長~い特殊な大根の粕漬けです。
この大根、直径は2~3cmだけど、長さは普通でも120cm、最高記録191.7cmって、身長よりデカイじゃん。
どういう大根じゃ~!!
 それだけ長くなるということは、栽培も難しく、どこでも栽培できるものではありません。おまけに漬物以外の使い道がない。
岐阜県と愛知県の、極一部地域でしか栽培されていないという、希少種です。
ってテレビでやっているのを見て、気になっていたんですよ。

 お味は…。
おお、シャクシャクとした心地良い食感と、酒粕の濃厚な風味。味醂が使われているからかな、甘みもある。
これ、大根と知らなければ瓜と間違えるかも。奈良漬けと似た感じ。
ウナギの蒲焼を食べたくなるな。
 はい、お二柱も。あ~ん。

「ふうう~ん。うあ~、なにこれ!不思議な味!」
「おほ、芳醇で甘美。良いな」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧乏神の嫁入り

石田空
キャラ文芸
先祖が貧乏神のせいで、どれだけ事業を起こしても失敗ばかりしている中村家。 この年もめでたく御店を売りに出すことになり、長屋生活が終わらないと嘆いているいろりの元に、一発逆転の縁談の話が舞い込んだ。 風水師として名を馳せる鎮目家に、ぜひともと呼ばれたのだ。 貧乏神の末裔だけど受け入れてもらえるかしらと思いながらウキウキで嫁入りしたら……鎮目家の虚弱体質な跡取りのもとに嫁入りしろという。 貧乏神なのに、虚弱体質な旦那様の元に嫁いで大丈夫? いろりと桃矢のおかしなおかしな夫婦愛。 *カクヨム、エブリスタにも掲載中。

金沢ひがし茶屋街 雨天様のお茶屋敷

河野美姫
キャラ文芸
古都・金沢、加賀百万石の城下町のお茶屋街で巡り会う、不思議なご縁。 雨の神様がもてなす甘味処。 祖母を亡くしたばかりの大学生のひかりは、ひとりで金沢にある祖母の家を訪れ、祖母と何度も足を運んだひがし茶屋街で銀髪の青年と出会う。 彼は、このひがし茶屋街に棲む神様で、自身が守る屋敷にやって来た者たちの傷ついた心を癒やしているのだと言う。 心の拠り所を失くしたばかりのひかりは、意図せずにその屋敷で過ごすことになってしまいーー? 神様と双子の狐の神使、そしてひとりの女子大生が紡ぐ、ひと夏の優しい物語。 アルファポリス 2021/12/22~2022/1/21 ※こちらの作品はノベマ!様・エブリスタ様でも公開中(完結済)です。 (2019年に書いた作品をブラッシュアップしています)

【完結】召しませ神様おむすび処〜メニューは一択。思い出の味のみ〜

四片霞彩
キャラ文芸
【第6回ほっこり・じんわり大賞にて奨励賞を受賞いたしました🌸】 応援いただいた皆様、お読みいただいた皆様、本当にありがとうございました! ❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。. 疲れた時は神様のおにぎり処に足を運んで。店主の豊穣の神が握るおにぎりが貴方を癒してくれる。 ここは人もあやかしも神も訪れるおむすび処。メニューは一択。店主にとっての思い出の味のみ――。 大学進学を機に田舎から都会に上京した伊勢山莉亜は、都会に馴染めず、居場所のなさを感じていた。 とある夕方、花見で立ち寄った公園で人のいない場所を探していると、キジ白の猫である神使のハルに導かれて、名前を忘れた豊穣の神・蓬が営むおむすび処に辿り着く。 自分が使役する神使のハルが迷惑を掛けたお詫びとして、おむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりをご馳走してくれる蓬。おにぎりを食べた莉亜は心を解きほぐされ、今まで溜めこんでいた感情を吐露して泣き出してしまうのだった。 店に通うようになった莉亜は、蓬が料理人として致命的なある物を失っていることを知ってしまう。そして、それを失っている蓬は近い内に消滅してしまうとも。 それでも蓬は自身が消える時までおにぎりを握り続け、店を開けるという。 そこにはおむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりと、かつて蓬を信仰していた人間・セイとの間にあった優しい思い出と大切な借り物、そして蓬が犯した取り返しのつかない罪が深く関わっていたのだった。 「これも俺の運命だ。アイツが現れるまで、ここでアイツから借りたものを守り続けること。それが俺に出来る、唯一の贖罪だ」 蓬を助けるには、豊穣の神としての蓬の名前とセイとの思い出の味という塩おにぎりが必要だという。 莉亜は蓬とセイのために、蓬の名前とセイとの思い出の味を見つけると決意するがーー。 蓬がセイに犯した罪とは、そして蓬は名前と思い出の味を思い出せるのかーー。 ❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。. ※ノベマに掲載していた短編作品を加筆、修正した長編作品になります。 ※ほっこり・じんわり大賞の応募について、運営様より許可をいただいております。

裏吉原あやかし語り

石田空
キャラ文芸
「堀の向こうには裏吉原があり、そこでは苦界の苦しみはないよ」 吉原に売られ、顔の火傷が原因で年季が明けるまで下働きとしてこき使われている音羽は、火事の日、遊女たちの噂になっている裏吉原に行けると信じて、堀に飛び込んだ。 そこで待っていたのは、人間のいない裏吉原。ここを出るためにはどのみち徳を積まないと出られないというあやかしだけの街だった。 「極楽浄土にそんな簡単に行けたら苦労はしないさね。あたしたちができるのは、ひとの苦しみを分かつことだけさ」 自称魔女の柊野に拾われた音羽は、裏吉原のひとびとの悩みを分かつ手伝いをはじめることになる。 *カクヨム、エブリスタ、pixivにも掲載しております。

アデンの黒狼 初霜艦隊航海録1

七日町 糸
キャラ文芸
あの忌まわしい大戦争から遥かな時が過ぎ去ったころ・・・・・・・・・ 世界中では、かつての大戦に加わった軍艦たちを「歴史遺産」として動態復元、復元建造することが盛んになりつつあった。 そして、その艦を用いた海賊の活動も活発になっていくのである。 そんな中、「世界最強」との呼び声も高い提督がいた。 「アドミラル・トーゴーの生まれ変わり」とも言われたその女性提督の名は初霜実。 彼女はいつしか大きな敵に立ち向かうことになるのだった。 アルファポリスには初めて投降する作品です。 更新頻度は遅いですが、宜しくお願い致します。 Twitter等でつぶやく際の推奨ハッシュタグは「#初霜艦隊航海録」です。

羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜

長月京子
キャラ文芸
自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。 幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。 時は明治。 異形が跋扈する帝都。 洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。 侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。 「私の花嫁は彼女だ」と。 幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。 その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。 文明開化により、華やかに変化した帝都。 頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には? 人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。 (※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております) 第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞をいただきました。 ありがとうございました!

椿の国の後宮のはなし

犬噛 クロ
キャラ文芸
※4話は2/25~投稿予定です。間が空いてしまってすみません…! 架空の国の後宮物語。 若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。 有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。 しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。 幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……? あまり暗くなり過ぎない後宮物語。 雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。 ※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。

口づけからはじまるかりそめ夫婦、道中お気をつけて~契約婚のはずが、なぜか夫から本気の求婚をされながら勾玉集めの旅をしています〜

星名 泉花
キャラ文芸
穂乃花は巫女姉妹の七女。八ツ俣(やつまた)を封じるために姉妹全員で人柱となった。 だが穂乃花が暴走したことで封印は失敗した。 時は流れ、穂乃花は八ツ俣封じのために再び目を覚ます……がまさかの口づけをきっかけに起きてしまった! なんだかんだと一悶着があったものの、乙女の唇を奪った深琴と「かりそめ夫婦」となり旅をすることとなる。 姉妹たちに会いに行き、罪滅ぼしのために勾玉を集めていくが、道中「かりそめ夫婦」として深琴に振り回されて……。 やがて八ツ俣退治で起きた裏側を知ることとなり、穂乃花の運命が翻弄されていく。 「狭間の巫女」 それが八人姉妹の七女・穂乃花の宿命でーー。 可憐な乙女が「かりそめ夫婦」として八ツ俣退治に向かって奮闘する和風恋愛ファンタジー🌸 「さぁ、この旅の道中お気をつけてお進み下さい」

処理中です...