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二人の弟子
49 送り犬2
しおりを挟む「あ、あの師匠。もしかして、私、とっても神聖なモノの前でトンデモナイことしてしまったんですかね。
そんでもって、その神様が怒られて、その神様のお使いが今ここに居らっしゃるということですか?」
レイラには、私たちの会話の私の発言しか聞こえていない。
でも、まあ、察し付きますよね。どういうことか。
霊感あるから、何か感じてるでしょうし。
出来れば、その霊感で、ウンチする前に思いとどまって欲しかったけどね。
まあ、差し迫っていたんだろうからね。仕方ないよね。
「ご、ごめんなさい神様!
私、知らなかったんです。そんな大切な場所だったなんて!
本当にゴメンナサイ」
正座状態から、レイラは深々と頭を下げて土下座です。
だけど、その頭を下げてる方は、微妙に見当違いの方向。
見えてないから仕方ないよね。
微かに感じることが出来るだけなんだから。
「えっと、本人も、こう申しております。許してやってください」
「分かりました。言われてみれば、確かにその通り。
既に神もいなくなった只の石でしかありませぬ。
我らの勝手な感傷でありますれば…」
「我ら、大人しく消えると致しましょう」
「いや待て! お前ら、送り犬だろ」
ビンちゃん、消えるというワンちゃんズを目の前に持って来て話しかけます。
今まだ、ぶら提げてる状態ですからね。
しかし、「送り犬」?
「送り狼」ってのは聞いたことあるけど、その犬バージョンってこと?
ていうか、この二匹、ちょっと狼っぽいかも。
送り狼だと、女の子を家まで送って、お家でゆっくり食べちゃうぞ~ってやつよね。
この場合、食べるってのはエッチな事しちゃうぞ~ってことだけど。
でも本来のは、こんな比喩じゃなくってホントにバリバリッと食べるってことよね…。
超怖い存在じゃん!
「人を呪い殺すほどの力を持つ存在。
消してしまうには勿体無い。私に仕えよ」
「既に主無しの身。
首根っこを掴まれたこのような状態で命じられれば、否やは申せませぬ。
ですが、我らにはもう、殆ど力が残っておりません」
「さようです。もう消えゆくのみです」
「では、その力を回復させてやる事が出来れば、私に仕えるか?」
「もし、そのようなことが可能であるのならば」
「その恩義に報いるためにも、お仕え致しましょうぞ」
「よし、ハルカ、レイラに握り飯を用意させよ」
え?オニギリ?
…あ、なるほどね。了解であります。
土下座し、許してもらえるのかどうかと不安そうにしているレイラを立たせ、急ぎお詫びの印のオニギリを二個作って持ってくるように指示。
レイラは大慌てで部屋を飛び出してゆきました。
「レイラ、大丈夫?! 治ったの?」
「それどころじゃないの。急ぐから!」
部屋の外から祐奈とレイラの慌ただしい声が聞こえてきます。
締め出されて外で待っていた祐奈との鉢合わせですね…。
オニギリが届くまでの間にビンちゃんから聞いた話。
送り犬も送り狼も仲間ですが、二種類あって、送って最後に食べてしまうというのと、送ってくれるだけの良いヤツがいるそうです。
この二匹は、神に仕えていた送り犬です。
間違いなく良い方だとのこと。
で、大慌てでレイラが作ってきた、ちょっと不格好なオニギリ二つ。
レイラも部屋の外に出し、私の手は齧らないでよと注意しながら二匹の送り犬のお口に…。
「霊体になったこの身で、まさか物を食べることが出来ようとは…」
「正に!そ、それに美味い。力も湧いて来る!」
感激至極の二匹。
見た目でも、元気になったのが分かります。
「よし、それでは、以後、私に仕えよ」
「畏まりました」
「お仕え致します」
と、目出度くビンちゃんの眷属と相成りましたとさ。
まあ、ペットみたいなもんですかね~。
あいや~。だけど…。
こうなると、これからこの二匹にも、毎日食事用意して食べさせないといけないな。
こりゃまた、ちょっと大変だぞ。
普通のペットじゃないからね。
私が手ずから食べさせないといけないからね……。
外に締め出されている間に、祐奈はレイラから事情を聞いたのでしょう。
部屋に入れても、特に私に何か訊いてくることはしませんでした。
二人とも、私が神様に話を付けたと思っているようです。
揃って「有難うございました」と深々頭を下げ、キラキラした尊敬のまなざしを向けてきます。
えっと、あのですね。私、殆ど何にもしてませんからね。
全部、ビンちゃんのお力ですから……。
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