究極ラッキーガール、最強貧乏神に取り憑かれました…。 ~神と人を繋ぐ“白結の巫女”ハルカの、ナイショ話~

しんいち

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二人の弟子

46 レイラの災難

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 ところで、ところで。
世の中は、いわゆるゴールデンウイーク。
大型連休へと突入しております。
 職に就いていない私には、特段関係ないことではございやんすが……。

 そういえば、私ってば就職活動、一切・全く・全然・これっぽっちも、してないね。
ま、その内考えますから、取り敢えずお許しを…。
 その内ってイツだって?
 だから、その内は、その内ですってば!

 あ、そうそう、お休みの話ですよ。
弟子二人は長野へ探検に行くということでした。
 一緒にどうかと誘われましたけどね。なんか、疲れそう…。
ということで、今回は見送りました。
 まあ、そういうのも、その内です。…なんてね。

 でもですね。この時、私も一緒に行っていれば、あんな目に二人は遭わなかったかも…。
師匠と呼ばれる身として、ちょっと反省です。
 これは、後から思えばの話でありまして、後悔先に立たずってヤツですけど。



 で、その、二人が遭遇したという災難です。
あ、正確に言うと、災難に遭ったのはレイラなんですね。
これは、我が家に駆け込んできた祐奈が、オロオロしながら語った話なのです。

 二人は長野県飯田市の山の中、大平宿おおだいらじゅくというところに行きました。
 ここは、山奥の廃村になった村。
ですが、古民家が何軒も残っていて、それを維持するために、格安で宿泊用貸出してくれているのです。
 本当に山の中で、何もないところですよ。
携帯も通じませんし、店もありません。
電気と水道はありますが、ガスは無い。
ですので、食材は自分で持ち込み、薪で調理するしか他に方法は無いのです。

 何を好き好んでこんなところに行ったのかと思いましたら、この前の薪で炊いたご飯が忘れられなくてなんて…。
 そんなの、ウチで出来るのに…。
どうせ毎週来るんでしょうが。
 え、囲炉裏は無いじゃないですかって?
 まあ、そうなんですけどね。
そういうのに憧れちゃったのね。

 電車もバスも通っていない廃村ですので、自家用車でしか行けません。
祐奈が車を出して二人同乗で行ったそうです。
麓にある飯田市の観光公社で鍵を借りて、そこから細い山道一時間弱なんですって。
 で、憧れの古民家体験生活はどうだったのかというと、当然ながら、大変だったとのこと。
囲炉裏って、かなり煙いのですよね。
そして、虫ですよ、虫!
網戸も無くて、夜には灯りに攣られた虫が入り放題!二人して、キャーキャー言っていたみたい。
 甘いんですよね。そんなのは、当り前。
 私は山奥の祖母の家に一年間住んでいましたからね。よ~く知っています。
田舎の生活なんて、良さそうに見えても、そんなもんなんですよ。
金持ちのお嬢様は、豪邸の綺麗な御庭で優雅にバーベキューでもしていなさい!

 でも、まあ、虫は怖くて仕方なかったようですが、ご飯は最高だったとか。
囲炉裏で作った鍋料理と、串に刺して焼いた魚。
金網まで持ち込んで、肉も焼いて食べてたみたいですね。
それから竃のご飯。
 お風呂も薪で沸かして二人で入り、布団が無いので寝袋で寝たんですって。
布団くらいは欲しいですよね。
まあ、キャンプなんだと思えば良いんですかね。

 で、翌日です。
レイラはちょっと、お腹の調子が悪くなったようです。
もしかすると、夕べ生焼けの肉を食べてしまったからかもしれないだって…。
 ちゃんと、良く焼いて食べなさいよ!
 え?薄暗くてよく分からなかったですって?
あら、蛍光灯も無くて白熱球だけだったのね…。
それは、ウチのお婆ちゃん処よりすごいわ。
 でもまあ、調子が悪いと言っても、ちょっと気分が悪い程度で、大したことは無かったみたいです。
 そんなで、その日の予定は、そのまま続行。
山道に入り、朽ちかけた家や神社址なんかを見て回っていたようです。

 そうしたところ、レイラの様子が…。
「ちょっと、お花を摘みに……」
と脇に逸れました。

 意味分かりますよね。
綺麗な花が目に入って摘みに行ったってことじゃないですよ。
乙女の話ですからね。察してあげてくださいね。
 結構豪快な音がしたって、コラコラ祐奈、そういうことをバラシなさんな。
お嬢様だろうとアイドルだろうと、出る物は出るんです。
お腹の調子が悪かったんだから、仕様がないでしょうに。

 で、スッキリ出て来るかと思ったら、戻ってきたレイラの顔が青い…。
「寒気がする。気持ち悪い」
と言い出し、慌てて民家の方まで連れ戻り、荷物をまとめて車で麓の町まで。
救急で病院に駆け込むも、原因不明。
どうも、食中毒では無いらしい。

 今は、桑名の家まで連れ帰ってきて、自宅で寝込んでいるとのことなのでした。
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