究極ラッキーガール、最強貧乏神に取り憑かれました…。 ~神と人を繋ぐ“白結の巫女”ハルカの、ナイショ話~

しんいち

文字の大きさ
上 下
43 / 78
二人の弟子

43 温泉の神様2

しおりを挟む

「いや~、強烈な一発を喰らってしまったな。
参った、参った。
老い先短い年寄じゃ、もう少し優しく扱ってもらえんもんかのう」

「うるさいぞ、エロジジイ。
何が老い先短いだ。短くなんかあるものか。
大体、『ただで済むと思うておるのか』と忠告しただろうが。
あの場で、即、引っ込んで居れば、こんな事になっておらん。
自業自得だ」

「あ、あの、スミマセンでした!」

 兎に角、謝るしかありません。
床に額を擦りつけ、土下座平伏します。

「いやいや、嬢ちゃん、エース殿の言う通りじゃ。
儂が悪かった。スマン、スマン」

 許してもらえた。良かった……。
 で、でも…。

「あ、あの~。取り敢えずですね。
出来ましたら服を着て頂きたいんですが……」

 そうなんです。起き上がってタオルから出た小人のお爺ちゃん、まだ素っ裸…。
目のやり場に困ります。

「お~、こりゃまた、スマン」

 やっぱり神様。ポンと着物を着た状態になりました。

「で、この変態露出狂ジジイは、社を抜け出して、あんなところで何をして居った」

「変態露出狂とは、こりゃまた、酷い言われようじゃのう。
儂には見せびらかす趣味など無いぞ。見る方専門じゃ。
綺麗なお姉ちゃんの裸を間近でジックリ鑑賞して、目の保養をしようかな、とな……」

「おい、本気で叩き潰されたいか!」

「ひ、ひや~、ご勘弁。
湯の状態を見に来ておったのじゃよ」

 え? どういうこと?

 その後に聞いた話によれば、この神様は少彦名すくなひこな神といって、琵琶湖畔近江八幡市の沙沙貴ささき神社の神様。
 温泉の神様でもあって、少し前にあった地震の影響が無いか、周辺の温泉を回っていらっしゃった途中だとか。
 温泉に入った気分に浸るため、裸になっていたということの様です。

 私の大好きな温泉を守る神様。
それに、さっき酷いことをしてしまいました。(胸シッカリ見られたけどね…)
 ここはお詫びに、温泉に入らせてあげましょうと提案。

「いや~、それは有難いな。
こんな美女が裸の奉仕で、一緒に入浴!
そりゃ、もう堪らんわ!」

 いや待て。裸の奉仕ってね…。
私は「裸になって一緒に入浴する」とは、一言も言っていない。
 ホントに潰しちゃうぞ、このエロジジイ!

 かすかな殺気を覚えつつ、浴衣のまま、浴場へ。
 ポンと裸になった少彦名様を掌に載せて、お湯へ入れてアゲマス。

「なぜ一緒に入らん。一緒に入ろう。そんな着物、早く脱いで!」

とウルサイですが、そこは無視。
 あまりにシツコイのに怒ったビンちゃんが、指でビシッと弾いて黙らせました。

 「ギャフン」って言って、ビヨーンってなってましたね…。
 ハハハ……。


 さてさて、お食事タイム。少彦名様も御一緒してます。
 宿泊の予約は二人分でしてあります。私とビンちゃんの分ですね。
勿論、宿の人にはビンちゃんが見えませんので、怪訝な顔。

 あ、いや、大丈夫なんですよ。普通に二人分で用意してください。
 いやいや、一人分キャンセルなんてしませんよ、二人分でいいんですってば…。

 で、少彦名様は小さいですからね。
私の分をお分けして…と思っていたら、食事は要らないとのこと。
酒だけで良いそうです。
 実は、この神様、お酒の作り方を伝えた神様。
お酒の神様でもあったんですね。
 だからといって、酒だけってのもどうなのかなって思いますが、ご本人がそうおっしゃるんですから、まあ良いのでしょう。

 だけど、こんな小っちゃい神様に、どうやって飲ませればよいんだろう…と思いつつ、まずは私が失敬して一杯…。
 で、お酒を注いで差し出すと、その盃に御顔を突っ込んで、ズズズ~とすごい勢いで飲みだします。

 おおおおおお~!!
あれよ、あれよ、という間に、盃は空っぽ。
 いやはや、こんな小っちゃい神様の、どこへ入って行った?!
まさに、神様マジック!!

 一気に赤い顔に変わった少彦名様、ニッコリ笑います。

「いや~、馳走になった。
あまり女子会の邪魔してもイカン。儂はこの辺でお暇するわい。
ああ、そうそう、エース殿は、今は『ビンちゃん』と呼ばれているようだの~。
なら以降は、儂は『スクさん』とでも呼んでくれ~。
では、またな~」

 スクさんこと少彦名様、ポンと消えてしまいました。

「え?! 消滅したんじゃないよね!」

「違う。あの消え方は、別の場所に移動しただけだ。
私も見せたことあるだろうが」

 いや、そうですけど、私にはその違いは分かりませんよ……。

 そうそう、夕食ですよ。
ここは食事も、一級を通り越した超特級ですよ。

 待ってました、特上近江牛の陶板焼き!
軟らかくて、とろけちゃいそうで、濃厚な肉の味。
 ビンちゃん、お肉も大丈夫って言ってましたもんね。どうですか?
 そうよね。すっごく美味しいよね!

 自家製の燻製盛り合わせも最高。豊かなスモークの香り。

 出て来たお寿司も、魚じゃない。
近江牛をレアに炙ったのを握った寿司よ!

 琵琶湖特産ビワマスの刺身もイイね~。

 全体的に肉系が多いので、お年を召した方には重いかもしれません。
でも、若い私には最高! お肉だ~い好きなの~ん!
 ビンちゃんも、見た目は若いもんね。大丈夫よね~。

 あ、ついでにですね。お料理運んできてくれる若女将も飛び切りの美人さん。
アイドル活動もしている人なんですよ。男性客には堪んないでしょうね。

 夕食後、21時以降は内風呂も宿泊者貸し切り湯になります。
勿論、露天風呂の方も。
 というか、今日の宿泊客は私たちだけなのです。
完全貸し切りの入り放題!
 十分に温泉を堪能し(出歯亀スクさんが潜んで居ないか警戒しながら…)、朝も豪華でボリューム満点な朝食を頂きました。

 宿を出た後は、有名な洋菓子屋さん「クラブハリエ」のバームクーヘンと、滋賀県特産の鮒鮨ふなずしをゲットしたりして、帰宅したのでありました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貧乏神の嫁入り

石田空
キャラ文芸
先祖が貧乏神のせいで、どれだけ事業を起こしても失敗ばかりしている中村家。 この年もめでたく御店を売りに出すことになり、長屋生活が終わらないと嘆いているいろりの元に、一発逆転の縁談の話が舞い込んだ。 風水師として名を馳せる鎮目家に、ぜひともと呼ばれたのだ。 貧乏神の末裔だけど受け入れてもらえるかしらと思いながらウキウキで嫁入りしたら……鎮目家の虚弱体質な跡取りのもとに嫁入りしろという。 貧乏神なのに、虚弱体質な旦那様の元に嫁いで大丈夫? いろりと桃矢のおかしなおかしな夫婦愛。 *カクヨム、エブリスタにも掲載中。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】召しませ神様おむすび処〜メニューは一択。思い出の味のみ〜

四片霞彩
キャラ文芸
【第6回ほっこり・じんわり大賞にて奨励賞を受賞いたしました🌸】 応援いただいた皆様、お読みいただいた皆様、本当にありがとうございました! ❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。. 疲れた時は神様のおにぎり処に足を運んで。店主の豊穣の神が握るおにぎりが貴方を癒してくれる。 ここは人もあやかしも神も訪れるおむすび処。メニューは一択。店主にとっての思い出の味のみ――。 大学進学を機に田舎から都会に上京した伊勢山莉亜は、都会に馴染めず、居場所のなさを感じていた。 とある夕方、花見で立ち寄った公園で人のいない場所を探していると、キジ白の猫である神使のハルに導かれて、名前を忘れた豊穣の神・蓬が営むおむすび処に辿り着く。 自分が使役する神使のハルが迷惑を掛けたお詫びとして、おむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりをご馳走してくれる蓬。おにぎりを食べた莉亜は心を解きほぐされ、今まで溜めこんでいた感情を吐露して泣き出してしまうのだった。 店に通うようになった莉亜は、蓬が料理人として致命的なある物を失っていることを知ってしまう。そして、それを失っている蓬は近い内に消滅してしまうとも。 それでも蓬は自身が消える時までおにぎりを握り続け、店を開けるという。 そこにはおむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりと、かつて蓬を信仰していた人間・セイとの間にあった優しい思い出と大切な借り物、そして蓬が犯した取り返しのつかない罪が深く関わっていたのだった。 「これも俺の運命だ。アイツが現れるまで、ここでアイツから借りたものを守り続けること。それが俺に出来る、唯一の贖罪だ」 蓬を助けるには、豊穣の神としての蓬の名前とセイとの思い出の味という塩おにぎりが必要だという。 莉亜は蓬とセイのために、蓬の名前とセイとの思い出の味を見つけると決意するがーー。 蓬がセイに犯した罪とは、そして蓬は名前と思い出の味を思い出せるのかーー。 ❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。. ※ノベマに掲載していた短編作品を加筆、修正した長編作品になります。 ※ほっこり・じんわり大賞の応募について、運営様より許可をいただいております。

金沢ひがし茶屋街 雨天様のお茶屋敷

河野美姫
キャラ文芸
古都・金沢、加賀百万石の城下町のお茶屋街で巡り会う、不思議なご縁。 雨の神様がもてなす甘味処。 祖母を亡くしたばかりの大学生のひかりは、ひとりで金沢にある祖母の家を訪れ、祖母と何度も足を運んだひがし茶屋街で銀髪の青年と出会う。 彼は、このひがし茶屋街に棲む神様で、自身が守る屋敷にやって来た者たちの傷ついた心を癒やしているのだと言う。 心の拠り所を失くしたばかりのひかりは、意図せずにその屋敷で過ごすことになってしまいーー? 神様と双子の狐の神使、そしてひとりの女子大生が紡ぐ、ひと夏の優しい物語。 アルファポリス 2021/12/22~2022/1/21 ※こちらの作品はノベマ!様・エブリスタ様でも公開中(完結済)です。 (2019年に書いた作品をブラッシュアップしています)

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

裏吉原あやかし語り

石田空
キャラ文芸
「堀の向こうには裏吉原があり、そこでは苦界の苦しみはないよ」 吉原に売られ、顔の火傷が原因で年季が明けるまで下働きとしてこき使われている音羽は、火事の日、遊女たちの噂になっている裏吉原に行けると信じて、堀に飛び込んだ。 そこで待っていたのは、人間のいない裏吉原。ここを出るためにはどのみち徳を積まないと出られないというあやかしだけの街だった。 「極楽浄土にそんな簡単に行けたら苦労はしないさね。あたしたちができるのは、ひとの苦しみを分かつことだけさ」 自称魔女の柊野に拾われた音羽は、裏吉原のひとびとの悩みを分かつ手伝いをはじめることになる。 *カクヨム、エブリスタ、pixivにも掲載しております。

処理中です...