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二人の弟子
41 神様との食事会 お風呂2
しおりを挟む「それにしても、ハルカ。あなたそんなに美人なんだから、もう、男もいるんでしょ?」
い、いきなりですね。
お湯に浸かったマッタリ顔で、急に何を言い出すのか、この酔いどれ女神は。
究極美人に美人って言われても……ってな話じゃなくってですね。
私は、男性とお付き合いなんぞ、産まれてこの方、一切したことございません!
ってことを言おうとしたのですが、ナギさん、サラッと続けます。
「何人と、した?」
へ? へええええっ!!
……し、し、したって、何をスルんですか?!
この酔っ払い女、何とかして!って、ビンちゃん見ると…。
そのビンちゃんも、ニヤニヤ怪しい視線を送ってくる……。
お、おっとっと!
こ、これは助けてくれる気、皆無ってか!
こ、これが、もしかして…。
おひとり様専門の私は未経験の、げに恐ろしき女子の恋バナってやつ?
い、いや、いや、いや、違うよ!
「した」ですよ「した」!
ぜ~んぶ通り越して、最終地点に行っちゃってるじゃあないですか!
あ、いや、もしかして、私の勘違い?
え、え~と、キ、キスの事とか……。
「し、し、し、したって……、そ、そ、それ……何のことですか……」
きっと、キスの事よね。
まあ、それも経験したこと無いけどね。
お願い。キスの事だと言ってちょうだい……。
「ハルカ、ナニ言ってるのよ。
男と女がすることって、決まってるでしょうに。
マグワイよ。マグワイ。ミトのマグワイ!
分かんない?
今風に言うと『セックス』ってやつ?」
あああああ~。
捻りも何にもない~!!
神様には恥じらいというものが無いのですか!
なんという言葉を口にする!
項垂れる私に、ナギさんは続けます。
「あなた、もう二十二歳なのよ。早く子供作んなきゃ。
まぐわって出来ないのなら仕方ないけど、まぐわっても居ないなんてダメよ。
早く良い男捕まえて、しっかりたっぷりマグワイなさい」
ひえ~!いや、もう勘弁して~。
そんな、「ピー」な単語、連発しないで~!!
そ、それに……。
それに!!
「こ、子供なんて……、私には……、無理ですよ!」
だって、私はアルビノ。
金髪白肌の赤眼。普通でない身体……。
「無理だなんて、なんでよ?
まず、することしなきゃ、子が出来るかどうか、分からないわよ」
いやいや、そういう問題じゃないんです。
子供が産める身体かどうかでは、ないんです!
「もし、私みたいな子が産まれてきたら、その子が可哀想じゃないですか!」
ナギさん、怪訝な顔をします。
「何言ってるのよ……。あなた、可哀想な子なの?
ラッキーガールじゃないの?」
あ・・・。
そ、そうか…。
可哀想な子って……。
本当は、私自身も自分の事、そう思っていたんだ……。
口ではラッキーガールなんて言うくせに…。ダメね。
でも……。
私と同じ身体に産まれてしまったら、絶対苦労するに決まってる!
ナギさん、真っ直ぐ私の方を向いて、真剣な顔で口を開きます。
「私は、凄く勿体無いなって思うわよ。
でも、まあ、慎吾の子だからね。
親子よね。同じような考え方するのね」
「え? ナギさん、それ、どういうこと?」
「うん? あ、い、イヤ……。
まあ、ここで暮らしていれば、その内に分かるかもね」
それだけいうと、ナギさんは口を閉ざしました。
父さんと同じ考え方?
それは一体、どういうことなの?
再度訊いても、ナギさんは「その内に分かる」としか言いません。
ビンちゃんはナギさんと私を見比べるようにしていましたが、特に口を挿みませんでした。
ナギさんとビンちゃんは仲良くお湯を堪能して出て行き、私も温まってから上がりました。
私がお風呂から上がるのを待っていたナギさん(勿論、既に着物は着ていますよ)、
「ハルカ、今日はありがとうね。
次も楽しみにしているからね。じゃあ、お休み。
ビンちゃんも、有難うございました。おやすみなさいませ」
そういって、スーッと消えました。
もうすっかり「ビンちゃん」という呼び方にも慣れたみたい。
一緒に酒飲んで、裸の付き合いもしましたからね~。
あれ?
そういえば、ナギさん、来るときは門から入って来たのにな。
あ、もしかして、早く着き過ぎて門の前で中を窺っていたのかも……。
はは、ナギさんって、そういうヒト(いや、神)よね……。
賑やかで楽しい神様との宴会でした。
ただ…。
最後に一つ、心につっかえが残ったのではありますが……。
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