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二人の弟子
38 神様との食事会 準備
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翌日。
祐奈の事は、非情に、非常に、非常に、気がかりではありますが、今日は大切な行事があります。
ナギさんを招いてのお食事会です。
これから毎週月曜日の夜に行うのです。
野菜の方は、道の駅に早めに行き、確保してきました。
だけど、後の食材は……。
お肉ってどうなのかな?
確か、神社では四つ足物はお供えしないな。
…あ、四つ足物ってのは、牛とか豚とかの脚四本の動物ね…
ビンちゃんに訊いてみますと、確かにその通りだけれど、それは仏教の影響とのこと。
だから、ビンちゃん自身はお肉でも全然気にしないんだって。
だけど、ナギさんはどうなんだか分からないから、訊いてからにした方が良いって…。
取り敢えずは、今日のところは避けときましょうか。
普通の神社では鶏肉はOKだそうですが、これもビンちゃん情報によりますと、アマテラス様のお使いの動物が鶏だから、そちらも「訊いてからにした方がよいぞ」とのこと。
となると、使えるのは魚しかありませんね。
魚なら、あそこへ行くしかない! スーパー「タカイ」!
早速ビンちゃんと一緒に向かいました。
毎度の周囲の奇異と冷淡の視線を、完全スルー致しまして……。
魚コーナー。
いろんな魚が並んでいるね。
私、魚のことは良く知らない。どうしようか…。
「あれ、多喜さんとこのハルカちゃんじゃないかい。
この間も来てくれていたみたいだね。毎度どうも」
声を掛けてきてくれたお爺ちゃん。タカイの創業者である、前店主さんです。
生前の父とも親しかった人で、父は「御隠居さん」と呼んでいました。
つまり、その頃には既に一線を退き、お店は息子さんに譲っていたということですね。
今日はお店を手伝っているみたいです。
父と親しかった人ですから、私にも偏見がありません。
もちろん、今の御主人も同じで、私と顔を合わせればニッコリ笑って頭を下げてくれます。
まあ、そうでなければ、私、この店に来られませんもんね。
あ、そうだ、魚の事は、プロに訊いた方が良いや。
「小父さん。魚を神様にお供えするとしたら、どんなのが良いですか?」
「お供えかい? そうさね、この辺では昔だと、お供えの魚は生きた鯉と相場が決まっていたけれどね」
「鯉ですか?」
なるほど、ここ岐阜県は海がありませんから、魚と言えば、川の魚。
中でも鯉は「登竜門」って言葉がありますもんね。
竜門を上り切った鯉は龍になるなんて…。
だから「鯉幟」なんてのがあるんだし、縁起良いよね。
「それ、今日、ありますか?」
「いや~、鯉はね…。ゴメンね。
事前に分かっていれば仕入れることは出来るけどね。
ウチでは普段は置いてないね…。
そんなに売れる魚じゃないからね」
「そ、そうですか……」
「他だと、『めでたい』の鯛なんかも良くお供えに使うね。
それなら、今日は良いのが入っているよ。
今の時期は桜鯛といって、美味しい時期なんだよ」
「あ~、なるほど! じゃあ、鯛もらえますか?
で、鯛って、どう食べるのが一番いいですかね」
「鯛は尾頭付きで塩焼きかな~。
刺身にするなら、皮を付けたままで湯引きすると良いよ。
鯛は皮が美味しいからね」
なるほど、なるほど。でも、私、魚捌けないな…。
塩焼きにしたって、鱗取らないといけないよね……。
「あ、あの~。すぐ調理できるように捌いてもらうことって出来ます?」
「え? それは勿論できるけど、お供えにするんじゃないの?
お供えなら、丸儘でしょ?」
「あ、いえ、お供えではないんです。
大事なお客様があって、神社でお供えにするような魚をお出ししたいなって…」
「あ~、そういうことかい。
オーケー、じゃあ、捌いてあげるから待っててね」
塩焼き用小さ目三匹と、刺身用大きいの一匹購入。
小父さんの息子さん、つまり、現店主さんに、捌いてもらいます。
塩焼き用は鱗と内臓を取ってもらい、刺身用は三枚におろしてもらいました。
アラからは良い出汁が取れるということなので、それももらってゆきます。
それから、奮発して鰻の蒲焼も購入。
今日は特売品ということで、1匹1800円になっているのです。
二柱と一人とで分けるとちょっとずつしか食べられませんが、一匹だけね…。
帰宅して、さあ、仕込みにかかろうかとしたら、スマホに着信音。
祐奈からです。
『師匠! 凄いですよ!
上がっていたのが、また急に下がってしまいまして、かなり安く買えましたよ!
なんか、会社でボヤ騒ぎがあったみたいですね』
いきなりですね。昨日の株の話ですよね。
かなり興奮している様子…。
でも、安く買えたのなら、取り敢えずは一安心ってことよね。
後はそれを、買った値段よりも高く売れば儲かるからね。
ビンちゃんからの、大きな動きが有ったらすぐ知らせる様にとの言葉を伝えて切りました。
気になっていた祐奈の方は、ひとまず大丈夫。
少し、ホッとしましたよ。
これで落ち着いて、ナギさんをお迎えする準備に入れま~す。
祐奈の事は、非情に、非常に、非常に、気がかりではありますが、今日は大切な行事があります。
ナギさんを招いてのお食事会です。
これから毎週月曜日の夜に行うのです。
野菜の方は、道の駅に早めに行き、確保してきました。
だけど、後の食材は……。
お肉ってどうなのかな?
確か、神社では四つ足物はお供えしないな。
…あ、四つ足物ってのは、牛とか豚とかの脚四本の動物ね…
ビンちゃんに訊いてみますと、確かにその通りだけれど、それは仏教の影響とのこと。
だから、ビンちゃん自身はお肉でも全然気にしないんだって。
だけど、ナギさんはどうなんだか分からないから、訊いてからにした方が良いって…。
取り敢えずは、今日のところは避けときましょうか。
普通の神社では鶏肉はOKだそうですが、これもビンちゃん情報によりますと、アマテラス様のお使いの動物が鶏だから、そちらも「訊いてからにした方がよいぞ」とのこと。
となると、使えるのは魚しかありませんね。
魚なら、あそこへ行くしかない! スーパー「タカイ」!
早速ビンちゃんと一緒に向かいました。
毎度の周囲の奇異と冷淡の視線を、完全スルー致しまして……。
魚コーナー。
いろんな魚が並んでいるね。
私、魚のことは良く知らない。どうしようか…。
「あれ、多喜さんとこのハルカちゃんじゃないかい。
この間も来てくれていたみたいだね。毎度どうも」
声を掛けてきてくれたお爺ちゃん。タカイの創業者である、前店主さんです。
生前の父とも親しかった人で、父は「御隠居さん」と呼んでいました。
つまり、その頃には既に一線を退き、お店は息子さんに譲っていたということですね。
今日はお店を手伝っているみたいです。
父と親しかった人ですから、私にも偏見がありません。
もちろん、今の御主人も同じで、私と顔を合わせればニッコリ笑って頭を下げてくれます。
まあ、そうでなければ、私、この店に来られませんもんね。
あ、そうだ、魚の事は、プロに訊いた方が良いや。
「小父さん。魚を神様にお供えするとしたら、どんなのが良いですか?」
「お供えかい? そうさね、この辺では昔だと、お供えの魚は生きた鯉と相場が決まっていたけれどね」
「鯉ですか?」
なるほど、ここ岐阜県は海がありませんから、魚と言えば、川の魚。
中でも鯉は「登竜門」って言葉がありますもんね。
竜門を上り切った鯉は龍になるなんて…。
だから「鯉幟」なんてのがあるんだし、縁起良いよね。
「それ、今日、ありますか?」
「いや~、鯉はね…。ゴメンね。
事前に分かっていれば仕入れることは出来るけどね。
ウチでは普段は置いてないね…。
そんなに売れる魚じゃないからね」
「そ、そうですか……」
「他だと、『めでたい』の鯛なんかも良くお供えに使うね。
それなら、今日は良いのが入っているよ。
今の時期は桜鯛といって、美味しい時期なんだよ」
「あ~、なるほど! じゃあ、鯛もらえますか?
で、鯛って、どう食べるのが一番いいですかね」
「鯛は尾頭付きで塩焼きかな~。
刺身にするなら、皮を付けたままで湯引きすると良いよ。
鯛は皮が美味しいからね」
なるほど、なるほど。でも、私、魚捌けないな…。
塩焼きにしたって、鱗取らないといけないよね……。
「あ、あの~。すぐ調理できるように捌いてもらうことって出来ます?」
「え? それは勿論できるけど、お供えにするんじゃないの?
お供えなら、丸儘でしょ?」
「あ、いえ、お供えではないんです。
大事なお客様があって、神社でお供えにするような魚をお出ししたいなって…」
「あ~、そういうことかい。
オーケー、じゃあ、捌いてあげるから待っててね」
塩焼き用小さ目三匹と、刺身用大きいの一匹購入。
小父さんの息子さん、つまり、現店主さんに、捌いてもらいます。
塩焼き用は鱗と内臓を取ってもらい、刺身用は三枚におろしてもらいました。
アラからは良い出汁が取れるということなので、それももらってゆきます。
それから、奮発して鰻の蒲焼も購入。
今日は特売品ということで、1匹1800円になっているのです。
二柱と一人とで分けるとちょっとずつしか食べられませんが、一匹だけね…。
帰宅して、さあ、仕込みにかかろうかとしたら、スマホに着信音。
祐奈からです。
『師匠! 凄いですよ!
上がっていたのが、また急に下がってしまいまして、かなり安く買えましたよ!
なんか、会社でボヤ騒ぎがあったみたいですね』
いきなりですね。昨日の株の話ですよね。
かなり興奮している様子…。
でも、安く買えたのなら、取り敢えずは一安心ってことよね。
後はそれを、買った値段よりも高く売れば儲かるからね。
ビンちゃんからの、大きな動きが有ったらすぐ知らせる様にとの言葉を伝えて切りました。
気になっていた祐奈の方は、ひとまず大丈夫。
少し、ホッとしましたよ。
これで落ち着いて、ナギさんをお迎えする準備に入れま~す。
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