究極ラッキーガール、最強貧乏神に取り憑かれました…。 ~神と人を繋ぐ“白結の巫女”ハルカの、ナイショ話~

しんいち

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二人の弟子

33 大掃除二日目2

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 準備は完了。では、夕食です!
 会場は、炊事場やお風呂がある母屋の、炊事場から上がった場所、居間です。

 あ……。
ただ、一つ、大きな問題が…。

 ビンちゃんなんですよ。
ビンちゃんのお食事を二人に見せるわけにはゆかない。
 どうしよう……。

 う~ん。コソコソすると不審がられるよね。
ならば、堂々と隠すかな。

 母屋の土間の棚から古いお膳を一式出します。
昔の法事に使っていた物で、たくさんある内の一つです。
 黒漆塗りで、飯椀・汁椀・お平・お壺でワンセット。
この呼び名は父に教えてもらっていました。
 並べ方も覚えています。飯椀は手前左。汁椀がその隣。お平は飯椀の向こう。お壺がその隣!
 ご飯を飯椀によそい、汁椀に鍋の野菜部分と汁を。
お平に鍋の魚を。お壺に芹の煮物を。
あとは、お銚子(あ、正確には徳利なんですけどね。細かいことは気にしない!)にお酒を入れて、お猪口を一つ。
箸も一膳。

「師匠。それ、どうするんですか?」

 怪訝な顔の二人……。

「これは、神様の分ですよ」

「「神様?」」

「そうよ。私はこれから、神様にお食事を差し上げてきますので、二人は先に食べていて良いわよ」

「し、師匠! もしかして、それが、ヒスイを見つけられた秘密ですか?
ぜひ、ご一緒させてもらえませんか?」

 う~ん、思った通りの展開。
祐奈は絶対見たがると思っていた。
 だけれども、そうは参りません。

「えーい、控えよ、無礼者!
未熟物の分際で、おこがましい!
もっと精進して、私が認めるまでにならないと、この極秘の儀式は見せられません」

「は、はい! 申し訳ありません!」

 慌てて土下座する祐奈に、目を白黒させて追随するレイラ…。

 ごめんね、二人とも。
見せれば、二人は目を回してしまうでしょう…。
だって、ここにあるものはみ~んな、空中に消えて行ってしまうことになりますからね。
 まあ、その内、そういう時がもし来れば…、話してあげます。

 ん? はて、そういう時って、どういう時かな…?
 ……。
 まあ、いいや。

 再度一睨みしつつ「覗いちゃダメよ」と念押しして、隣の座敷で、ビンちゃんのお食事です。
 「今日も有難うございました」とお礼を述べ、失礼ながら、まず私が先に一口。
その後はア~ンしているビンちゃんのお口へ。
 先に食べてよいと言っておきましたが、隣室にいる二人は待っているつもりのようですね。
だからといって、ビンちゃんを急かせる訳にはゆきません。
 何だかビンちゃんの方が気を使って、いつもよりハイペース。
ビンちゃん、だんだん人間っぽくなってきてませんか? 慌てなくて良いんですよ。
はい、お酒もありますからね。まず私が一口失礼してと…。


 ビンちゃんの食事を終え、隣へ戻ります。
ビンちゃんも一緒に付いて来ますが、もちろん二人にはビンちゃんは見えません。
 そして、私の手には、空になったお膳。

「え、え~と、師匠……。そういえば、昨日の昼も、昼食の時に何処か行かれていましたよね。もしかして、あの時も?」

 恐る恐る訊ねて来る祐奈…。
これに関しては隠す必要もないことですから、教えて進ぜましょう。
というか、言っておいた方が、後々都合良い。

「そうよ。一日三回ね。
あ、おやつなんか頂くことがあれば、そういった時もかな」

「は、はあ……」

 レイラが私の持っている膳を覗き込んでいます。
空になっているのを確認し、首を傾げています。
 私がすることを覗いちゃあダメと言っておきましたが、聞いちゃあダメとは言っていません。
襖を隔てた隣の部屋のこと、きっと、耳を澄ませて私とビンちゃんの会話を聞いていたでしょう。
 但し、二人にはビンちゃんの声は聞こえない…。
つまり、私の独り言の様なモノ。
 ・・・。

 非常に微妙な空気になってしまいましたが、これは仕方ないのです。
私に弟子入りするということは、これは受け入れてもらわなければならないのですよ。

 その後は、特段のことはありません。
お酒も入って、美味しいお鍋。無事、和やかな雰囲気に戻りました。
 そして、お待ちかねのお風呂さんで~す。
 湯加減を確認すると、ちょうど良い感じ。
五右衛門風呂って直火ですから加減が難しいのですよね。
祐奈、上手く焚いたな…。

 まず師匠からと言われ、お先に失礼。
狭いので、一緒に入るなんてことは二人も言いません。
 これはチャンスでありますよ。
ビンちゃんも一緒できます。

 狭い脱衣所で服を脱ぎ、裸に。
ビンちゃんはと言うと、毎度です。一瞬でポンとスッポンポン。
 で、これまた広くない浴室へ移動。
体を洗い、風呂桶のお湯に浮いている木の板へ乗ります。
この板を踏んで、沈めながら入るのです。
 底の鉄板(あ、いや、銅製かな?)を直接踏めば火傷してしまいます。
それを知らずに浮いている木の板を取って入り、大騒動なんて話が有ったような…。
何の話でしたっけ? 『東海道中膝栗毛』でしたっけ?

「師匠! 湯加減どうですか~」

 外の焚口の方から、祐奈の声。

「丁度良いわよ~。ありがとう」

 私の膝に坐っているビンちゃんも、蕩けそうな表情。
 いや~、自宅でこんな良いお湯に浸かることが出来るなんて、思ってもみなかったな…。
これから、時々使うことにしましょう。

 私とビンちゃんの後には、弟子二人が入りました。
 狭いのに、二人一緒にお湯に浸かったみたい。
大人二人だと、かなり窮屈だと思うけどなあ。
おまけにこの二人、前にそれぞれ二つずつ大きなモノくっ付けてるから……。
 でも、まあ、楽しそうに、騒いでいましたよ。
 満足してもらえたなら、幸いです。
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