究極ラッキーガール、最強貧乏神に取り憑かれました…。 ~神と人を繋ぐ“白結の巫女”ハルカの、ナイショ話~

しんいち

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富山での御縁

27 自宅での食事

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 帰宅して、早速夕食にします。
袋から出して机に置いた、タカイで買った品々。
パックのままじゃ味気ないので、お皿に移してと…。

「いっただきま~す」

 お刺身のハタとコチ。
聞いたことない魚ですが、どうなんでしょう?
あら、どっちも身がシッカリしていて良い食感。美味しいよ。
 ビンちゃんにもア~ンしてあげると、ニッコリ顔。
お気に召したようです。

 ズイキの煮物と切り干し大根の煮物は、茶色い色と細長い形状で、見た目はどっちも似た感じ。
でも、ズイキの方がシャキシャキした歯ごたえがある。
双方、素朴で癒される味。
 こっちも、ビンちゃんニッコリ顔。

 お寿司は、と。
ほんの少しお酢が強めかな? でも悪くない。
 ビンちゃんも、とろけそうな笑顔。

 う~ん、満腹。

「ごちそうさまでした」

 懐具合は非常に不安でありますが、ビンちゃんのこの満足そうな笑顔をみていると、なんだか、もうどうでもよく思えてきてしまうのよね……。

 いや、待て!
もしかして、これも貧乏神様の手口なの?!

「うん? ハルカ、どうした~?」

 私の視線に気付いたビンちゃん。
笑顔のまま私の手を、その小さい手で握ってきます。

 う、う~ん。やっぱり、たまんなく可愛い……。

「なんでもありませんよ。ただ、ビンちゃんは、可愛いなって」

「へんなヤツだな。そういうお前も、かなりの美人さんだぞ」

 へ? 美人? 私が?
そんなこと、誰からも言われたことありませんから、照れる~!

 思わずビンちゃんをギュッと抱き締めてしまいました。
 神様に対して、なんて失礼な事…。
でもビンちゃんもキュッとしがみ付いてきてくれます。
 だからOKですよね。

 その日も、手を繋いで一緒の布団に入り、眠りました。




 朝。起きれば朝食…。
なんていうと、私、喰っちゃ寝しかしていないようですが。
 そんなことは、横の方へチョンと置いときまして、と。

 ビンちゃんはインスタント物を受け付けない。
一日三回、きちんとしたお食事…。
これは結構きついかも。
 毎回、豪華なモノとはゆきません。
お味噌汁と梅干で勘弁してもらえないかな…。

 あ、そうだ!

 玄関を出て門をくぐり、外へ出ます。
何も言わなくてもビンちゃんついてきてくれる。頼もしい守り神様です。

 石段を下りると駐車場。その奥にある草叢は、実は我が家の畑なのです。
八年ホッタラカシですので、とてもそうは見えませんが…。
 そもそも、この駐車場も、おそらくは畑だったのを一部転用したモノでしょうね。

 その、元畑の隅。石垣との境辺り…。
 あった!
 せりです。
父と一緒に、ここで採ったことがあるのを思い出したのです。

 他の草に負けないように競り合って生えていますので、細く長~く伸びています。
 うわ~、凄い!たくさんある! 軟らかくて美味しそう!
 群生しているので、採るのは簡単。
ワサワサッと芹を採取して、調理場へ。

 化学調味料は、多分ビンちゃん、キライだろうな。
出汁パックくらいは勘弁してね。
 お湯を沸かして出汁を取って、小松菜と葱に加え、取り分けた少しの芹。これで味噌汁を。
 うわ~。芹の良い香り。
 味噌は、この地方の定番、豆だけで作った赤味噌ですよ。
 あと、残った芹は、サッと茹でてお浸しに。茹で過ぎには注意!
 ご飯は炊けてますね。
 よし、OK。

「ビンちゃん、朝御飯ですよ~」

 まずは私が先に失礼しまして、お味噌汁。
う~ん、癒される味…。味噌汁作るのは得意なんですよね。
 はい、ビンちゃんもどうぞ。熱いから、気を付けてね。
 お椀をビンちゃんの口に持って行きます。
 ビンちゃん、コクッと一口。

「う、美味い!! なんだこれは! 凄く美味いぞ!」

 お気に召したようで、ホッとします。

「はい、じゃあ、芹のお浸しですよ」

 まずは私が食べて、次はビンちゃん。

「お~!! こ、これも美味い。良い香りだ。
さっき採った野草なのか?
ハルカ、お前、料理上手だな」

 いや~、単に茹でて醤油掛けただけです。
採りたて新鮮。素材が良いのですよ。
こういうモノは、変に手を加えるよりシンプルな調理の方が美味しいのですよね。
 あ、ご飯もどうぞ。
 うわ~すごい、ビンちゃんモリモリ食べてくれる。
そんなに美味しい?

 そっか、別に高いお金を出さなくても良いんだ。
旬で新鮮な物を用意すれば!
 暫くは、芹かな。たくさん生えているから。
でも芹だけじゃ、飽きちゃうな。
野菜を自分で育てられれば一番かもしれないけど、あの草だらけの土地を畑に戻すの大変そうだな…。
おまけに私、体質的に紫外線に弱いしな…。

 そうだ、直売所だ。
道の駅の直売所で、新鮮な野菜が安く買えるはず!
 当面は、これで行こう!

 朝食が終わり、満足気なビンちゃん。
この笑顔、堪んなく好き。
 頑張って毎日、一日三回、満足頂ける物を御用意させて頂きます!
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