究極ラッキーガール、最強貧乏神に取り憑かれました…。 ~神と人を繋ぐ“白結の巫女”ハルカの、ナイショ話~

しんいち

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貧乏神に取り憑かれました

8 戸隠の旅館

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 泊めてもらうのは、神主さんが経営している元宿坊の旅館でした。
 代々戸隠神社の神主(明治の神仏分離以前はお坊さん)をしながら宿坊をしていたんだとか…。
 温泉では無いのですが、ここも手打ち蕎麦の有名宿みたいです。

 おっと、宮様御一家の写真が飾ってある…。
そんなヤンゴトナイ人まで泊まるところなんだ。
 なんだか、恐れ多くなってきましたよ。

 案内されたお部屋も、綺麗で豪華…。
もしかして、一番良い部屋を用意してもらったのかも…。
 やっぱり私は、ラッキーガール!
 


 食事は広間で、他のお客さんも一緒。
 元宿坊というだけあって神棚というか、神社のような大きな祭壇もあります。

 私は、その祭壇近くの席。
ここって、一番の上座じゃない?
なんだか、ホントに申し訳ないな…。
 他のお客さんも、こっちをチラチラ見てる…。
私、完全に場違いよね……。

 し、しっかし、ここの料理、凄い!
蕎麦会席料理っていうらしく、どれにもこれにも蕎麦が使われている。
とっても凝った料理で、洗練されていて、優しく上品で、深い味…。

 そして、締めの、打ちたて手打ち蕎麦が最高!!
極細だけどコシがあり、蕎麦の香りが鼻に抜ける。ツユも甘すぎずに私好み。
 これ、つずら屋さんに負けてないぞ!

 食事終わりに、御主人が私のところへ挨拶に来てくれました。
白い調理着姿。よく見ると、さっきの紫袴の神主さんです。
 違う格好してると分かんないな…。
この料理、神主さんが作ったものだったんだ……。

 蕎麦会席、最高だったと話すと、ちょっと照れたように、そして申し訳なさそうに、御主人は言いました。

「手打ち蕎麦を出す関係で、広間で用意させてもらったけれど、配慮が足りませんでした」と…。

 どうも、あの看護師さんから、私がアルビノだと聞いたようです。
配慮というのは、周りの目のこと。
 全く気にならない訳ではありませんが、そんなのはいつものこと。
外人さんだと思っているだけですから大丈夫ですよ。

 それよりも……。

 私は、いつの間にかポケットに入っていた、あのお御籤を見せました。
 御主人=神主さんは、大いに驚いていました。

 …ありえないと。

 外見は神社のお御籤と同じ。
なのに、中が全く違う。
 大凶なんて無いはずだし、大当たりなんて、論外だと……。

 まあ、普通そうでしょうとも!
でも、じゃあ、私が持っているこの二枚は何??

 それに……。

 食事中、ずっと私は気になっていました。
 ある視線に…。

 御主人が気にしていた、他のお客さんのじゃありません。
上座の隅。つまり、私のすぐ近く…。
 和服姿で白髪白髭のお爺さんがずっと、私の方を見てニコニコしていました。
でも、話しかけてはこない…。
 そのお爺さんに寄り添うように、やはり赤い和服姿の小さな女の子。
着物の丈がちょっと足りなくて、脚が出ていたね。
その女の子は、そっぽを向いていた…。

 明らかに違和感のある二人。
客のようには見えないから、宿の関係者?
 でも、誰もその二人の方を見ないし、気にもしていないようでした。

 まるで、そこには、誰もいないように……。

 いつの間にか居なくなってしまったその二人について、私はご主人に聞いてみました。

「え? うちには、そんな老人も小さい子供もいませんが……」

「は? い、いや、そこにずっといましたけど…」

「いやいや、そんなはずは。そんな人が居れば、私も従業員も直ぐに気付きますし…」

「えっ……」

「あ、あの……、大丈夫ですか?」

 大丈夫って、何が? あ、頭か…。
 私は自分の頭へ手をやります。

 い、痛い…。
コブが出来てる…。

 もしかして、打ちどころ悪かったかなあ……。
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