究極ラッキーガール、最強貧乏神に取り憑かれました…。 ~神と人を繋ぐ“白結の巫女”ハルカの、ナイショ話~

しんいち

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貧乏神に取り憑かれました

3 解雇

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 ということで、私は新しく借りて引っ越してきたばかりのアパートの部屋にトボトボ帰ってきました。
 部屋の中央にチョコンと正座し、暫し、呆然……。

 林さんの不幸は、私の所為せいではない。
だって、先月のお給料も出てなかったって言うんだから……。
 どんなふうに説明されていたのか知りませんが、お給料が遅れるってそれ、大問題でしょうに。その時点でダメだと気付けよなって話です。
 そう、たまたま、私の初出社日と倒産が重なっただけだ!

 ……もしかして、私、潰れ掛けているのを隠す役割を演じさせられたの?
 否、そんなはずない…。
そんなことの為に社員募集して、面接して、研修してなんて、余計な費用と手間を掛けたりしない。
 そんな金と暇が有ったら、別の方に使うよね!

 じゃあ、私が入社することになったから、急速に業績悪化してしまってなんて…。
いや、いくらなんでも、そんなこと、あるはず無い。
 偶然!
 断じて、私の所為じゃない!

 それよりも、自分の心配をしなくちゃ……。
 勤めるはずだった会社が名古屋だったので、便利な市内のこの部屋を借りたんだけど、どうしよう…。
 こんな時期に、新たな就職先を探さなければならなくなってしまった…。
みつかるかな…。
 正社員は、難しいだろう…。
当分、アルバイト生活かな…。
 だとすると、ここの家賃、勿体無い。
自家用車があるから、駐車場付きで結構お高いところを選んじゃった…。

 実は、私には持ち家が二つあります。
父が残してくれた家と、母方祖母の家です。
 どちらも、場所は隣の岐阜県。
そしてどっちも、超豪邸な~のです!

 凄いぞ、驚くな!
 祖母の家なんか、築250年の文化財モノ。
茅葺のでっかい母屋には囲炉裏も有り、離れも二つ付属。蔵まである。
馬いないけど馬小屋も有って、更にオマケに、裏と左右の三つの山まるごと付き!
 どうだ、ビックリしたか!

 ・・・但し、超々山奥で、超々不便で、住む気サラッサラないですがね。


 住むのなら、やっぱり父の家の方かなあ。

 こちらも郡部の田舎ではありますが、羽島市と大垣市の中間という、平地で便利な場所。
 でも、八年近くホッタラカシで、多分、かなり手入れしないといけない…。
それに、この家も純日本建築で、古い…。築100年は経っていないそうですが、それ近いとのこと。
 更に多喜家は庄屋の家柄で、敷地もだだっ広い…。

 この地は周りを川で囲まれた輪中の町。
昔の地主の家は、高屋敷たかやしきといって敷地全体を土盛りして高くしてあります。
これは、洪水対策の為です。

 元庄屋の家ということは当然高屋敷で、その規模は最大級。
石垣があり、立派な門があり、デカイ母屋の他にも三棟の建物。
その内の一つは水屋みずやという緊急避難施設であって、石垣を更に積んだ場所にそびえて天守閣のよう。
 もう、小さな城みたいな感じなのです。

 私は、どちらかというと、こういった古民家的邸宅、嫌いではありません。
いや、逆に好きな方。
 でも実際に住むとなると…。一人にはバカデカ過ぎる!
 掃除が大変。手入れも大変。
 アパートなら気にしなくて良い厄介な近所付き合いも出てくる…。

 あと……。
 ここに住むと、亡くなった父のことを思い出してしまうから…、ちょっと敬遠。

 中学生まで、男手一つで私を育ててくれた父。
 大好きだった、優しく頼もしい父。
 その笑顔が浮かんできてしまいます……。

 いや、やっぱり、ダメですよね。ホッタラカシなんてのは!

 父の、いや、先祖の残してくれたもの!
 私しかいないんだから、私が守らなくちゃ!
 これはきっと、戻ってこいという御先祖様のお呼びなんだ!

 私は、父との思い出の家に帰る決心をしました。

 幸い、まだ引っ越し荷物のほとんどが梱包状態のまま。
だから、このまま引っ越しできる。
 これもラッキー!
 やっぱり、私はラッキーガール……。
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