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鬼の仲間として

46 新年

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 お正月です!
 あちらの世界と同じように、新年の挨拶を交わします。

「スマイザゴウトデメオテシマケア」

 これが、その挨拶。
 そして、この日ばかりは、住み込みの鬼さん勢ぞろいでリューサさん中心に同じ食卓を囲みます。

 お雑煮は…。ありません。お米が無いですからね。餅も無いのです。
 但し、サトイモのお汁が出ましたね。これがお雑煮替わりみたいな感じです。
御椀じゃなく、洋風の食器にでして、やっぱり、何だか奇妙ですが。

 他の御馳走は…。基本肉ですね。
 メインはニンゲン。ですが、イノシシとか鳥、それからウサギとかいった、他の肉も結構出てきました。これは助かります。
 ウサギって初めて食べましたよ。感想?う~ん、そんな特徴はないですかね。でも、ニンゲンでないなら何でもいいです~。

 あ、リューサさんは、カナリノお金持ちですが、ニンゲンの丸焼きはしません。
そんな野蛮な食べ方は好まないってことみたいです。部位ごとにキチンと調理した方が絶対美味しいからって、食材のことを尊重した意見。ニンゲンとしては感謝です。

 お酒も有り、皆注ぎ合ってなごやかにお食事です。
あ、私は、お酒は飲みません。まだ未成年ですから。
 もっとも、この世界では年齢によるお酒の制限なんてものは存在しません。
ですから飲んでも問題ないのですが、もうちょっと大人になってからにしておきます。

 あら、イマさん、席の端っこの方に居るキズミさんのところへ行っていますね。お酒を酌み交わして、楽しそうに笑って話してる。
 へえ~、キズミさんってあんな笑いかたするんだ。可愛らしい…。

 そのキズミさん、私の視線に気付き、「フン」て感じで目を逸らしました。
 なんですか、新年早々そんな邪険にしなくても…。ちょっと凹みます。


 午後からは、リューサさんは留守。年始の挨拶に行くんだそうです。イマさんカリさんもお供です。こういったところは、「秘書」なんですね。
 もう一人のナンバー2であるナユさんは「姫初め♡」なんていって、オシゴト(?)にいそしんでいます。
 イヤ~ン……。


 翌日は、リューサさんが新年のあいさつを受ける日になっています。
 次から次へと御客様。他の鬼さん、特に男の鬼さんに会うのは怖いですので、私は部屋に閉じこもります。が、リューサさんから呼び出しを受けました。
 呼びに来てくれたイマさんと一緒に応接室に行きますと…。

 お客様。お、男鬼……。

 「狩猟本能が呼び覚まされる」なんて言って、ニンゲンを苦しめて喜ぶ凶悪で最悪の存在…。
と思っていましたが、イメージと、ちょっと、いや、全く違います。
 ヒョロッとしていて、ナヨナヨッとしていて、頼りない感じ……。

「イシライワカトンナ。ンゲンニノイレガタナア、オオ」

「スマシウモト『ミク』。スマイザゴウトガリア」

 あ、わけ分かりませんよね。通訳します。「あなたが例のニンゲン。なんと可愛らしい」と言われましたので、「ありがとうございます。美玖と申します」と返しました。

「ハトルセナハガゴウヨ。イシラバス」

「素晴らしい、妖語が話せるとは」と、おっしゃって頂きました。ややこしいので、以降は、要約します。


 この鬼さんは、リューサ牧場がニンゲンを卸している食肉卸売会社の社長さん。ニンゲン肉を販売するに当たって動画を付けるというのを発案し、渋るリューサさんを上手いこと言って説き伏せ、動画撮影させてきた諸悪の根源!
 この動画を付けて肉を販売するというの、なんと、始まりはリューサ牧場だったのですよ。

 今ではそうするのが鬼社会の当たり前となり、どこの牧場でもやっていること。ですので、止めるにやめられないばかりか、更に凶悪な内容を要求される始末……。
 やっぱり、男鬼はたちが悪い…。

 想像していた凶暴で、暴力的で、ニンゲンを見つけたら即座に喰らいついて来るってような感じとは全く違いましたが、別の意味で怖い。
 どう言ったら良いのでしょう。陰湿で小ズルイって感じ?いや、ちょっと違うかな。あ、オタクっぽい。そうそれ!
 オタクっぽくてネッチリした感じで、ストーキングでもしてきそう。とにかく、キモイんです!

 で、そのキモイ鬼さん曰く、この前出荷した男の子の屠殺動画が素晴らしかったとのこと。
ニンゲンがニンゲンを殺す、そのシュチュエーションが最高に良いんですって。

 ニンゲンがニンゲンを殺す……。これって、私のことですよね…。
何でも人間側から肉を捧げられるように感じて、それがソソルですってよ…。

 ううううう~っ!止めてください。内容もだけど、話し方や表情までも、ホントキモイ!

 前回卸した肉は注文品であったために値が上がることは無かったみたいですけど、以降は間違いなく今より高く売れるとのこと。この調子で、今度は更に痛めつけ、残虐にお願いしたいだなんて……、冗談じゃありません!!

 年末限定で、それも安楽死させられる男の子だからと引き受けた仕事だったのです。
まあ、こうなったら以後も屠殺のお手伝いさせてもらうのは構いませんけどね。残虐にって、それは嫌!
 まったく、この変態、何考えているんだか!
 あんた、やられるニンゲンの身になってみなさいよ!


 お客様が帰られてから、リューサさんに正直に言いました。

「なんですか、あのキッモイの!
男鬼って、もっとゴツくて凶暴で乱暴ってイメージだったんですけど、全然違いますよね」

「なあに、それ。どこ情報からのイメージよ」

「いや、イマさんカリさんです」

「あ、ああ~。男嫌いの、あの二人か。ナルホド……。
まあ、今の男鬼なんてあんなモノよ。狩猟本能がどうとかこうとかいうけどね。出来もしないコトの無い物ねだりなのよね。そんなことが出来たらなんて、憧れなのかもね。
どっちかっていうとね、女の方が豪快なのが多いよ。こんなふうにね」

 リューサさん、自分を指差します。う~ん、豪快って言うか、姉御肌? あとは、結構イジワルだったりもします…。
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