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鬼の仲間として

42 屠殺します

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 さて、今は人間界では、クリスマスが近くなってきてるような頃です。
町は賑やかに浮かれていることでしょう。
 こちらの世界ではクリスマスなんて風習はありません。ですが、お正月は盛大に祝うそうです。その為の食材の出荷が多く、農場も大忙し。そして、牧場の方も…という状況になっていたのですね。

 あ、人間界であってもお正月はお祝い行事ですし、年末年始は正月用品大売り出しで忙しいなんてのは当たり前ですね。
 じゃあ、なぜ私がクリスマスなんてのを持ち出したかと言いますとですね。
クリスマスと言えば、七面鳥の丸焼きってありますよね。普段食べない特別な料理ですね。
 この世界のお正月も同じです。普段とは違う御馳走でお祝い……。

 え? クリスマスを持ち出すまでもなく、正月には御節料理とか、特別な御馳走があるだろうですって?
 そうなんですよ。そうなんですけどね……。

 あのですね、この世界ではニンゲンは高級食材でして、ですね。
 で、食べるんですよ。クリスマスの時のような、丸焼き!

 七面鳥ならぬ、ニンゲンの!!

 う~ん、ニンゲンの丸焼き。ゾゾゾーッ……。

 いや七面鳥は、私も食べたことありますよ。…同じですよね。
 イベントで子牛の丸焼きとか、子豚の丸焼きなんてのもありましたね。そうですよ。同じなんですよ。
 だ、だけど…、やっぱりなんだかな~って感じです。同類としては、非常に複雑です。

 但し、ですね。ニンゲンってカナリノ高級食材なんです。
特上のブランド牛みたいなものだと思って下さい。
 ですので、七面鳥の様に各家庭に一羽っていう風には参りません。
一部の超お金持ちとか、大規模な新年パーティーとか新年奉祝イベントとかの目玉料理として供されるのだそうです。


 この丸焼き用ニンゲン、牧場からは受注分だけの出荷となります。
通常期は女の子の出荷が多いのですが、この時期の丸焼き用は男の子が殆どだとか。今年の注文も、全員男の子です。
 何故かというとですね。女の子は高価なのですよ。丸焼きにしてしまうには勿体無いんです。
 何てったって豪快に焼くだけの料理ですからね。部位ごとの繊細な味を楽しむなんてことにはなりません。そこで、丸焼きには少し値が下がる男の子を使うというのが鬼の常識です。
 稀にイベントなんかで女の子をってことも有るみたいですが、その場合は生きたままの出荷になりますので、屠殺出荷するのは男の子ばかりなんですね。

 今年の生きたまま出荷の子は、3人でした。
 既に出荷済み。そちらの方はそのままですから、何もする必要ありません。ニンゲンたちには別の農場に送られるのだと告げ、ハイ出荷で、終わりです。一番助かります。

 ただですね、売られた本人は堪ったものじゃありませんね……。
 イベント当日までは見せ物。
 そして、公衆の前で裸にされ、凌辱され、泣き叫ばされながら串刺しにされ、そのまま火で炙られて丸焼き……。
 とても恐ろしい光景。信じられない残虐行為です!!

 何故、こんな酷いことをするのかといいますと、前に狩猟本能がどうとかって話、ありましたよね。アレですよ。アレ!
 大勢の鬼が集まる場であるからこそ、余計に…なんですよお。

 こ、怖いよ……。



 さて、肝心の屠殺する方の子の待遇なんですけど……。
 え、え~っと、ちょっと話が違ってきたんではないですか? 私、男の子は安楽死だとばかり思っていましたけど…。
 ど、どうして、違うのよ~?!

 なんと、この時期に関しては安楽死させてあげられないって言うんですよ。
 これ、どういうことですか~!!

 いや、これもやっぱり、先程の、「狩猟本能が…」ってやつなんです。
 生きたままの子は公衆の前で串刺しにされますよね。その苦しむ様子を楽しむためです。
 但し、それですと調理に時間が掛かります。ニンゲン丸ごと、中まで火が通るように弱火でジックリ焼くのですからね。
 ですので、パーティーなんかでは、すぐに食べられるように調理済みのモノを供します。
 その代わり、そこへ串刺し工程の動画を流すのだそうです。そこで、「例の動画撮影」が、重要になってくるのです。

 うううううう~っ! か、勘弁して欲しいです~!
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