1 / 8
1 生贄に立候補
しおりを挟む
私の名前はハナ・ガンランド。ナース王国中央神殿の巫女をしています。
一応、男爵家の娘で貴族の身分なんですが、魔法も使えなく、6人兄弟の末っ子。何の取柄も無い16歳の小娘です。
それに、我がガンランド家は男爵家と言ってもお爺様の代からで、それまでは一般平民でした。お爺様が魔法力を持っていた為に男爵の地位を与えられた、成り上がりの末端貴族なのです。
なのに。後を継いだ父は弱い加熱魔法程度しか使えませんでした。そして、その子ら、つまり私の兄弟も、魔法が使えるのは長兄と次兄の二人だけで、使える魔法は父と同じ…。
このままでは男爵の地位も危なくなってきます。どうすれば爵位を守れるかと深刻に相談している父や兄を見ると、悲しくなりますよ…。
そんなナサケナイ家の事情を、私はふと、同僚巫女のラーラ・アールンさんに話してしまいました。すると、「爵位を保つ良い方法があるよ」とラーラさんが教えてくれたのです。
それが、異世界人召喚儀式の際の、『生贄』の立候補なのでした。
召喚儀式は、中央神殿でのみ行われる、王国の秘儀……。
その儀式に命を捧げる生贄は、中央神殿の巫女にのみ許される栄誉とされます。
・・・とはいえ、実際のところは巫女から選ばれるのでは無くて、選ばれた者が中央神殿巫女の身分を与えられて生贄になるということみたいですけどね。そうじゃないと、怖がって巫女を希望する者なんていなくなっちゃいますから。
で、その生贄にですね、中央神殿現役の巫女として、自ら進んで立候補するということなのです。
私は元々、西方神殿の巫女でしたので、この儀式に関しては、よく知りませんでした。
前回は、実際に巫女の中から立候補者があって生贄になったとか。一人が生贄になって中央神殿巫女に欠員が出たので、私が補充されてきたということみたいです。
ラーラさんは私より前から中央神殿で巫女をしていますので、実際に前回の召喚儀式に関わっていました。
彼女曰く、その際に立候補した巫女は、私と同じ男爵家の娘さんだったそうです。
生贄を出した功績によって、その家は子爵に格上げになったとか。そこまでにならなくとも、取り敢えず男爵から落とされなくなるはずですって…。
そして、ナント、その召喚儀式が、近い内に再度あるんですって!
これは、私に与えられたチャンスなのかもしれません。何の取柄も価値も無い『役立たず』の私の命で、私の家が助かるのです。
他から生贄が選ばれてからでは遅いし、立候補は、早い者勝ちとのこと。
「私も立候補したいけど、あなたには事情がありそうだから、あなたがするなら私は譲るわよ」
とラーラさん。
私は決心しました。即座に次席神官アルマ様へ、召喚儀式の生贄になりたいと伝えました。
その場で私の希望は認められ、私は次の儀式において生贄となることに決まったのです。
一応、男爵家の娘で貴族の身分なんですが、魔法も使えなく、6人兄弟の末っ子。何の取柄も無い16歳の小娘です。
それに、我がガンランド家は男爵家と言ってもお爺様の代からで、それまでは一般平民でした。お爺様が魔法力を持っていた為に男爵の地位を与えられた、成り上がりの末端貴族なのです。
なのに。後を継いだ父は弱い加熱魔法程度しか使えませんでした。そして、その子ら、つまり私の兄弟も、魔法が使えるのは長兄と次兄の二人だけで、使える魔法は父と同じ…。
このままでは男爵の地位も危なくなってきます。どうすれば爵位を守れるかと深刻に相談している父や兄を見ると、悲しくなりますよ…。
そんなナサケナイ家の事情を、私はふと、同僚巫女のラーラ・アールンさんに話してしまいました。すると、「爵位を保つ良い方法があるよ」とラーラさんが教えてくれたのです。
それが、異世界人召喚儀式の際の、『生贄』の立候補なのでした。
召喚儀式は、中央神殿でのみ行われる、王国の秘儀……。
その儀式に命を捧げる生贄は、中央神殿の巫女にのみ許される栄誉とされます。
・・・とはいえ、実際のところは巫女から選ばれるのでは無くて、選ばれた者が中央神殿巫女の身分を与えられて生贄になるということみたいですけどね。そうじゃないと、怖がって巫女を希望する者なんていなくなっちゃいますから。
で、その生贄にですね、中央神殿現役の巫女として、自ら進んで立候補するということなのです。
私は元々、西方神殿の巫女でしたので、この儀式に関しては、よく知りませんでした。
前回は、実際に巫女の中から立候補者があって生贄になったとか。一人が生贄になって中央神殿巫女に欠員が出たので、私が補充されてきたということみたいです。
ラーラさんは私より前から中央神殿で巫女をしていますので、実際に前回の召喚儀式に関わっていました。
彼女曰く、その際に立候補した巫女は、私と同じ男爵家の娘さんだったそうです。
生贄を出した功績によって、その家は子爵に格上げになったとか。そこまでにならなくとも、取り敢えず男爵から落とされなくなるはずですって…。
そして、ナント、その召喚儀式が、近い内に再度あるんですって!
これは、私に与えられたチャンスなのかもしれません。何の取柄も価値も無い『役立たず』の私の命で、私の家が助かるのです。
他から生贄が選ばれてからでは遅いし、立候補は、早い者勝ちとのこと。
「私も立候補したいけど、あなたには事情がありそうだから、あなたがするなら私は譲るわよ」
とラーラさん。
私は決心しました。即座に次席神官アルマ様へ、召喚儀式の生贄になりたいと伝えました。
その場で私の希望は認められ、私は次の儀式において生贄となることに決まったのです。
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う
月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる