月の影に隠れしモノは

しんいち

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新たな仲間と、…別れ

163 旅立ちの前に… 1

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 十月四日。いよいよ、明日は旅立ちの日。
 夕食後、恵美が、言い出しにくそうに、切り出した。

「あ、あの~。明日で、お別れなんですが…。その~」

「何? 恵美さん?」

 そう言う舞衣は、恵美が何を言いたいか分かっている。数日前から恵美は、言いたくて言い出せずにモジモジしていた。様子がおかしいのを不審に思った舞衣は、例の特殊能力で心を読んだ。恵美は、慎也と一度、誰にも邪魔されずに夜を共にしてみたかったのだ。
 舞衣の方から勧めてもよかったが、面白いのでそのまま放置して、モジモジ、イジイジする可愛かわいらしい姿を観察して楽しんでいたという次第である。

「い、いや~。その~」

「だから、何?」

 舞衣は、ニヤニヤ笑っている。他の皆は、そんな二人の顔を見比べ、首をかしげた。

「う~! 舞衣さんのイケズ! 分かってるくせに~!」

「自分の口から言わなきゃ、許可しません!」

 ということは、自分から言えば、許してもらえるということ…。恵美は決心した。

「私、一度で良いから、慎也さんと二人だけの夜を過ごしたい!」

 恵美は真っ赤になりながら、やっと言った。

「よく出来ました~! はい、皆さん、集合! どうしますか~?」

 舞衣の周りに、他の妻たちが集まった。

「私は、一度経験させて頂いていますので、異議はありません」
と、沙織。

「ワラワも、特段異論はないぞ」
と、祥子。

 が、杏奈と環奈は、二人顔を見合わせて微妙な表情だ。

「私たちも、してもらってないんですけど…」

 環奈のつぶやきに、一同沈黙。
 …確かに、杏奈と環奈も、単独での(一人ずつでも、双子セットとしても)慎也との夜は過ごしたことが無い。

「もう今晩しかありません。恵美姉様が慎也さんと過ごすのなら、私たちは、代わりに舞衣様と一晩過ごしたいです!」

「は?!」

 舞衣は、思わず大きな声を出し、衝撃発言をした杏奈を見て、固まった。
 …気を取り直し、自分を指差して問う。

「私と?」

「「はい!」」

 杏奈・環奈二人の声がぴったりそろい、舞衣を見つめる…。舞衣はあわてた。

「いや、いや、いや、何をバカなことを! ついこの前、私のことばかり見ていたわけでないって言ってたじゃない!」

「それは、それ。これは、これです!」
「舞衣様ばかり見ていたわけではありませんが、舞衣様を見ていたのも事実ですから!」

 真剣な眼差まなざし。これが認められなければ、恵美の願いも認めないつもりだ。

「舞衣さ~ん、私の為にも、お願い~」

 恵美も、舞衣に向かって懇願…。この二人が納得してくれないと、自分の願いもかなわない。

「杏奈ちゃん、環奈ちゃん。前にも一回、一緒に寝たじゃない…」

「あの時は、少し触らせてもらっただけです」
「もっと、濃厚なヤツが希望です!」

「の、濃厚って…。私、そんな趣味無い!」

「私たちには、あるんです!」

 今日が最後のチャンスだと思うと、二人も引き下がれない。慎也との…は、この後、帰ってくることが出来れば機会があること。だが、舞衣との…となると、恐らく、この先、絶対に無いだろうから…。

 舞衣は、いろいろ頑張ってくれた恵美の願いを叶えてやりたいと思っている。しかし、言い出せなくてモジモジしているのを面白がって放置していたことを、激しく後悔した。もっと早く叶えてやれば、杏奈と環奈の、この奇妙な要求は回避できたのだ。二人にも、慎也との一晩を認めれば良いのだから…。
 杏奈・環奈は、そろってウルウルした目で前に手を組み、舞衣を見つめる…。舞衣は、この眼差まなざしにも弱い…。致し方無し…。

「分かった! 分かりました! どっちも、許可!」

「やった~!」

 はしゃぐ杏奈・環奈と、密かにガッツポーズをする恵美。
 慎也、祥子、沙織は苦笑い。美雪と早紀のあきれ顔…。
 そして、舞衣の顔は、引きっていた…。
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