月の影に隠れしモノは

しんいち

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新たな仲間と、…別れ

155 敗北者アマ1

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 翌朝。やっと、アマが目を覚ました。昨晩失神したまま眠りについてしまったのだ。

「は! トヨ!タミ! 勝負は、どうなった!?」

 目覚めて最初に目に飛び込んだ相手に、目を開けるなり、この言葉…。この二人は、一睡もせずにアマを見守っていたのだった。

「姫様……。覚えていませんか? 姫様の完敗です」
「ただの負けではありませんよ。あり得ない醜態をさらしての、完全な負けです」

 タミが、一枚の写真を差し出した。アマは横になったまま受け取り、それを見た。

「恵美様からです。負けの証拠写真ということです」

 写っていたのは…。大股を広げて気を失っている、アマの失禁・脱糞写真だ。

「な、な、な、な、な! なんと、なんと~!!」

「姫様!落ち着いて!」

「あ、あの女は、どうなったのじゃ!」

 すがり付いてきたトヨとタエに、アマが問う。

「姫様が失神されたあと、立ち上がって勝利宣言をされました。その後、鼻血を垂らして立ったまま気絶されて……。そのままあちらに」

 アマが指差された方を見ると、少し離れた位置で、舞衣がアマの方に顔を向けてスヤスヤ眠っている。かたわらには杏奈と環奈が坐り、付き添っていた。
 舞衣の鼻にはティッシュが詰められていて、息が出来ないので口を開けている。涎が垂れて、お世辞にも上品とは言い難い。

「ははは……。私は負けたのか。あんな女に…」

「そうです!」
「姫様、もう、あきらめてください!」

「………。そうだな。半分こちらから挑んだようなもの。それで、負けたのだ。認めざるをえまい」

「あ、舞衣様!」
「気が付かれましたか?」

 杏奈と環奈の声で、アマは再度、舞衣の方を見た。

「おはよお。杏奈ちゃん、環奈ちゃん」

 鼻にティッシュを詰められているので、声がくぐもる。

「おはようじゃないですよう!大丈夫ですか?」

「いや~。ちょっと、これはヤバいわ…。動けない…」

「無茶し過ぎですよう。だって、普通の四倍くらいの時間、耐えてましたよ!」

「な、なに~!普通の四倍!」

 アマが思わず声を上げてしまった。

(通常ならあの四分の一でイッてしまうところを、精神力で持ちこたえて勝利をもぎ取っていったとは……。凄まじい…)

 アマは股間がジンジンするのを堪えながら起き上がり、正座して舞衣に深々と頭を下げた。

「私の完敗です。数々の失礼。誠に申し訳ありませんでした」

 床に頭をり付けたまま動かないアマに、トヨとタエもあわてて従って頭を下げた。アマは頭を上げずに続ける。

「あなたには、とてもかなわない…。納得しました。以後、私はあなた様の下僕として扱ってください」

「げ、下僕だなんて…」

 舞衣は起き上がらず、いや、起き上がれずに、顔だけアマに向けた。

「あなた方は、お客様よ。そこまで卑屈にならなくても…。勝手なことさえしなければ、それで良いのよ」

「いや、それはダメだ。負けた以上は当然のけじめだ。私はあなたに従う!」

 狼か山犬の集団のような発想だと、舞衣は思った。だが、そういうことだったのかもしれない。野生の本能というべきものか。自分より格下だと思うものには、従えないということだろう。逆に、自分より格上なら、絶対服従だ。

「分かったわよ。好きにして! そんなことよりも……。私はトイレ行きたいんだけど…」

 舞衣が、もぞもぞする。

「あ、あの…。ゴメン環奈ちゃん、杏奈ちゃん。起き上がれないし。歩けない…」

「え?」

「腰が抜けてるみたいで、力が入んない…」

「え~っ!」
「か、環奈、尿瓶しびん持ってきて!」

「違うの!大きい方なの!」

「きゃ~!どうしよう!」
「慎也さ~ん」

 朝から、また大騒ぎとなった…。
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