月の影に隠れしモノは

しんいち

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新たな仲間と、…別れ

153 慎也さんは、渡さない!1

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 神社から帰ると、やはり、アマが玄関で正座して待っていた。

「おかえりなさいませ。御主人様。お仕事お疲れさまでした」

 丁寧におじぎするが、舞衣が既に隣で慎也の手を握っている。
 アマは、悔しそうに舞衣をにらむ。が、舞衣は視線を合わせずに、慎也と手をつないだまま、居間へ向かった。
 アマも、後ろについてくる。きっと、マッサージを狙っている。舞衣は察知して、先に慎也の肩に手を掛け、みながら坐らせた。
 アマは、またも悔しそうにし、爪を噛む。
 あいさとも出てきて、アマをにらみつけ、慎也の腕を揉みだした。こうなってしまうと、アマは手が出せない。
 慎也が風呂に入ると、アマは、また背中を…と狙う。が、風呂前ではさとが坐り込んでいた。さとと睨み合い、やむなく引き返す。
 アマにフラストレーションが溜まる。


 交合時間…。この時ばかりは、アマも慎也の情けを受けることが出来る。
 今日は邪魔ばかりされて、慎也にあまり近づけなかった。ここぞとばかり、アマは慎也に貪りついた。
 激しく求め、交わる……。
 愛しい人の精液が、ドクドクと腹の中に流し込まれる…。
 …途轍もない快感!
 そして、また、抑えきれなくなってしまった。

「ご主人様!どうか、私の村に来てください! 一生が無理なら、五年、いや一年限定でも良い!」

「あんた、いい加減にしなさいよ!」

 舞衣もキレた。鬼に向かって、鬼の形相になる…。

「月影村との約束だから我慢しているのに、ふざけるのもいい加減にしなさい! フィンガーアタックで処刑してもらうことになりますよ!」

 アマの方も、これで引き下がったりはしない。

「何がフィンガーアタックで処刑だ! 自分では何もできない分際で、偉そうにするな!
 そもそも、己らはフィンガーアタックを怖がっておるが、愛しい人に愛撫してもらえるのを嫌がるなど、信じられぬ! 私なら、喜んで受け入れる!嫌だなどというのは、愛が足りない証拠だ!」

「言ったわね~!じゃあ、勝負よ! あなたと私、同時にフィンガーアタックを受けて、最後まで正気を保った方が勝ち。あなたが勝ったら、慎也さんを一年貸してあげます。でも、負けたら、以後、勝手なことは一切許しません!」

「ちょ、ちょっと、舞衣さん!何言いだすの!」

 慎也はあわてた。いや、慎也だけでない、祥子も杏奈も、環奈も。そして、恵美までも!

「ウルサイ! やるったらヤル! 慎也さんへの愛を証明して見せる!」

 なんで、それが愛を証明することになるのか…。全くもって荒唐無稽、支離滅裂。意味不明で無茶苦茶な論理だ。しかし、怒りで思考がおかしくなっている舞衣には、もはや、何を言っても無駄。顔も真っ赤に紅潮し、鼻息も荒い…。

「弱ったな~。まさか、こんなことになるなんて~。舞衣さんって、こんなに気性激しかったのね~」

 恵美にも、もはや打つ手がない。頑張って、舞衣に勝ってもらうしかない。もしも舞衣が負けたら、全面的に自分の責任だと頭を抱えた。

「父様!母様!開けて!」

 外で、さとの声がする。不審げに、沙織が戸を少し開けた。

「どうしたのさとちゃん! 夜にこっちへ来ちゃダメってことになってるの、忘れたの!」

 さとは、家の決まり事を破り、外でうかがっていたのだ。しかし、その叱責を物ともせず、少し開けられた戸を更に開けて、顔を突っ込んでくる。

「だって! 父様と舞衣母様が心配だったから! 本当に勝負するの? やめてよ、舞衣母様!」

「ダメ! やるったらヤル! それで、この阿婆擦あばずれ鬼を、ギャフンと言わせる!」

 それにしたって、負けた場合は慎也が一年貸し出されるというのは無茶苦茶だ。慎也の意向は全く無視。理不尽極まりない。

「頭冷やしてよ、舞衣さん。負けたら、何で俺が月影村に行かなければいけなんだよ…」

「私が勝つから問題ない! 止めても無駄! ぜ~ったい、ヤル!」

 もはや、完全に理性を失ってしまっている…。
 そして、舞衣はさらに爆弾発言をする。

さとちゃん! みんなを連れてきなさい! みんなにも見せてあげる!」

「は、はい!」

 さとは、今にも炎か何か噴き出しそうな舞衣の勢いに恐れを感じ、慌てて姉妹たちを呼びに走った。
 さとが走って行った後、やはり、その苛烈な勢いにフリーズしていた沙織が、舞衣の発言の余りの非常識さに気付いてあわてふためく。

「え…、えっ、えええ~!! ちょ、ちょっと! 舞衣さん! 子供たちにまで見せる物じゃないでしょ!」

「ウルサイ!! 私が良いと言えば、良いのです! 性教育の一環です!!」

 逆に大声で怒鳴り返されてしまい、沙織は再度フリーズ…。
 アマと舞衣は二人だけで熱くなっているが、周りは逆に、皆、顔面蒼白だ。慎也たちだけでなく、トヨとタミまでも…。
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