月の影に隠れしモノは

しんいち

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帰還、そして出産

101 反省しました

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 亜希子は、あの後、回復するのに、まる二日かかった。
 その後は、慎也の家にいても、やることが無いので、もともと勤めていた名古屋の研究機関に通っている。まあ、慎也の家にずっと居るのが、怖かったのかもしれない…。日中は仕事に戻り、夕方には慎也宅に帰って来るのだ。
 帰って来たくなくても、命じられて派遣されている身。帰って来ないわけには行かないだろう。まさに「ご愁傷様」だ……。
 最寄りの岐阜羽島駅から名古屋駅まで、新幹線で十一分。後は地下鉄で十五分。通勤には非常に便の良い場所だったのは、幸いだった。


 恵美は、あの日、意識を回復した時には、みんな既に眠っていた。

(もしかして、私も、亜希子の様に無様に脱糞してしまったの?)

 不安で、不安で、たまらなかった。
 恥ずかしくて、みんなに顔を合わせられない。
 布団をかぶり、朝、みんなが起き出て行くまで、寝たふりしていた。
 その後に、沙織から大丈夫だったと聞かされ、やっと安心して眠れたのだった。
 一日でなんとか回復した後、二~三日は大人しくしていたが、一週間も経たずしてすっかり従前通りだ。
 慎也としては、お淑やかな恵美の方が可愛らしくて好みだが、まあ仕方がない。



 不倫疑惑事件から一週間と少し。
 亜希子は、あれ以来オドオドした感じが抜けない。が、ここ数日、少し機嫌が良さそうだ。
 沙織がいてみると、年下の彼氏が出来たとのこと。明らかに落ち込んでいた亜希子を心配して、話しかけてきてくれたそうである。
 亜希子は美人でスタイルも良い。四十二歳とはまるで思えない美魔女だ。
 あの性格が災いして独り身で居たのだが、落ち込んで大人しくしていたものだから、男が寄ってこないはずがない。眉目秀麗で、二歳年下、頭の回転もよく、文句なしの彼氏だということである。
 なお、「彼氏ができたのも皆様の御蔭」と殊勝なことを言っている。
 本心なのか、どうなのかは不明であるが……。

 その亜希子が、夕食前に皆のところへやってきた。(あれ以来、亜希子は別室で食事をとるようになっている。)

「あ、あのう~。皆様、申し訳ありませんが、少しお時間頂けますか?」

 視線が集まり、亜希子は、またオドオドする。

「ええと…。血液検査と尿検査の結果ですが、皆さま、全く問題ありません。お腹のお子様は、やはり、成長が早いです。通常の倍くらいです。
 それから…、その……。性生活に関してですが……。私は専門で無いので、産科の医師の見解を伺ってきたのですが………」

「なに? 早く言ってよ!」

「は、はい! そ、その、不特定多数とのセックスは控えるようにとのことでしたが…。
皆様は複数ですが、不特定でなく、正式なパートナーですので、この点、問題は無いかと……」

「そうね。叔母様みたいな人がいなければ、大丈夫ね」

「は、はい! 申し訳ございません!」

 沙織のキツイ一言に、亜希子は深々と頭を下げた。

「あ~、もういいから、早く次に進んで」

 自分で話の腰を折っておいて急かすという、理不尽な沙織の言葉にも逆らわず、亜希子は、慌てて続ける。

「は、はい、それでですね。指を挿入するのは、感染症の恐れもありますので、妊娠中は御控えになられました方が宜しいかと…。
 それと、皆さま妊娠中ですので、あまり負担になる体位は御控え頂きまして、お子様が大きくなられてきましたら、行為もやはり、御控えになられました方が良いということですが……」

「そっか……。まあ、そうよね…。龍の祝部の精を受けるのが無事に産むために必要って言ったって、限度があるものね。まあ、お腹が大きくなってきたらってことね」

「はい、そういうことのようです。
 あ、あと…。沙織さん、杏奈さん、環奈さんにですが。お母様が大変心配しておられます。それで、写真が欲しいとの御要望なのですが……。できましたら、皆さまで……」

 皆、並べられた夕食も入れて、にこやかに写真撮影。
 但し、慎也は弾き出された。
 沙織たちの母は、慎也を快く思っていない。というか嫌悪、いや憎悪している。
 当然である。大事な娘を三人も「盗られて」しまったのだ。許せるはずもない。
 ということで、慎也は写真に入れてもらえなかったのだ。

 但し、沙織たち母親に送るのとは別に、皆そろっての写真も撮った。
 これは、後に慎也の部屋に飾られることになる。
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