月の影に隠れしモノは

しんいち

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帰還、そして出産

98 恵美の策謀4

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「有罪ですので~、処罰しなければなりませ~ん。その方法ですが~。亜希子オバサマには~、慎也さんのフィンガーアタックを、公開で受けてもらうということで如何でしょう? これが、二人への処罰ということで~」

「はあ? 処罰になってない!」

 舞衣と沙織から、同時に同じ言葉が投げつけられた。亜希子はフィンガーアタックされることを望んでいるのである。これでは処罰じゃなくて御褒美だ。
 杏奈と環奈も、恵美をにらんでいる。
 反対意見は、この四人。(慎也は当然、除外。)この場合、舞衣を説得すれば、双子は舞衣に逆らわない。後は最悪多数決だ。恵美はそう計算し、舞衣の耳元にささやいた。

「あの人、フィンガーアタックを誤解してますよ。あれを食らった後どうなるか、存分に味わわせてやりましょうよ~。もちろん、私たちの監視の下で、ですよ~。セックスする訳でないですし~。他人にあられもない姿をさらすのって、女にとって十分過ぎるほどの制裁だと思いますけどね~。
 それから~、絶対失神しますから~、その悲惨な姿の写真撮っておけば、こちらの思い通りにあやつれる奴隷の、一丁上がり~ですよ~」

「 ………。 あ、あなた、極悪ね……」

 舞衣は大いにあきれながら、少し考えた。
 冷静になってみれば、確かに処罰かもしれない。自分の旦那が、他人のアソコをまさぐる姿を見るということに目をつむれば……。
 妻たちの監視のもとに、旦那に他人のアソコを弄らせる…。旦那にとっても、制裁になるのか? 慎也の性格なら、まあ、制裁になるかも……。
 何だか上手く丸め込まれている感が無くもないが……。

「分かりました。では、恵美さんの言う通りで」

「待って、待って、待って! オカシイでしょ。そんなの!」

 沙織が、今度は舞衣に食って掛かった。
 その隙に恵美は、杏奈と環奈を隅の方へ連れて行き、小声でささやく。

「あなたたちの大事な舞衣様はOKだよ。文句ないよね」

「「う~っ!」」

 二人は、下唇を噛んでうなっている。

「仕方ありません」
「舞衣様には逆らえません」

「よし。じゃあ、姉さんを説得して頂戴。叔母さんの失神状態の写真撮って、こっちに絶対逆らえない奴隷にするからって!」

 二人は、やっと納得したという顔になり、ウンウンとうなずいた。そして、沙織に近づき、両方から沙織の手を握って、部屋の隅に誘導した。

「な、何よ!あんたたち、裏切るの?」

「お姉様、冷静に! 女が人に見られながら恥ずかしいことされるんですよ。普通に考えてみてください。十分過ぎる制裁ですよね。それに……」

 杏奈に続き、環奈が沙織の耳元でささやく。

「…………」

「うわ、エゲツナイ……」

 沙織は、恵美を白い目で見た。恵美は、すっとぼけている。

「分かりました。私だけ反対しても多数決で負けですし、もういいです」

 毎度のことながら、沙織は消極的賛成ということで、全員一致の意見となった。当然、被告となっている慎也は除外だが…。
 そして、とりあえず反対はせずに賛成とみなされた祥子。終始、苦い顔で眺めていた。



 処刑は夜に行うことになった。神社の方を放っておけないからだ。それまで亜希子は部屋に軟禁状態である。
 一方的に巻き込まれ、自分も処罰対象の処刑人にされて、慎也は面白くない。ブツブツ言いながら腐っていた。
 舞衣と恵美が居ないのを見計らい、祥子が話しかけてきた。

「主殿。災難じゃったなあ。其方そなたは何も悪くないぞ。今回のことは、ああなるように恵美が仕組んだのじゃ」

「あいつめ~! また、やりやがったな!」

「まあ、まあ、そう力むな。 恵美も、亜希子の傍若無人さに腹を立てておってな、懲らしめるためのことじゃ」

「それは良いけど。とんだ、とばっちり食っている、こっちの身にもなってよ」

「だからじゃな。こうしてはどうじゃ……」

 祥子は慎也の耳元で、ゴニョゴニョ…とささやいた。
 慎也はニヤッと笑って、うなずいた。


 これで慎也の方はOK。
 しかし、もう一人機嫌が悪い者がいる。舞衣だ。
 処罰の方は納得して、一応は収まったが、旦那が他人とキスをしているのを間近で見せられ、舞衣はすこぶる機嫌が悪い。
 もちろん、祥子始め、他の妻たちとのキスシーンは毎日見ている。それどころか、性交シーンも、である。
 …であるが、彼女らは他人ではない。舞衣と同じ慎也の「妻」なのだ。隠れて何かされると腹が立つかもしれないが、自分の監視下で行われる慎也と彼女らとの行為は何の問題も無い。
 はたから見れば、この感覚も異常というか、異様というか、全く普通では無いのだが、彼女がそれで納得しているのだから、それで良いのだ。

 だが、亜希子は他人だ。他人と旦那のキスは、思い出すだけで気分が悪い。
 慎也が悪くないのも分かっている。分かっているが、亜希子の処刑だけではどうしても気が収まらないのである。

 祥子は、舞衣が一人になるのを見計らって話し掛けた。

「そうカリカリするな。亜希子は今晩処刑するのだから、それで良いではないか。主殿は巻き込まれただけじゃぞ。許してやれよ」

「分かってますよ。そんなことは! 分かってますけど、何か、ムシャクシャするの!」

「ではな、主殿を巻き込んだ張本人にも責任取ってもらうということでどうじゃ?」

「え? 何それ?」

「今回の件、仕組んだのは恵美じゃ。もちろん、悪意でしたわけではないぞ。勝手に乗り込んできて大きな態度をとる亜希子を懲らしめるためじゃ。しかし、毎度ながら、やり過ぎじゃな。主殿は可哀想に、良いように利用されただけじゃ。 だからの……」

 祥子は慎也の時と同じように、舞衣の耳元でささやいた。

「…………」

 舞衣も、ニヤッと笑ってうなずいた。

(やれやれ、これで収まるかの。全くもって世話の焼ける奴らじゃ……)

 祥子は溜息ためいきをついた。
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