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仙界にて
38 四人の巫女たち1
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五月二日。
今朝は美月も交えた、四人での朝食。だが、美月は何も話さず無言。そして、少しソワソワした感がある…。
決して食事が不味いということでは無いはず。相変わらず、祥子の料理は絶品なのだ。舞衣は、正面に坐っている後輩の様子を、チラチラと見ながら観察し続けた。
美月は終始うつむき加減で、まさか舞衣に観察されているとは、露ほども思っていない。時々、隣の慎也を少し見ては、顔を赤めている…。
(なるほど、なるほど…)
後輩の可愛らしい姿に、舞衣は微笑んだ。
昨日は美月にとって初体験。それも、最高の快感を得ての…。
その初体験の相手と隣り合って坐り、食事を共にしているのだ。そして、さらにこの後、また……。
考えてみれば、自分も同じようなものだった気がする。この後に行われることを考えると、緊張と羞恥と期待の混じった、こんな状態になって当然。
誰でも最初は…。
だが、今の自分には期待だけだ。慎也のことは大好きだが、緊張や羞恥なんてものは、綺麗さっぱり消え失せてしまった。
なぜなら、ここでは性交するのが主な「仕事」なのであり、それをひたすら何日もしてきているのであるから…。
慣れとは怖いなと、舞衣は思う。人間、どんな異常な環境に置かれても、慣れてしまえば、それが「普通」になってしまうのだ。
朝食後、慎也・舞衣・美月の三人で、東の海岸へ行き、釣りをした。
美月は、釣りが初めてだという。舞衣も、ここへ来た時はそうであった。
あの時の舞衣と同じように、美月が竿を振る。相変わらず、エサを投入すれば直ぐに食いついてくる。難なく一匹目を釣り上げた。その、強い引きを十分味わって、美月は大興奮だ。
舞衣と美月で交互に竿を振り、慎也はエサ付けと魚の取り外し役。必要な分の魚は数分で確保終了した。
三人が釣りを終えて海岸を発った頃、石の建物前に例の白い光が現れていた。
光の中からは、今度は四人が一度に……。
送られて来たのは…。細身の引き締まった体、ポニーテールで、少し垂目気味の女の子。歳は二十歳くらいか…。
同じく二十歳くらい、ストレートのミディアムヘア。「お嬢様」といった感じの、見るからに真面目そうな眼鏡っ子…。
さらに、十代半ばくらいの美少女双子。服装ばかりか、ボブヘアの髪型も同じにしていて、全く区別がつかない…。
四人は、キョロキョロ辺りを見回している。
「ようこそ、仙界へ」
例の如く、祥子が出ていって声をかけた。
四人は不審げに、薄い着物と緋袴姿の祥子に目を向ける。
丁度、釣りから帰ってきた慎也・舞衣・美月も到着。その帰ってきた三人の方を見て、双子が揃って大きな声を上げた。
「あ、あ~!! 高橋舞衣様! 細田美月ちゃんも!」
(舞衣様? 美月は『ちゃん』か…。格差がついた感があるが、エースと後輩の差か?)
慎也は、声の主、見分けのつかない双子に興味が湧き、観察した。
…双子は、舞衣に微笑みかけられて恥ずかしがり、揃って眼鏡お嬢様に隠れる。だが、隠れながらも左右から顔を出して、舞衣を見詰めている。可愛らしい…。
まあ、いきなり目の前にトップアイドルが現れたのだ、少々オーバーかもしれないが、普通の反応と言ってよい。
良く見比べると、この双子と眼鏡お嬢様は、少し顔立ちが似ている感じがする。もしかして姉妹であろうか…。
例の如く、四人に対して祥子からの説明がなされた。仙界についてと、『神子の巫女』の使命について…。
それに対し、初めに反応したのは、眼鏡お嬢様。
「あなた、頭おかしいんじゃないの? 何で私たちが、その男と、そ、その、セ、セ、セ、セック…ス……しなければならないの?」
口にしようとした「セックス」という言葉に恥じらって、言いよどみながらも続けた。
「妹たちは、まだ中学生です。私も未成年です。犯罪ですよ、犯罪! 警察呼びます!」
やはり、双子は彼女の妹のようである。
「呼びたくば、呼べばよい。スマホとかいったか? 持っておるじゃろ?」
祥子の言葉が始まる前に、既にスマートフォンを出して操作していたポニーテールの子が呟いた。
「だめよ~沙織。圏外~。つながらない~」
「えっ?」
お嬢様は、自分のスマートフォンを出して確認した。やはり、繋がらない。
「ここには警察も、お店も、病院も何も無いのよ」
先ほど双子に『様』と呼ばれた舞衣が、語り掛けた。
「電気もないから、夜は真っ暗。食べ物も、自分で用意しなければならない。洋服も無い。何も無いの! 帰るためには、たとえ中学生であっても仕方ないのよ」
「あ、あの~、本物の高橋舞衣さんですよね~。自殺したんじゃないかって~、ニュースになってましたよ~」
ポニーテールの子が割って入った。何だか間延びした話し方をする子だ。
「自殺なんてしませんよ。ここに閉じ込められて、帰れなくなっているだけです。帰るためには、神子を宿すしかないのよ」
「じゃあ~、舞衣さんも~、セックスしてる~って理解で~、よいですか~」
この子は話し方とは対極に、セックスという言葉にも全く躊躇が無い。
「結構です。もちろんしてます。毎日! 私は帰りたい!」
きっぱりと宣言した舞衣を、双子とその姉が驚愕の表情で見つめた。ただ、ポニーテールっ子は動じない。表情一つ変えずに言い返してくる。
「でもですね~。いきなりこ~んなこと言われて~。はいそうですか、セックスします~って方が~、異常だと思いませんか~?」
舞衣は返答に詰まった。当たり前。正当な意見で、これには反論しようがない。困る舞衣に替わって、祥子が話を引き取った。
「強制はせぬ。ただ、次の満月までに身籠らねば、帰れなくなる。満月は十九日じゃ。一回して、すぐ身籠れるとは思っておらぬよな。殆ど猶予は無いと思えよ。まあ、島を見て回って、自分たちの状況を確認してみよ。選択肢は無いことが分かるじゃろ。
あと一時間くらいで、我らは慎也殿の情けを頂く。見たければ見ても良いぞ。あそこの二階じゃ。中まで入ってきても良いからな」
それだけ一気に通告すると、祥子は魚が傷んでしまうと言いながら、先着隊面々を連れて調理場へ行ってしまう。
四人は取り残されてしまった。
眼鏡お嬢様は、双子の妹の肩を抱いたまま困惑顔だ。
「恵美、どうしよう……」
「そうね~。まず、見て回ろっか~」
ポニーテールっ子=恵美は、即答。去っていった先着隊の方を頻りに気にしていた双子のそれぞれの手を取り、歩き出した。
眼鏡お嬢様=沙織は、その後をついていく。
今朝は美月も交えた、四人での朝食。だが、美月は何も話さず無言。そして、少しソワソワした感がある…。
決して食事が不味いということでは無いはず。相変わらず、祥子の料理は絶品なのだ。舞衣は、正面に坐っている後輩の様子を、チラチラと見ながら観察し続けた。
美月は終始うつむき加減で、まさか舞衣に観察されているとは、露ほども思っていない。時々、隣の慎也を少し見ては、顔を赤めている…。
(なるほど、なるほど…)
後輩の可愛らしい姿に、舞衣は微笑んだ。
昨日は美月にとって初体験。それも、最高の快感を得ての…。
その初体験の相手と隣り合って坐り、食事を共にしているのだ。そして、さらにこの後、また……。
考えてみれば、自分も同じようなものだった気がする。この後に行われることを考えると、緊張と羞恥と期待の混じった、こんな状態になって当然。
誰でも最初は…。
だが、今の自分には期待だけだ。慎也のことは大好きだが、緊張や羞恥なんてものは、綺麗さっぱり消え失せてしまった。
なぜなら、ここでは性交するのが主な「仕事」なのであり、それをひたすら何日もしてきているのであるから…。
慣れとは怖いなと、舞衣は思う。人間、どんな異常な環境に置かれても、慣れてしまえば、それが「普通」になってしまうのだ。
朝食後、慎也・舞衣・美月の三人で、東の海岸へ行き、釣りをした。
美月は、釣りが初めてだという。舞衣も、ここへ来た時はそうであった。
あの時の舞衣と同じように、美月が竿を振る。相変わらず、エサを投入すれば直ぐに食いついてくる。難なく一匹目を釣り上げた。その、強い引きを十分味わって、美月は大興奮だ。
舞衣と美月で交互に竿を振り、慎也はエサ付けと魚の取り外し役。必要な分の魚は数分で確保終了した。
三人が釣りを終えて海岸を発った頃、石の建物前に例の白い光が現れていた。
光の中からは、今度は四人が一度に……。
送られて来たのは…。細身の引き締まった体、ポニーテールで、少し垂目気味の女の子。歳は二十歳くらいか…。
同じく二十歳くらい、ストレートのミディアムヘア。「お嬢様」といった感じの、見るからに真面目そうな眼鏡っ子…。
さらに、十代半ばくらいの美少女双子。服装ばかりか、ボブヘアの髪型も同じにしていて、全く区別がつかない…。
四人は、キョロキョロ辺りを見回している。
「ようこそ、仙界へ」
例の如く、祥子が出ていって声をかけた。
四人は不審げに、薄い着物と緋袴姿の祥子に目を向ける。
丁度、釣りから帰ってきた慎也・舞衣・美月も到着。その帰ってきた三人の方を見て、双子が揃って大きな声を上げた。
「あ、あ~!! 高橋舞衣様! 細田美月ちゃんも!」
(舞衣様? 美月は『ちゃん』か…。格差がついた感があるが、エースと後輩の差か?)
慎也は、声の主、見分けのつかない双子に興味が湧き、観察した。
…双子は、舞衣に微笑みかけられて恥ずかしがり、揃って眼鏡お嬢様に隠れる。だが、隠れながらも左右から顔を出して、舞衣を見詰めている。可愛らしい…。
まあ、いきなり目の前にトップアイドルが現れたのだ、少々オーバーかもしれないが、普通の反応と言ってよい。
良く見比べると、この双子と眼鏡お嬢様は、少し顔立ちが似ている感じがする。もしかして姉妹であろうか…。
例の如く、四人に対して祥子からの説明がなされた。仙界についてと、『神子の巫女』の使命について…。
それに対し、初めに反応したのは、眼鏡お嬢様。
「あなた、頭おかしいんじゃないの? 何で私たちが、その男と、そ、その、セ、セ、セ、セック…ス……しなければならないの?」
口にしようとした「セックス」という言葉に恥じらって、言いよどみながらも続けた。
「妹たちは、まだ中学生です。私も未成年です。犯罪ですよ、犯罪! 警察呼びます!」
やはり、双子は彼女の妹のようである。
「呼びたくば、呼べばよい。スマホとかいったか? 持っておるじゃろ?」
祥子の言葉が始まる前に、既にスマートフォンを出して操作していたポニーテールの子が呟いた。
「だめよ~沙織。圏外~。つながらない~」
「えっ?」
お嬢様は、自分のスマートフォンを出して確認した。やはり、繋がらない。
「ここには警察も、お店も、病院も何も無いのよ」
先ほど双子に『様』と呼ばれた舞衣が、語り掛けた。
「電気もないから、夜は真っ暗。食べ物も、自分で用意しなければならない。洋服も無い。何も無いの! 帰るためには、たとえ中学生であっても仕方ないのよ」
「あ、あの~、本物の高橋舞衣さんですよね~。自殺したんじゃないかって~、ニュースになってましたよ~」
ポニーテールの子が割って入った。何だか間延びした話し方をする子だ。
「自殺なんてしませんよ。ここに閉じ込められて、帰れなくなっているだけです。帰るためには、神子を宿すしかないのよ」
「じゃあ~、舞衣さんも~、セックスしてる~って理解で~、よいですか~」
この子は話し方とは対極に、セックスという言葉にも全く躊躇が無い。
「結構です。もちろんしてます。毎日! 私は帰りたい!」
きっぱりと宣言した舞衣を、双子とその姉が驚愕の表情で見つめた。ただ、ポニーテールっ子は動じない。表情一つ変えずに言い返してくる。
「でもですね~。いきなりこ~んなこと言われて~。はいそうですか、セックスします~って方が~、異常だと思いませんか~?」
舞衣は返答に詰まった。当たり前。正当な意見で、これには反論しようがない。困る舞衣に替わって、祥子が話を引き取った。
「強制はせぬ。ただ、次の満月までに身籠らねば、帰れなくなる。満月は十九日じゃ。一回して、すぐ身籠れるとは思っておらぬよな。殆ど猶予は無いと思えよ。まあ、島を見て回って、自分たちの状況を確認してみよ。選択肢は無いことが分かるじゃろ。
あと一時間くらいで、我らは慎也殿の情けを頂く。見たければ見ても良いぞ。あそこの二階じゃ。中まで入ってきても良いからな」
それだけ一気に通告すると、祥子は魚が傷んでしまうと言いながら、先着隊面々を連れて調理場へ行ってしまう。
四人は取り残されてしまった。
眼鏡お嬢様は、双子の妹の肩を抱いたまま困惑顔だ。
「恵美、どうしよう……」
「そうね~。まず、見て回ろっか~」
ポニーテールっ子=恵美は、即答。去っていった先着隊の方を頻りに気にしていた双子のそれぞれの手を取り、歩き出した。
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