35 / 167
仙界にて
35 一人目の神子の巫女 …困惑…
しおりを挟む
祥子の口から語られる。
自分の名前。千年超す年齢。ここは仙界という異空間。警察も病院も灯りも何も無い。食料も衣服も、何もかも自給自足。
そして美月が『神子の巫女』に選ばれたこと。神子は世を救うという存在で、その神子を美月が産まなければならない。そのために、慎也と交わって妊娠しなければならない・・・。
「は、……は?! ま、舞衣さん……。この人、気は確かなんですか?」
美月は、祥子を指差して、舞衣に詰め寄った。
「え?」
指を差して「気は確かか」とは、かなり失礼である。その上、続ける。
「バカじゃないですか?! 何で私があんなのとセックスして、妊娠させられなきゃいけないんです! おかしいでしょ!」
今度は、慎也を指差して非難する。
(…おいおい、「あんなの」呼ばわりかよ)
慎也は突っ込みたいところだが、飲み込んだ。
祥子もバカ呼ばわりされて平然としている。まあ、慣れているのだろうが。
舞衣は憮然としている美月の両肩をしっかり持ち、真正面から見つめる。
「美月! これは冗談じゃないの!」
「ま、舞衣さん?」
「はい!」
「…マジですか?」
「マジです!」
「私、に、あの男と、しろと…」
「そうです。そうしないと帰れない!」
「私、バージンですよ」
「私も、でした」
「じゃ、じゃあ、舞衣さんも、したの?!」
「しました。何度も。今日も、これからします」
「気は確かですか?」
「確かです」
「ホントに?」
「本当に!」
「………」
間近で見つめ合いながら簡潔な会話が進み、そして、美月は絶句した。
まあ、こんなこと、すぐ信じる者は、いないだろう。
「舞衣よ。もう良いではないか。説明はした。交合したくなければ、それはそれで良い。帰れないだけじゃ。どうするかは自由じゃ。後は自分で考えよ」
熱くなる舞衣と対極に、祥子は淡々として言った。
真っ暗でひもじい夜を一晩過ごせば、誰でも帰りたくなる。今まで、皆そうであったのだ。この場で、すぐに結論を出させる必要は無い。
そんな祥子に、舞衣はおずおずと尋ねる。
「あ、あの…。ひとつ疑問に思ってたんですけど、過去に帰れなかった人っているんですか?」
「ここに居るではないか」
祥子は自分を指差す。
「そうじゃなくて、その…、セックス拒否したり、祥子様以外に妊娠しなかったりで……」
「ああ、おるぞ。妊娠しなかったのはワラワだけじゃがな、拒否した者は二人居った」
「その人たちは、どうなったんですか?」
「死んだ」
「えっ……」
祥子以外の三人はギョッとして祥子を見つめた。
「ここでは、老いないのじゃないの?」
「ああ、そうじゃ。老いぬぞ。あの二人は自殺したのじゃ。どちらも、東の海に身を投げおった。魚が通ってくる抜け道から帰ろうとしたのかもしれぬ。バカな奴らじゃ。海の中の、どこにあるのか、常時開いているのかも分からん所から帰れるものか。飢えた魚の餌になってしもうた」
「さ、魚の餌……」
「魚も生きていたいのじゃ。食えるものがあれば、何でも食う。
其方らも気を付けよ。うかつに海に入ると、魚に食い殺されるぞ。穴という穴から体内に入り込んできて、中から喰われてしまうのじゃ。えげつないぞ。
…さあ、そろそろ」
再度祥子に促され、舞衣と慎也は「交合の間」に向かうことにした。
改めて祥子に自由にしろと言われた美月は、少しその場で考え込んでいたが、
「私も行って良いですか?」
と、舞衣を追うように駆け寄ってきた。
自分の名前。千年超す年齢。ここは仙界という異空間。警察も病院も灯りも何も無い。食料も衣服も、何もかも自給自足。
そして美月が『神子の巫女』に選ばれたこと。神子は世を救うという存在で、その神子を美月が産まなければならない。そのために、慎也と交わって妊娠しなければならない・・・。
「は、……は?! ま、舞衣さん……。この人、気は確かなんですか?」
美月は、祥子を指差して、舞衣に詰め寄った。
「え?」
指を差して「気は確かか」とは、かなり失礼である。その上、続ける。
「バカじゃないですか?! 何で私があんなのとセックスして、妊娠させられなきゃいけないんです! おかしいでしょ!」
今度は、慎也を指差して非難する。
(…おいおい、「あんなの」呼ばわりかよ)
慎也は突っ込みたいところだが、飲み込んだ。
祥子もバカ呼ばわりされて平然としている。まあ、慣れているのだろうが。
舞衣は憮然としている美月の両肩をしっかり持ち、真正面から見つめる。
「美月! これは冗談じゃないの!」
「ま、舞衣さん?」
「はい!」
「…マジですか?」
「マジです!」
「私、に、あの男と、しろと…」
「そうです。そうしないと帰れない!」
「私、バージンですよ」
「私も、でした」
「じゃ、じゃあ、舞衣さんも、したの?!」
「しました。何度も。今日も、これからします」
「気は確かですか?」
「確かです」
「ホントに?」
「本当に!」
「………」
間近で見つめ合いながら簡潔な会話が進み、そして、美月は絶句した。
まあ、こんなこと、すぐ信じる者は、いないだろう。
「舞衣よ。もう良いではないか。説明はした。交合したくなければ、それはそれで良い。帰れないだけじゃ。どうするかは自由じゃ。後は自分で考えよ」
熱くなる舞衣と対極に、祥子は淡々として言った。
真っ暗でひもじい夜を一晩過ごせば、誰でも帰りたくなる。今まで、皆そうであったのだ。この場で、すぐに結論を出させる必要は無い。
そんな祥子に、舞衣はおずおずと尋ねる。
「あ、あの…。ひとつ疑問に思ってたんですけど、過去に帰れなかった人っているんですか?」
「ここに居るではないか」
祥子は自分を指差す。
「そうじゃなくて、その…、セックス拒否したり、祥子様以外に妊娠しなかったりで……」
「ああ、おるぞ。妊娠しなかったのはワラワだけじゃがな、拒否した者は二人居った」
「その人たちは、どうなったんですか?」
「死んだ」
「えっ……」
祥子以外の三人はギョッとして祥子を見つめた。
「ここでは、老いないのじゃないの?」
「ああ、そうじゃ。老いぬぞ。あの二人は自殺したのじゃ。どちらも、東の海に身を投げおった。魚が通ってくる抜け道から帰ろうとしたのかもしれぬ。バカな奴らじゃ。海の中の、どこにあるのか、常時開いているのかも分からん所から帰れるものか。飢えた魚の餌になってしもうた」
「さ、魚の餌……」
「魚も生きていたいのじゃ。食えるものがあれば、何でも食う。
其方らも気を付けよ。うかつに海に入ると、魚に食い殺されるぞ。穴という穴から体内に入り込んできて、中から喰われてしまうのじゃ。えげつないぞ。
…さあ、そろそろ」
再度祥子に促され、舞衣と慎也は「交合の間」に向かうことにした。
改めて祥子に自由にしろと言われた美月は、少しその場で考え込んでいたが、
「私も行って良いですか?」
と、舞衣を追うように駆け寄ってきた。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる