月の影に隠れしモノは

しんいち

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仙界にて

27 溜息

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 祥子は通常、一日二食だ。平安時代はそれが普通であったし、夜は真っ暗で何も出来ない。活動時間が限られているのだから、この方が合理的だ。よって、慎也も舞衣も、それに合わせて朝晩の二食ということになる。
 性行為に関しては、平安時代であっても、多分、夜にしていたはずだ。夜の営み・夜這よばいといった言葉もある。
 むろん、昼間にしてはいけないということは無い。いけないということは無いが…。やはり、夜するものだと思う。
 しかし、祥子いわく、
「まぐわいをしに来ているのであるから、昼間するのが当然」
とのこと。
 ここの責任者(?)が言うのであるから、逆らうことは出来ない。
 そう、彼女らにとって、妊娠することが最も重要な事なのだ。そうしないと帰れないのだから…。
 だから、昼間にシッカリ時間と取ってということだろう。

 一時間程経過したら二階のあの部屋、「交合の間」に来るよう、祥子からの指示。祥子はその間に、先ほどの鴨の処理を済ませるということだった。
 慎也と舞衣は、収穫してきた果物を指定の場所に置き、温泉に入った。
 一緒に、である。
 二度目のことだが、当然まだ慣れなく、二人とも動作がぎこちない。ならば、時間をずらせば良いようなものだが、一緒に入れというのも祥子の指示である。時間がもったいないと…。
 二人の後には鴨の処理を終えた祥子も入るのである。一人ずつでは、あわてて入ることになってしまう。昼間しか活動できないのだから、仕方がない。湯船につかってしまえば、互いに全裸を見られずに済むので、少し落ち着く。

「慎也さんは、さっきの、初めてじゃないんですね」

「んっ、鳥の血抜き?」

「そう。私、びっくりしちゃって。でも、肉を食べるって、そういうことなんですね。私がしてない代わりに、誰かがあれをしていたんだ…」

「そうだね。昨日もここで話したけど、サバイバル的なことが好きでね。鶏も飼ってて、自分でめてたから。でも、まあ、未経験が普通だよね。
 そういえば、うちの鶏たち、どうしてるかな。エサ無いから…」

「えーっ、可哀想!」

「いきなり、こっちに拉致らちられてるからね。ちょうど、古くなっちゃったキャベツを丸ごと放り込んだとこだったけど、あれで一ヶ月は持たないよね…」

 餓死してしまうのも、絞められて食われるのも、どちらも鳥にとっては同じ「死」であるが、それなら、やはり食ってやりたかったと慎也は思った。
 命を無駄にしてしまうことになるから…。

 温泉から上がり、また互いに恥ずかしがりながら着物を着る。
 これから、裸を見る以上のことをするのであるが、何故恥ずかしいのか…。それは二人にも分からない。感情とは、そういうものだ。まあ、これもじきに慣れてしまうであろう。
 着物を着終えて、一緒に例の別棟二階へ上がった。
 祥子が入浴を終えて来るまでは、まだ少し時間がある。ツタのベッドに、並んで腰を下ろす。
 慎也は、溜息ためいきをついた。

「どうしました?」

 舞衣は首をかしげ、慎也を見た。

「もしかして、私とするの、嫌?」

 上目遣うわめづかいで不安気に言う舞衣に、慎也は大慌てで、左右に首を振る。

「め、滅相もありません!」

 当然である。色白超絶美人で抜群のプロポーション。先日までトップアイドルとして大活躍していた高橋舞衣である。不平不満など、一切無い。断じて無い!

「それは、こっちのセリフですよ。俺なんかとじゃ申し訳なくて。ほんとに、ごめんなさい」

「何よ、それ…。私は慎也さんで良かったって思ってますよ」

 舞衣の方も、慎也に好意を持っている。慎也が相手で不満は無い。
 くどいが、慎也も、舞衣に対しては、全く不満は無いのだ。しかし、慎也は、昨日を思い出した。

「あ、あの……。もう一人がね…」

 祥子も容姿端麗。何もしなければ絶世の美女。胸は、舞衣よりも大きい。しかし…。

「あ~、そういうことね」

 舞衣は納得した。祥子の容姿に関しては、舞衣もうらやましいくらいと感じている。が、

「吸い尽くされると…」

「そうなんです……」

 舞衣は同情した。しかし、祥子も可能であれば帰りたいだろう。だから、その交合を妨害はできない。
 少し考えて、舞衣は口を開く。

「じゃあ、私から祥子様に提案します。一人二回までで、どう?」

 慎也は驚いた。一人二回ということは、舞衣とも二回するということになるのだ。

「一回っていうと、絶対あの人、納得しないでしょ。だから、平等に一人二回まで。どう?」

 どう?と言われても、種馬扱いされている慎也に拒否権などあるのか?
 一人二回だと二人で四回。それもキツイが、昨日よりマシである。
 そして何より、目の前に居る舞衣とも、二回出来るのである。

是非ぜひ、それで、お願いします」

と、舞衣に頭を下げた。
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