月の影に隠れしモノは

しんいち

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仙界にて

19 温泉

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 再度、祥子にうながされ、既に入ったことのある舞衣の案内で、二人は温泉に行った。
 脱衣場にて、二人は並んで着物を脱ぎ、湯船近くまで移動。おけで湯を体にかける。
 慎也は、隣をチラッと見た。
 ちょっと臭うけど、絶世の美女。緊張する…。
 可能なれば、じっくり拝みたいところだが、恐れ多くて、とてもそんなことは出来ない。
 舞衣の方も、隣に居ても慎也の方は見ない。が、少しして、意を決したように、慎也に話しかけてきた。

「あ、あの……。私に洗わせてもらえますか? そ、その、そこ」

 舞衣は、顔は向けず、恥ずかし気に目だけで見て、慎也の股間を指差した。

「へ?」

 慎也は、思ってもみない申し出に、次の言葉が出ない。

「私のせいで汚れてしまって。だから……」

 慌てて股間を両手で隠し、慎也は答えた。

「高橋さんのせいじゃないよ。だ、大丈夫。自分で洗うから。それに……。
ものすごく気持ちよかったよ」

 舞衣は、さっと視線を外した。

「いやだ、もう!」

 っぺたを膨らませ、後ろを向いてしまう。そして、自分の体を入念に洗い出した。
 どうやら、機嫌を損ねてしまったようだが、もちろん、舞衣は、怒っている訳では無い。アナルセックスは舞衣から言い出したことだ。
 ただ、祥子にデバガメされていたということが羞恥の極みであり、「気持ち良かった」の言葉で、自分もそれなりに感じていたあの痴態を見られていたことを思い浮かべてしまっただけ…。

(ちょっと、勿体もったい無かったかな、アイドルにアソコを洗ってもらえる機会なんて、この先無いだろうし……)

 最後の余計な一言で舞衣の機嫌を損ねたことと、せっかくの申し出を断ったことに、少し、いや、かなり後悔しながら…。慎也も、股間を入念に洗った。

 しっかりと、それぞれで洗ってから、二人一緒に湯船に浸かった。
 相変わらず、視線は合わせない。が、良いお湯だ。
 おまけに、慎也のすぐ隣には、超絶美女の高橋舞衣。その舞衣と一緒に、お湯につかっている……。舞衣がどう思っているかは分からないが、慎也にとっては、幸福以外の何物でもない。

「あ、あの、まだお名前聞いてなかった」

 湯につかったまま、舞衣が突然切り出した。
 そういえば、慎也は舞衣のことを知っているが、自分は名乗っていなかった。

「川村慎也です」

「私のことは、知ってますよね。高橋舞衣です。舞衣って呼んでください。改めまして、よろしく」

「こちらこそ、よろしく」

 湯に浸かったまま、互いに顔だけ向けて、頭を少し下げ合う。

「私、ここへ来る前に引退宣言してきたんです」

「うん、知ってる。来る前に見たニュースで大騒ぎになってたよ」

「芸能界って、華やかそうだけど、足の引っ張り合いばかりのドロドロの世界。我慢できなくて一人になりたくなっちゃって…。
プロデューサーには祖母のところへ行くって留守電に入れておいたけど、祖母は亡くなってるから、自殺するんじゃないかと思われたかも。このまま帰れなかったら、自殺したことになっちゃうでしょうね」

 二人は並んで、互いを見ないまま…。舞衣は少し上の方を眺めながら、そんなことを話した。

「帰りたい?」

勿論もちろん! こんな電気もテレビも無い、スマホも通じないところで、生きていけない!」

 舞衣は即答した。

「そうだよね、普通は帰りたいよね。俺は使命が終わったら帰ってしまう身みたいだから、こんなこと言うと怒られそうだけど、無人島のサバイバルとか、あこがれがあってね」

 舞衣は、慎也を見る。

「あ、俺は神主してるんだけど、宮司一人の神社でね。参拝者は少なくて時間あるし、畑と田圃もあるから、米・野菜は自給。釣りも好きで魚も自前。味噌なんかも自分で作ってるし、大概のことは出来るから…。一人で居ろと言われても、別に苦ではないし、やってく自信もあるよ。
 ただ…、千年てのはちょっと、想像がつかないかな。祥子様は完全に超人だね。異能も使えるし……」

「お~い、いつまで入っておる」

 その超人がのぞき込んだ。

「のぼせるぞ。片付けは終わった。いい加減に出よ。着替え置いておくぞ」

 一瞬見合った後、祥子の言葉に従い、二人そろって湯から出た。
 慎也がチラッと横目で見た舞衣は、色白の肌が、ほんのり桜色になっている…。
 濡れて陽光に光る肌。
 最高のプロポーション。
 舞い降りた天女の様…。

 神々しいほど綺麗だった。

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