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41 挿入話『緒方由美』
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―――――――――
・・・緒方由美・・・
私は、美森女子高の養護教諭、いわゆる保健の先生です。
歳? 女性に年齢を訊くなんて、失礼ね。30代前半とだけ言っておきます。因みに独身。彼氏募集中よ。
成嶋夏実嬢の急な切腹延期、私も面喰らいましたよ。
だって、切腹の三日前には切腹者本人を呼び出して重要秘密を明かすんですから。それをしてしまった後の延期なんて、通常はありえません。
しかし、スパイが内部に紛れ込んでいたというコトが判明しましたからね、仕方ないです。
夏実嬢に明かした秘密。それは、切腹後の遺体の扱いについてのことです。
彼女は、事務局が切腹や内臓調査の様子の動画を販売して資金を得ていると考えていたようです。ですから遺体も同じように、死体愛好家に売られたりするんじゃないかと案じていました。
でも、そんな足の着くような危険なことしないですよ。事務局は、彼女が考えていたようなことは一切していません。
切腹する子には、その憂いを除いてあげなければなりません。
気持ちよく、何の心配も無く、喜びに満ちた状態で切腹してもらうコトが重要ですから……。
で、その具体的扱いですよ。
切腹後の彼女らの遺体は、神にささげる供物にされるのです。
樹神奉寧団が宗教団体であり、この切腹に大いに関係していることは彼女も感づいていたでしょう。流石に供物というのは驚いていましたけどね。
……密かに続けられてきている重要儀式。ほんの極一部の人しか知らないこと。でもこれによって国土の安寧が守られている。
近年多発する自然災害も本来ならもっともっと大きく、壊滅するような事態になっていてもおかしくないモノだった。それも、秘儀を行うことで、小さく出来ている。そんな重要な儀式に、切腹した乙女の肉体が供物として必要。自らの意志で命を投げ出した肉体を捧げることで神はそれを人柱・贄として受け入れ、守護して頂けるのだ。
この供物のことは最高秘密であり、幹部と一部の執行員しか知らないこと。特別に、切腹する人間には三日前に教えることになっている。
ただ、重要儀式を行って国を守っている団体だというコトは、公式には宣伝していなくても、知っている人は知っている。だからこそ多額の献金もあり、最新の検査機器なんかも簡単に揃えることができる。そう、あの内視鏡なんか……
・・・とまあ、こんな話。
ですが、ここには嘘が一つ。そして、まだ秘密にしていることが…。
まず、嘘の方。切腹遺体が神への供物というのは……ホントのこと。しかし、その儀式の目的が嘘。
自然災害から守る?国土の安寧? そんなものを願っての儀式ではありません。真っ赤なウソです。
儀式の目的は、不老長寿。
樹神奉寧団なんて名乗っていますけど、祀っているのは樹神…「木」の神様なんかじゃありません。鬼…鬼神なのです。だって、代表者である教主が鬼頭公美子ですからねえ。
この婆さん、戸籍上は死んでいることになっている。生きていないはずの人間です。
現年齢は140歳を超えている。なのに60代くらいの見た目で、ピンピンしてる。このことがすべてを物語っていますね。
不老長寿は実現できる。それを可能にしているのが、教団の儀式なのです。
そして、その恩恵にあずかりたいと多額の献金をしてくる者がいるからこそ、教団は成り立っているのです。
次に秘密。
ああ、秘密はいっぱいですよ。話せないモノばかりですね。
だけど、夏実嬢に関わることでありながら敢えて彼女に話さなかったことが一つ。
彼女の遺体は供物にされます。だけど、実際に鬼神が現れて供えられた肉体をバリバリ食べちゃうなんてことにはなりません。儀式のあとには、供物はそのまま残るのです。
その後に供物がどうなるかということ。これが敢えて話さなかったことです。
これは……。食べるのです!
神の息吹の掛かったもの。オサガリとして。
それを食べることで不老長寿を得ることが出来るのです!!
オサガリを頂けるのは教団幹部と執行員。それから多額の献金を行って居る特級信者です。
…あ、執行員というのは事務などの直接の教団運営にかかわっている者たち。私も一員です。
儀式後のオサガリは、即座に細かく解体されます。
心臓は教主が食べるのが決まりで、他の幹部は肝臓・膵臓・腎臓・生殖器を分け合います。
執行員は腸。そして肉は信者へ。但し、信者は人肉とは知りません。山にいる鹿かなにかと思っていることでしょう。
あと、残るは頭。これは、通常は教主が食べますが、幹部・執行員の中の功労者に下げ渡されることがあります。
夏実嬢の頭は、市立病院に努める私の先輩の手へ。スパイを捕獲し、薬を投与して知っていることを自白させたのは彼女ですから。
先輩ってば、「一緒に食べる?」なんて誘ってくれましたけどね。大丈夫ですよ。イカレタ淫乱女の不味そうな頭なんて、要りません。私は、次回の儀式の際の功労者となる内示をもらってますからね。
次回、つまり、谷本美紀嬢。私には、美紀嬢の頭を下げ渡されることになっているのです。同好会会員確保に尽力してきた功績によって。
あの美しく聡明な生徒会長の頭が手に入る……。
綺麗な目玉。えぐり出して口に頬張り、グチョッと噛むと中からはドロッとした濃厚な旨味液が…。
舌は丁寧に切り取って、焼いて食べましょうね。人タンです。男とキスもしたことない乙女の、汚れ無き舌ですよ。
そしてメイン。彼女の優秀な脳ミソ。小さな頭だけど、タップリと詰まっているでしょうね。きっと、ネットリ濃密で、芳醇甘美な味がするのでしょうよ。
あ~! ほんと、今から楽しみです!
早く食べたい!
あの子の若さと美貌を、この身に取り込みたい~!!
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・・・緒方由美・・・
私は、美森女子高の養護教諭、いわゆる保健の先生です。
歳? 女性に年齢を訊くなんて、失礼ね。30代前半とだけ言っておきます。因みに独身。彼氏募集中よ。
成嶋夏実嬢の急な切腹延期、私も面喰らいましたよ。
だって、切腹の三日前には切腹者本人を呼び出して重要秘密を明かすんですから。それをしてしまった後の延期なんて、通常はありえません。
しかし、スパイが内部に紛れ込んでいたというコトが判明しましたからね、仕方ないです。
夏実嬢に明かした秘密。それは、切腹後の遺体の扱いについてのことです。
彼女は、事務局が切腹や内臓調査の様子の動画を販売して資金を得ていると考えていたようです。ですから遺体も同じように、死体愛好家に売られたりするんじゃないかと案じていました。
でも、そんな足の着くような危険なことしないですよ。事務局は、彼女が考えていたようなことは一切していません。
切腹する子には、その憂いを除いてあげなければなりません。
気持ちよく、何の心配も無く、喜びに満ちた状態で切腹してもらうコトが重要ですから……。
で、その具体的扱いですよ。
切腹後の彼女らの遺体は、神にささげる供物にされるのです。
樹神奉寧団が宗教団体であり、この切腹に大いに関係していることは彼女も感づいていたでしょう。流石に供物というのは驚いていましたけどね。
……密かに続けられてきている重要儀式。ほんの極一部の人しか知らないこと。でもこれによって国土の安寧が守られている。
近年多発する自然災害も本来ならもっともっと大きく、壊滅するような事態になっていてもおかしくないモノだった。それも、秘儀を行うことで、小さく出来ている。そんな重要な儀式に、切腹した乙女の肉体が供物として必要。自らの意志で命を投げ出した肉体を捧げることで神はそれを人柱・贄として受け入れ、守護して頂けるのだ。
この供物のことは最高秘密であり、幹部と一部の執行員しか知らないこと。特別に、切腹する人間には三日前に教えることになっている。
ただ、重要儀式を行って国を守っている団体だというコトは、公式には宣伝していなくても、知っている人は知っている。だからこそ多額の献金もあり、最新の検査機器なんかも簡単に揃えることができる。そう、あの内視鏡なんか……
・・・とまあ、こんな話。
ですが、ここには嘘が一つ。そして、まだ秘密にしていることが…。
まず、嘘の方。切腹遺体が神への供物というのは……ホントのこと。しかし、その儀式の目的が嘘。
自然災害から守る?国土の安寧? そんなものを願っての儀式ではありません。真っ赤なウソです。
儀式の目的は、不老長寿。
樹神奉寧団なんて名乗っていますけど、祀っているのは樹神…「木」の神様なんかじゃありません。鬼…鬼神なのです。だって、代表者である教主が鬼頭公美子ですからねえ。
この婆さん、戸籍上は死んでいることになっている。生きていないはずの人間です。
現年齢は140歳を超えている。なのに60代くらいの見た目で、ピンピンしてる。このことがすべてを物語っていますね。
不老長寿は実現できる。それを可能にしているのが、教団の儀式なのです。
そして、その恩恵にあずかりたいと多額の献金をしてくる者がいるからこそ、教団は成り立っているのです。
次に秘密。
ああ、秘密はいっぱいですよ。話せないモノばかりですね。
だけど、夏実嬢に関わることでありながら敢えて彼女に話さなかったことが一つ。
彼女の遺体は供物にされます。だけど、実際に鬼神が現れて供えられた肉体をバリバリ食べちゃうなんてことにはなりません。儀式のあとには、供物はそのまま残るのです。
その後に供物がどうなるかということ。これが敢えて話さなかったことです。
これは……。食べるのです!
神の息吹の掛かったもの。オサガリとして。
それを食べることで不老長寿を得ることが出来るのです!!
オサガリを頂けるのは教団幹部と執行員。それから多額の献金を行って居る特級信者です。
…あ、執行員というのは事務などの直接の教団運営にかかわっている者たち。私も一員です。
儀式後のオサガリは、即座に細かく解体されます。
心臓は教主が食べるのが決まりで、他の幹部は肝臓・膵臓・腎臓・生殖器を分け合います。
執行員は腸。そして肉は信者へ。但し、信者は人肉とは知りません。山にいる鹿かなにかと思っていることでしょう。
あと、残るは頭。これは、通常は教主が食べますが、幹部・執行員の中の功労者に下げ渡されることがあります。
夏実嬢の頭は、市立病院に努める私の先輩の手へ。スパイを捕獲し、薬を投与して知っていることを自白させたのは彼女ですから。
先輩ってば、「一緒に食べる?」なんて誘ってくれましたけどね。大丈夫ですよ。イカレタ淫乱女の不味そうな頭なんて、要りません。私は、次回の儀式の際の功労者となる内示をもらってますからね。
次回、つまり、谷本美紀嬢。私には、美紀嬢の頭を下げ渡されることになっているのです。同好会会員確保に尽力してきた功績によって。
あの美しく聡明な生徒会長の頭が手に入る……。
綺麗な目玉。えぐり出して口に頬張り、グチョッと噛むと中からはドロッとした濃厚な旨味液が…。
舌は丁寧に切り取って、焼いて食べましょうね。人タンです。男とキスもしたことない乙女の、汚れ無き舌ですよ。
そしてメイン。彼女の優秀な脳ミソ。小さな頭だけど、タップリと詰まっているでしょうね。きっと、ネットリ濃密で、芳醇甘美な味がするのでしょうよ。
あ~! ほんと、今から楽しみです!
早く食べたい!
あの子の若さと美貌を、この身に取り込みたい~!!
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