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6 驚愕

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 僕は彼女…佐々木麻美に、高校時代から好意を持っていた。
 同じクラスにはなったことが無い。が、真面目で成績優秀な彼女は良く知られる存在だった。
 眼鏡をかけていて地味な感じ。しかし、実は彼女、かなりの美人だ。
 色白で細身で清楚。更に頭も良い。穏やかで、人当たりも良い。僕の好みにドンピシャ。

 だが、クラスが違うというコトは接点が無い。人づきあいが苦手な僕が、他クラスの彼女に話しかけるなんてことは出来なかった。
 彼女も僕と同じ大学を受け、合格したと知ったときは飛び上がらんばかりに喜んだ。が、同じ大学に通っても、相変わらず僕はヘタレだ。時々彼女の姿を見かけては「今日は良い日だ」と喜んでいるだけだった。

 そんな僕に、彼女の方から話しかけてきてくれたなんて驚きだった。おまけに頼み事だなんて!
 断るなどという選択は絶対無い。本当は、指定の日は帰省する予定だった。しかし、そんな予定は勿論変更。
 そのすぐ後で聞いたのだが、同日に彼女も同じ温泉旅館でサークルの合宿なんだとか。彼女と同じ旅館に居られる。彼女の浴衣姿なんかも見られるかもしれない。もう、飛び上がらんばかりだ。
即座にバイトの申込書に必要事項を記入。彼女に渡した。

 数日後、事前に指定の病院へ検査を受けに行くよう通知が来て、病院では尿と血液を採取された。温泉旅館なのだから客相手の仕事。だから、そういうものなのかもしれないと思った。
 その後、先にアルバイト料と交通費が現金書留で送られてきたのには面食らったが、特に不審にも思わなかった。

 バイト(?)の日。僕は電車で指定の温泉旅館へ。彼女たちはサークル仲間とマイクロバスで。到着は、ほぼ同じであった。
 直ぐに仕事内容の説明があって、仕事に入る…。そんなつもりでいたが、全く違った。旅館の仕事ではなかったのである。仕事内容は、彼女らサークルの雑用係だったのだ。そう、温泉旅館「での」仕事。
 そういえば、彼女はサークルの先輩にアルバイトする者を探してくるように言われたと言っていた。つまり、それはそういうことだったのだ。
 だけれど、そんなことで、二万円ものアルバイト料、食事・温泉つき。訳が分からない。

 それに、彼女は何のサークルに入っているのだろう?
 茶道部に入っているという風に聞いていた。その茶道部の部長=池田麗先輩もいるが、このサークルは茶道部ではない。兼部しているサークルということなのである。
 メンバーは綺麗な女性ばかり。あ、いや、同じ高校出身の服部洋子と山内綾音もいる。
 ああ、この二人が不細工という意味ではない。ただ、僕としてはちょっと苦手な二人だ。彼女とは仲が良いらしいが…。


 マイクロバスから部屋まで女性陣の荷物を運ぶと、特に後は何もない。温泉にも自由に入れる。豪華な食事も用意される。
…但し、彼女たちと一緒にではない。僕一人だけ別室で。

 そして、夜8時、指定された部屋に行った。そこには彼女らサークルメンバー10人が旅館浴衣姿で勢ぞろい。念願の彼女の浴衣姿。美しい…。感動だ。
 だけれど、12畳の和室にこれだけの人数が居ると、ちょっと狭い。オマケに部屋の真ん中には一枚の布団がドーンと敷かれているのだ。余計に手狭になっている。
 その敷かれている布団には、掛布団が無い。敷布団だけだったが、枕は置いてある状態だ。
 僕の恰好も女性陣と同じ浴衣姿。これは、指定されたもの。
 先にお風呂に入るよう言われていたので、綺麗に体は洗ってある。皆さんも入浴済みのよう…。若い女性の匂いが充満する部屋と、中央に敷かれた布団。なんだか、ドキドキする。
 いったい、これから何が始まるのか?

 入口を入ったところに居た僕は、部屋の中央近くに導かれた。布団の間際だ。
 大柄な会長さん=松浦一美先輩が、右手を振る。
 これを合図に、女性の集団が二組にサッと分かれた。
 正に、いきなりだった。僕はその分かれた集団の一組に囲まれ、あっと言う間に帯を解かれ、浴衣を剥ぎ取られ、パンツも脱がされて全裸に!
 両腕を掴まれて、そのまま強制的に布団に坐らせられる。
 もう一組の集団の中から小声での悲鳴。そして細身の女性が同じように裸に剥かれ、目の前に坐らせられた!
 その女性というのが彼女、佐々木麻美。
 そう、この状態が、話の冒頭の場面なのであった。

「い、いや、こ、こ、こ、これは、い、いったい…」

 余りの驚きと、目の前の、好意を持っている女性の全裸姿。もう、まともに言葉が出ない。
 恥ずかしそうに胸と股間を隠して坐っている彼女。見てはいけないと思うが、周りを女性たちに取り囲まれ、そちらと目を合わすのも怖い。結果、彼女から目を離せない。

「ご、ごめんなさい。騙すようにして、こんなのに巻き込んでしまって…」

 彼女が真っ赤な顔で俯きながら話し出す。

「このサークルは性技研究会。あなたはその教材としてつれてこられたの。で、ね。これから私と交合をせよって…」

「こ、交合? そ、それって…」

「そ、そう。せ、セックスのこと…」

「そ、そんな馬鹿な。そんなの出来るはず無いじゃない!」

 彼女がそんな変なサークルに入っていたなんて、只々驚き…。
 セックス…、それも、彼女と! 夢のような話ではある。
 しかし、9人もの女性たちに間近で観察されている状態で、そんなこと出来るはず無い。あり得ないだろう。

「そうよね…。私なんかとじゃ、イヤよね。ゴメンナサイ。ゴメンナサイ…」

 佐々木さんは涙をタラタラこぼし、泣き出してしまった。
 両手を顔に持って行き、泣き顔を隠す。
 つまり、今は、彼女の股間のヘアと形良い乳房が丸見え。僕のアソコのモノは一気に膨れ上がった。

「い、いや、佐々木さんが嫌なんじゃないよ。そんなことは絶対ない。願ったりかなったりというか…。いや、あ、あの、そ、そうじゃなくて、ね」

「こら。そこのヘタレ男。ここまでお膳立てされて断る気か? 据え膳食わぬは男の恥だぞ」

 オッカナイ会長さんが凄む。しかし…しかし…しかし…。

「いやいやいや、こっちが良くても佐々木さんの方がダメでしょうに! 僕なんかが相手じゃ!」

 彼女は大きく首を横に振る。

「私は全然嫌じゃないよ。小川君相手なら」

「へっ?!」

 そ、それはどういう意味だ??
 僕となら良い?!

「こらヘタレ童貞。裸の女にそこまで言わせて、断ったりしたら承知しないぞ。これで双方合意ということだ。何の問題もない。さあ、お前の筆おろし兼、麻美の破瓜の儀式だ。即、開始しろ」

 いやいや、問題はあるぞ。こんな事、他人の監視の下ですることじゃない。
 とはいうモノの、もう、こうなったら拒否などできようもない。そんなことしたら彼女に大恥かかせることになるのだ。これは、止むを得まい……。
 僕と佐々木さんは、9人の監視のもとにセックスすることになったのであった。
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