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1 きっかけ
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一人の若い女性が、一糸まとわぬ全裸となっている。
布団の上に正座し、伸ばした両腕で胸と股間を隠し、顔を真っ赤にして俯いていた。
黒いストレート髪を後ろ下方で一つにまとめ、地味な眼鏡をかけた、如何にも真面目そうな娘である。
名前は、佐々木麻美、大学一年生の18歳。
彼女の対面には、やはり全裸で恥ずかしそうに正座している、同年代の若い男がいる。
場所は12畳の和室であり、その中央に布団が敷かれ、二人はそこに裸で向かい合って坐っているのだ。
これから、この二人は初めての体験をする。
何の体験?
いや、一つの布団に全裸の男女が対面しているのだ。言うまでもないこと。セックスである。
但し、この部屋の中にいるのは二人だけではなかった。
間近で布団の周りを取り囲むように、旅館浴衣姿の若い九人の女性がキチンと正座して、中央をガン見している。
その女性らに、何から何までキッチリ見られながら、この二人はこれからセックスするのである。
なぜ、こんな奇妙な事態になってしまっているのであろうか……。
ここは、とある地方の小さな私立大学だ。話の内容が内容なだけに、具体名は伏せておくことにしよう…。
この大学に入学したばかりの、佐々木麻美。…服装は地味。人当たりは良く友人も多いが、万事控え目。成績は上位クラスの、真面目な眼鏡っ娘であった。
彼女は同じく入学した仲の良い友人である服部洋子と、桜吹雪舞い散る歩道を講義に向かう途中。この二人は出身高校が同じ。高校時代からの友人なのだ。
校門を潜り、構内に入る。入学式とオリエンテーションは終わり、本日から講義開始という日。構内は新入生をサークルに勧誘しようとしている先輩たちが多数。プラカードやら横断幕のようなものやらを広げて、歩いて来る新入生に声をかけていた。
この大学では、何かしらのサークル活動に参加することが推奨されている。強制ではないが、学校が推奨しているとなると、入った方が良いのだろうと歩きながら二人で話していたところ。さて、何処へ入ろうか…。
女子向けの運動系はバレーボール・バスケットボール・ソフトボール・陸上・弓道・合気道・・・。しかし、麻美は運動が苦手。
となれば文科系。美術・軽音楽・箏・茶道・華道・・・。絵を描くのは得意だけれど、美術部というのも何となく違う。隣の洋子も迷っている模様。
そんな二人に、それぞれ渡された、あるサークルの勧誘チラシは…。
「なになに? 性技研究会(女子限定・男子禁制)?!」
「男子禁制? 性技? これって、エッチなこと??」
「そんなサークル、許されるの?」
「でも、学校公認って書いてあるよ…」
「バッカバカしい。何が性技よ。頭おかしいんじゃない?
こんな超絶イカガワシイのに入るヤツ、いるわけないじゃない!」
彼氏持ちの洋子は思いっきり馬鹿にした。麻美はチラシを渡してきた人に聞こえなかったかヒヤヒヤだ。勧誘活動しているということは先輩なのだから。
…この大学は、先輩後輩の上下関係が厳しいことで有名なのである。
まあ、洋子の発言も至極尤もである。うら若き女子大生が性技などと、普通は引く。
だがしかし…。麻美は、内心ちょっとだけ興味を覚えた。
彼女は実はバージン。男性と付き合ったこともない。であるからこそ、そういう行為に憧れるというのか、実際どんなことをするのか知りたい気持ちもあるのだ。これは雌雄異体生物としてのサガと言ってよいのかもしれない。
もちろん、真面目で通っている麻美のこと。そんな恥ずかしいことに興味があるなんて素振りはお首にも出さないし、洋子の発言にも頷くが…。
そして、受ける講義が違う二人は、校舎に入ったところで手を振り合って別方向へ別れたのであった。
麻美が一人になって教室を目指し廊下を歩いていると、後の方から元気に呼ぶ声がする。
走ってくるのは山内綾音。彼女も同じ高校出身で入学した同期。麻美とは仲が良い友人。ではあるのだが、先ほど一緒だった洋子とは、彼女は仲がよろしくない。顔を合わせるといがみ合うという関係だ。
どちらとも仲の良い麻美が居れば三人で行動というのもありだが、間に入る麻美は大層気を遣うことになる。洋子と一緒の時で無くてよかったと麻美はホッとした。
「麻美~! これこれ~!」
その綾音は、何か紙を持っている…。
「あ、それ……」
そう、あのチラシ。例の研究会のチラシを思いっきり振りながら走り寄ってくるのだ。
廊下を走るのは止めて欲しい。いや、それよりも、そんなチラシを振り回して名前を呼ばないで欲しい。
かなり周囲の注目を集めてしまっている。全く以って、恥ずかしい友人だ。
「お願いっ! 麻美、一緒に見学行こっ!!」
「えっ……。だ、だって、それ……」
驚く麻美に、綾音は事情を説明した。
彼女は彼氏とのエッチのマンネリに悩んでいるとか。そのマンネリから脱するため、性技を磨きたいということ。というコトはである。つまり、もうマンネリ化するほど彼氏とそういう行為に及んでいるということを公表しているようなものだ。…で、一人では恥ずかしいから一緒に見学に行って欲しいと。
男子学生も近くにいるような場所でこんなこと堂々と話しているヤツが、何が恥ずかしいだ。馬鹿も休み休み言えと言ってやりたい。
麻美は産まれてこの方、男性と付き合ったことなんてないのだ。そんな行為、全く経験がない。周りの視線も気になり、赤面するしかない。
普通であれば、キッパリ断るところ。あの洋子もバカにしていたし…。
だが、中半強引に、一緒に見学に行くことにされてしまった。麻美は頼み込まれると断れない性格なのであった。
ちょっとだけ、興味もあったし……。
布団の上に正座し、伸ばした両腕で胸と股間を隠し、顔を真っ赤にして俯いていた。
黒いストレート髪を後ろ下方で一つにまとめ、地味な眼鏡をかけた、如何にも真面目そうな娘である。
名前は、佐々木麻美、大学一年生の18歳。
彼女の対面には、やはり全裸で恥ずかしそうに正座している、同年代の若い男がいる。
場所は12畳の和室であり、その中央に布団が敷かれ、二人はそこに裸で向かい合って坐っているのだ。
これから、この二人は初めての体験をする。
何の体験?
いや、一つの布団に全裸の男女が対面しているのだ。言うまでもないこと。セックスである。
但し、この部屋の中にいるのは二人だけではなかった。
間近で布団の周りを取り囲むように、旅館浴衣姿の若い九人の女性がキチンと正座して、中央をガン見している。
その女性らに、何から何までキッチリ見られながら、この二人はこれからセックスするのである。
なぜ、こんな奇妙な事態になってしまっているのであろうか……。
ここは、とある地方の小さな私立大学だ。話の内容が内容なだけに、具体名は伏せておくことにしよう…。
この大学に入学したばかりの、佐々木麻美。…服装は地味。人当たりは良く友人も多いが、万事控え目。成績は上位クラスの、真面目な眼鏡っ娘であった。
彼女は同じく入学した仲の良い友人である服部洋子と、桜吹雪舞い散る歩道を講義に向かう途中。この二人は出身高校が同じ。高校時代からの友人なのだ。
校門を潜り、構内に入る。入学式とオリエンテーションは終わり、本日から講義開始という日。構内は新入生をサークルに勧誘しようとしている先輩たちが多数。プラカードやら横断幕のようなものやらを広げて、歩いて来る新入生に声をかけていた。
この大学では、何かしらのサークル活動に参加することが推奨されている。強制ではないが、学校が推奨しているとなると、入った方が良いのだろうと歩きながら二人で話していたところ。さて、何処へ入ろうか…。
女子向けの運動系はバレーボール・バスケットボール・ソフトボール・陸上・弓道・合気道・・・。しかし、麻美は運動が苦手。
となれば文科系。美術・軽音楽・箏・茶道・華道・・・。絵を描くのは得意だけれど、美術部というのも何となく違う。隣の洋子も迷っている模様。
そんな二人に、それぞれ渡された、あるサークルの勧誘チラシは…。
「なになに? 性技研究会(女子限定・男子禁制)?!」
「男子禁制? 性技? これって、エッチなこと??」
「そんなサークル、許されるの?」
「でも、学校公認って書いてあるよ…」
「バッカバカしい。何が性技よ。頭おかしいんじゃない?
こんな超絶イカガワシイのに入るヤツ、いるわけないじゃない!」
彼氏持ちの洋子は思いっきり馬鹿にした。麻美はチラシを渡してきた人に聞こえなかったかヒヤヒヤだ。勧誘活動しているということは先輩なのだから。
…この大学は、先輩後輩の上下関係が厳しいことで有名なのである。
まあ、洋子の発言も至極尤もである。うら若き女子大生が性技などと、普通は引く。
だがしかし…。麻美は、内心ちょっとだけ興味を覚えた。
彼女は実はバージン。男性と付き合ったこともない。であるからこそ、そういう行為に憧れるというのか、実際どんなことをするのか知りたい気持ちもあるのだ。これは雌雄異体生物としてのサガと言ってよいのかもしれない。
もちろん、真面目で通っている麻美のこと。そんな恥ずかしいことに興味があるなんて素振りはお首にも出さないし、洋子の発言にも頷くが…。
そして、受ける講義が違う二人は、校舎に入ったところで手を振り合って別方向へ別れたのであった。
麻美が一人になって教室を目指し廊下を歩いていると、後の方から元気に呼ぶ声がする。
走ってくるのは山内綾音。彼女も同じ高校出身で入学した同期。麻美とは仲が良い友人。ではあるのだが、先ほど一緒だった洋子とは、彼女は仲がよろしくない。顔を合わせるといがみ合うという関係だ。
どちらとも仲の良い麻美が居れば三人で行動というのもありだが、間に入る麻美は大層気を遣うことになる。洋子と一緒の時で無くてよかったと麻美はホッとした。
「麻美~! これこれ~!」
その綾音は、何か紙を持っている…。
「あ、それ……」
そう、あのチラシ。例の研究会のチラシを思いっきり振りながら走り寄ってくるのだ。
廊下を走るのは止めて欲しい。いや、それよりも、そんなチラシを振り回して名前を呼ばないで欲しい。
かなり周囲の注目を集めてしまっている。全く以って、恥ずかしい友人だ。
「お願いっ! 麻美、一緒に見学行こっ!!」
「えっ……。だ、だって、それ……」
驚く麻美に、綾音は事情を説明した。
彼女は彼氏とのエッチのマンネリに悩んでいるとか。そのマンネリから脱するため、性技を磨きたいということ。というコトはである。つまり、もうマンネリ化するほど彼氏とそういう行為に及んでいるということを公表しているようなものだ。…で、一人では恥ずかしいから一緒に見学に行って欲しいと。
男子学生も近くにいるような場所でこんなこと堂々と話しているヤツが、何が恥ずかしいだ。馬鹿も休み休み言えと言ってやりたい。
麻美は産まれてこの方、男性と付き合ったことなんてないのだ。そんな行為、全く経験がない。周りの視線も気になり、赤面するしかない。
普通であれば、キッパリ断るところ。あの洋子もバカにしていたし…。
だが、中半強引に、一緒に見学に行くことにされてしまった。麻美は頼み込まれると断れない性格なのであった。
ちょっとだけ、興味もあったし……。
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