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1章〜復讐へ〜
第三十七話 竜二とアリシャ
しおりを挟む「キーーーーーーン!」
どこからか剣の弾く音がした。
俺は閉じていた目を見開き前を見ると、アリシャはエリシアと剣を交えていた。
「アリシャ!!!」
俺は元気よく声を掛け、表情が和らぐ。
「竜二、話は後です!まずはエリシアをなんとかしなければいけません」
「アリシャやっと見つけたわ。早く戻りましょうよ!リューク様がお待ちよ」
エリシアはアリシャを見るや否やニヤリと不吉な笑みをし、目は吸い込まれそうなくらい闇に満ちていた。
「本当に貴方はリュークの言いなりになったのですね失望しましたよ。私は絶対に戻りません!リュークを殺してエリシアを取り戻します」
「ふっっふふ。アリシャが私を?出来るわけないでしょ魔女ごときの分際で!私は魔王よ。負ける訳がないのよ」
「えぇ。知ってます。だがら私は...逃げます!!」
アリシャは剣を流し、エリシアの剣を地面に落としつける。その隙を逃さず、アリシャは俺の手を取り、三層への下り階段を目指し、走り出す。
「ちょっっ、、、。アリシャ?」
俺は突然のアリシャの行動に少し驚く。
「今は逃げるのが優先です。まともに相手をしても竜二だって勝てないです。なので私の言うことを聞いてください」
「そうか...わかった」
俺はアリシャに従い、逃げることに全力を尽くす。
「アリシャ、ちょっと捕まってろよ」
地面を強く蹴り、光の速度ほどのスピードで三階への階段へと移動した。
だが、そんなにエリシアも甘くはなかった。
「私が貴方達を逃すと思う?リューク様が殺せと言ったのだから殺すのよ!でもアリシャは別だけどね」
エリシアは俺のスピードについてきて、すぐ後ろに迫っていた。
「我漆黒の闇に飲み込まれろ!ダークソウル・チャージ!!!」
アリシャがそう唱えると、洞窟全体が闇に包まれた。その隙に三階への階段を下り、二階への階段もすぐさま降りた。
エリシアは目を眩まし、俺たちを見失った。
「あーあ。見失っちゃったみたい。リューク様になんて言われるかなー。まぁしょうがないなー」
エリシアはそう言うと洞窟の奥へと姿を消した。
★
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
★
「はぁーはぁーはぁー。疲れた...。全速疾走はマナの消耗が激しいな」
俺とアリシャはエリシアから逃げ切り、螺旋迷宮ギルディアの入り口まで戻ってこれた。
「竜二!何で諦めたんですか!そんなの最低です...」
アリシャは俺に対し怒りを露わにする。
ー確かに仲間を置いて諦めたなんてクズすぎるよな俺は。
「い、いや。その、何て言うか。すまない」
俺は地面を見ながら謝罪をする。今はアリシャの顔もまともに見れない。本当に悪いことをしたのだから。
「私は竜二に謝って欲しいんじゃない!何でって聞いてるんですよ!本当に心配しましたよ...。竜二が死んだらまた私は一人に...」
さっきまで怒っていたアリシャだが、言葉を投げかけているうちにぽとぽとと涙が地面に落ちていく。
「俺は死にたかった。理由をつけて本当は死にたかった...んだと思う。まだやり残したことが色々あるのにな。それをもう無かったことにして忘れたかった...。俺の自己満足のためにエリシアを利用するなんて本当最低だよな...」
「本当最低です...。無責任です。竜二が死んだら...エリシアや明日香も悲しみます。私だって死ぬまで引きずります。もう二度とこんなことしないで下さい。もし辛いことや苦しいことがあれば私に相談して下さい。なんでも力になります。竜二の力になりたいんです。だがら心配かけないで下さいよーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
アリシャは言葉を口にすると声を荒げ、泣き噦る
。
ーこんなに泣いてくれる人を置いて俺は何をやっていたんだ。
俺は自分の醜さに怒りを覚えていた。
「あぁ、もう二度と諦めない。こんなに想ってくれるアリシャがいるもんな」
もう二度とあんな真似はやめる。戦うんだ。勝って、またエリシアと冒険するんだ!そのためだったら神だって魔王だって殺してみせる!
「そうですよ。しっかりしてくださいね。今回は本当に死ぬかと思ったんですよ!逃げれて良かったです」
アリシャは一通り泣き噦った後、涙を拭い、微笑を浮かべる。
「アリシャが助けてくれたお陰だ。ありがとな」
「い、いえそんなことないですよ。竜二も助けに来てくれたんですよね!その気持ちだけでも嬉しかったです」
「そうか...。それより、アリシャはなんであそこに居たんだ?」
「そうですね。えーと。色々ありましたけど、エリシアは私を逃すために自分の身を投げ打ってまで私を逃がしてくれました。だけど、エリシアを置いていけないと思い、助けに戻ろうと思ったらあんな姿になっていて、竜二も死にそうになっていたのであそこに居合わせた感じですね。まさかエリシアがあの本を読んでしまっていたなんて思いもしませんでした。もはや誰にもエリシアに勝てるものなんて居ないかもしれないですね」
エリシアのことを思い、アリシャの表情は曇る。
「やっぱりリュークが原因でエリシアがあんな姿になったのか!許せない!殺してやる!待てよ、、、今こうしている場合ではない。ティアを解放しないと。これ以上、ご主人様に酷い目に遭わされるなんて見て見ぬ振りは出来ない。ここは一先ず後回しにして、先にティアを助けに行こう。その後、エリシアを助ける作戦を練ろう」
「え?まさか門の入り口にいた奴隷を助けに行くんですか!奴隷なんていくらでもあんな風に扱われてますよ。それに奴隷解放なんて、第一級犯罪、死刑ですよ!」
「そうか、死刑か、阿呆らしい。俺は俺がやりたいようにする。助けて欲しい顔を俺は見た。だがら助けるんだ。それに俺はどうでもいいが明日香も捕まっている。アリシャも来てくれるか?」
俺は横にいるアリシャに手を伸ばす。
「私は竜二とずっと一緒にって決めています。それに明日香が危険とあらば行くしかありません」
アリシャは俺の差し出された手を握った。その手は暖かく心を穏やかにさせてくれた。
「ずっと一緒か...。良かった行くぞ!」
アリシャの言葉を聞いて俺は満面の笑みを浮かべた。
「はい!」
アリシャの威勢のいい返事とともに俺達は走り出した。
「しっかりと握っていろよ!」
「キャーーーーー!!!」
光のスピードにアリシャはまだ慣れていなかった。
★
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー★
俺達は瞬間移動の如く、貴族特区、スイーツシティーに来ていた。
このサガステラは貴族特区、市民街、貧民街とあり、貴族特区は貴族しか入ることは出来ないが市民街や貧民街は誰でも自由に出入りできる。
門の前には衛兵が一人ずつ両端に立っていた。
衛兵は鉄のような硬く光っている鎧を全身に身につけていて、右手には槍を持っている。
数秒間、その場に佇み、思考を巡らせていた時、後ろから声がかかった。
「おい、そこの愚民!門の前に居るんじゃない!邪魔だ!愚民は早く戻るのだ!けがわらしいぞ!」
少し太った三十代ぐらいのおっさんが綺麗な服装を身に纏い、俺達を追い払おうとする。
「ぐっっ、、、な、なんだと!見ず知らずの人にその態度...」
俺は突然浴びせられた言葉に殺意を剥き出しにして、貴族の人を見る。
「や、やめて下さい竜二。こんなところで騒ぎを起こしては明日香もティアちゃんも助けるのが遅くなります。ここは引きましょう」
アリシャが俺の腕を掴み、必死に止めに入る。
「き、貴様!今私に逆らったのか!これはー」
貴族の人が最後まで言う前にアリシャが遮る。
「すみません。まだこの人はこの街に来たばかりで何も知らないのです。どうかここはお許し願いませんか?」
「まぁ、そうだな。私も悪人ではない。土下座したら、このことは不問にしてやらんでもないぞ」
「貴、貴様ーー!!!」
貴族の人のその態度に俺は殴りかかろうとするが、すぐさまアリシャが止めた。
「竜二!やめて下さい。私は従います」
アリシャは膝をつき、貴族の人に向かい土下座をした。
俺はその哀れな姿を見て、怒りがこみ上げてくるのをただひたすら我慢するしかなかった。
ーなんでこんなにもアリシャは従うんだよ。
悔しくてしょうがなかった。
「ふん。これからは気をつけるのだな」
そう言うと貴族の人は俺達の横を通り過ぎ、衛兵の人に貴族の証、時計みたいなものを見せると中へと入っていった。
「あの野郎!一発殴らないと気が済まない!」
「すみません竜二」
「なんでお前が謝るんだよ!悪いのはあいつだろ!」
「竜二に我慢させてしまいました。でもそれで正解です。その国は貴族が全て。もしその貴族に逆らったり危害を加えたりすると、王国の騎士やこの国の全ての騎士が私たちを殺しにかかります。竜二は勝てると思いますが、時間はかかると思います。だがらなるべくこういうことは避けるようにしましょう...」
「なるほどな...アリシャに土下座までさせて悪かった。これからはなるべく関わらないようにするか」
「理解してもらえて良かったです。ではここからどうしますか?」
「うーん。まずあの衛兵を眠らすか」
「それなら大丈夫そうですね。さすが竜二!ではお願いします」
「我、眠り姫にお願い申す。力を与え給え!スリープ・コンプリー!!!」
俺の手から青い輪っかみたいなものが出て、それが衛兵二人に当たると鼾をかき、そのまま眠った。
「良し!上手くいった。では行くぞアリシャ!」
「待って下さい!竜二は何か聞かないんですか?」
「何をだ?」
「えーと、その、、、この国を知っていたこととか色々」
「今はそれどころじゃないだろ。それにアリシャが話したくないなら話さなくてもいい。アリシャが話したいと思ったら俺は聞くぞ」
「そうですか!ありがとうございます...。では行きましょう!」
アリシャは今日一番の笑顔を浮かべ、俺の後を追ったのだった。
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